飲食店の業態転換|成功事例と失敗しないためのポイントを解説

公開日:
更新日:

飲食店の経営において、売上低迷や顧客ニーズの変化といった課題に直面した際、現状を打破する有効な手段の一つが業態転換です。
業態転換とは、単なるメニュー変更にとどまらず、店舗のコンセプトやターゲット顧客、営業スタイルそのものを見直す経営判断を指します。
成功すれば売上の回復や新たな顧客層の獲得が期待できる一方で、計画性のない変更は失敗のリスクも伴います。

この記事では、業態転換を成功に導くための具体的なステップ、メリット・デメリット、必要な手続きまで、事例を交えて網羅的に解説します。

飲食店の資金調達でお困りの方へ

運営資金が足りなくなってしまった、借入を増やさずに資金調達したいという方はぜひダウンロードしてみてください。

目次

飲食店の業態転換(業態変更)が注目される理由

飲食店の業態転換(業態変更)が注目される背景には、市場の変化、消費者のライフスタイルの多様化、そしてデリバリーやテイクアウトといった中食市場の拡大が挙げられます。
例えば、新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの飲食店に店内飲食以外の収益源の必要性を強く認識させ、テイクアウトやデリバリーへの対応を促しました。
さらに、健康志向の高まりやSDGsへの関心の増大も、メニュー構成や食材調達方法を見直すきっかけとなっています。

このような外部環境の急激な変化に対応できず、従来の営業スタイルでは売上維持が困難になった店舗が、経営の立て直しを図るために業態転換を選択するケースが増加しているのです。
また、単に経営不振からの脱却だけでなく、新たな顧客層の獲得やブランドイメージの刷新により、事業をさらに成長させるための戦略としても注目されています。
これは、既存の強みを活かしつつ、市場の新しいニーズを取り込むことで、より持続可能な経営を目指す動きとも言えるでしょう。

業態転換とは

飲食店の業態転換とは、提供する料理のジャンル、価格帯、サービス形式、店舗の雰囲気、そしてターゲットとする顧客層といった「商売のやり方」を根本的に変更する経営戦略を指します。
例えば、これまで大衆向けの居酒屋として営業していた店舗が、高級食材を扱う焼き鳥専門店へと方向性を転換するケースがこれに該当します。この転換は、単にメニューの一部を変更するだけでなく、誰に、何を、どのように提供するのかという事業の核となるコンセプトを再設計し、全く新しい店舗として再出発を図ることを意味します。

一方、似た言葉に「業種転換」がありますが、これは飲食業からアパレル業や小売業へと、事業の分類自体を大きく変えることを指します。
業態転換は、飲食業という大枠の中で、より細分化されたビジネスモデルへとシフトする点が業種転換との明確な違いです。
例えば、ファミリーレストランがカフェ業態に変更したり、ラーメン店がつけ麺専門店になったりすることも業態転換の一例です。
このように、外部環境の変化や顧客ニーズの多様化に対応し、持続的な経営を目指すため、事業の方向性を調整する重要な手段となります。

業態転換が必要になる主なケース

業態転換が必要となるのは、主に経営状況が芳しくない場合です。
例えば、近隣に競合店が出現し、自店の強みが薄れて客足が遠のいたケースが挙げられます。
また、地域の人口構成が変化し、以前のターゲット層が減少した場合や、顧客の健康志向の高まり、ライフスタイルの変化によって従来のメニューや営業スタイルが時代のニーズに合わなくなった場合も検討が必要です。

このように、売上の長期的な低迷や、周辺環境・市場の変化によって、これまでのやり方では立ち行かなくなった際に、事業を存続させるための打開策として業態転換が有効な選択肢となります。

業態転換で期待できる3つのメリット

飲食店の業態転換は、経営上の課題を解決するための有力な手段となり得ます。
現状のビジネスモデルが立ち行かなくなった際に、店舗のコンセプトや提供価値を根本から見直すことで、新たな成長の機会を掴むことが可能です。

ここでは、業態転換に踏み切ることで期待できる具体的なメリットとして、売上の回復、新規顧客の開拓、そして時代のニーズへの対応という3つの側面から解説します。

メリット1:低迷した売上の回復が期待できる

業態転換を行う大きなメリットの一つは、経営が低迷している店舗の売上回復が期待できることです。
例えば、既存のコンセプトが時代遅れになったり、周辺に競合店が増えたりして客足が遠のいている場合、新しいコンセプトやターゲット層を設定することで、顧客の関心を再び引きつけることができます。
具体的には、大衆向けの居酒屋から専門性の高い焼き鳥店に転換し、客単価の向上を目指すといった例が挙げられます。新しい業態で高付加価値なメニューを提供したり、これまでの店舗では取り込めなかった層にアプローチしたりすることで、客数や売上の増加に繋がる可能性が高まります。

市場調査を綿密に行い、現状の課題を的確に捉えた上で業態転換を実施すれば、経営状況を大きく好転させる起爆剤となるでしょう。
ただし、計画の甘さはかえって事態を悪化させるリスクも伴うため、慎重な検討が不可欠です。

メリット2:新たな顧客層の開拓につながる

飲食店の業態転換は、これまでのターゲット層とは異なる新たな顧客層を開拓できる点が大きなメリットです。既存のコンセプトでは集客が難しかった層にアプローチすることで、市場を拡大し、売上向上につなげられる可能性があります。
例えば、これまでファミリー層向けに郊外で営業していたレストランが、オフィス街の立地を活かしてビジネスパーソンをターゲットとした「おひとり様」向けのカウンター席主体の店舗へと転換するケースが考えられます。この場合、これまで取り込むことのできなかった平日のランチ需要や仕事帰りの利用者を獲得できるでしょう。

さらに、ターゲット顧客の再設定は、地域の特性や市場のニーズを再調査する良い機会にもなります。
例えば、高齢化が進む地域であれば、健康志向のメニューや少人数でも利用しやすい店舗設計を取り入れることで、地域のニーズに合った店舗づくりが可能になります。
明確なターゲット顧客を設定し、それに合わせた店舗設計やメニュー開発を行うことで、新たな客層に響く店舗を構築し、結果として事業の裾野を広げ、安定した経営基盤を築くことが期待できます。

メリット3:時代のニーズやトレンドに対応できる

消費者の価値観やライフスタイルは常に変化しており、飲食店もその変化に対応する必要があります。業態転換は、こうした時代のニーズやトレンドに適応するための有効な手段と言えます。
例えば、健康志向の高まりに応えてオーガニック食材中心のメニューに刷新したり、中食需要の増加に対応してテイクアウトやデリバリー専門店にシフトしたりするケースが挙げられます。
新型コロナウイルス感染症の影響で店内飲食が制限された時期には、多くの飲食店がテイクアウトやデリバリーサービスを導入し、中食需要の増加に対応しました。
また、近年では環境問題への意識の高まりから、サステナブルな食材の活用や食品ロスの削減をコンセプトにした飲食店も増加しています。

市場の変化を的確に捉え、それに合わせた業態へと転換することで、時代に乗り遅れることを防ぎ、持続的な経営の基盤を築くことが可能になります。一時的な流行に便乗するだけでなく、長期的な視点での市場予測に基づいた戦略的な転換が成功の鍵を握ります。

事前に知っておきたい業態転換のデメリットと注意点

業態転換は売上回復や新規顧客獲得などのメリットが期待できる一方で、相応のリスクや注意すべき点も存在します。
新たな投資が必要になるだけでなく、既存の顧客が離れてしまう可能性も考慮しなければなりません。

ここでは、業態転換に潜むデメリットと、実行する上での注意点について解説します。

デメリット

業態転換には、当然ながらデメリットも存在します。

投資費用の発生
店舗の改装や新しい厨房機器の導入、メニュー開発には多額の投資費用が発生します。
例えば、新しいコンセプトに合わせて内装を全面的に刷新する場合や、これまで使用していなかった特殊な調理機器を導入する際には、数百万円から数千万円の費用が必要になることもあります。綿密な資金計画なしに進めてしまうと、資金ショートに陥り、かえって経営状況を悪化させるリスクがあるのです。

常連客の離反
新しいコンセプトやメニューが既存の顧客層に受け入れられず、これまでの常連客が離れてしまう可能性も考えられます。長年培ってきたブランドイメージや顧客との関係性が失われることは、売上減少に直結しかねません。

サービスクオリティや従業員のモチベーション低下
新しい業態に合わせたオペレーションやサービスの習得には、従業員への研修が必要となり、時間とコストがかかります。その期間中は、一時的にサービスの質が低下したり、従業員の負担が増加したりする恐れもあり、従業員のモチベーション低下や離職につながる可能性も否定できません。

このようなデメリットを十分に理解し、対策を講じた上で業態転換に踏み切りましょう。

飲食店の資金調達でお困りの方へ

運営資金が足りなくなってしまった、借入を増やさずに資金調達したいという方はぜひダウンロードしてみてください。

注意点

業態転換を検討する際の注意点として、まず挙げられるのは思い付きや勢いだけで進めないことです。

現状課題の分析と需要の調査
売上が低迷している原因は何か、現状の課題を客観的に分析することが不可欠になります。その上で、新しい業態のコンセプトやターゲット顧客を明確にし、その業態に本当に需要があるのかを市場調査によって慎重に見極める必要があります。
特に、顧客層が大きく変化する業態変更の場合、既存顧客が離反するリスクも考慮し、いかに新しい顧客を獲得するかの戦略を練ることが重要です。

綿密な資金計画と従業員のモチベーション維持
必要な資金をどの程度確保できるのか、綿密な資金計画を立てることも非常に重要です。既存の設備を活かせる部分はないか検討し、初期投資を抑える工夫も求められます。
さらに、業態変更によって従業員の業務内容や必要なスキルが変わる可能性があるため、従業員の教育やモチベーション維持も考慮に入れるべきでしょう。

これらの注意点を踏まえ、リスクを最小限に抑えつつ、計画的に転換を進めることが転換成功への鍵となります。

失敗を防ぐ!飲食店の業態転換を成功に導く5ステップ

行き当たりばったりの進行では、飲食店の業態転換に失敗を招きます。
成功確率を高めるため、事前の準備からオープン後の集客まで、計画的かつ段階的にステップを踏むことが極めて重要です。

ここでは、失敗のリスクを最小限に抑え、業態転換を成功に導くための具体的な5つのステップについて詳しく解説します。

STEP1:店舗の現状分析と解決すべき課題を明確にする

最初のステップは、飲食店の業態転換を成功させるための土台を築く非常に重要なプロセスです。

ここでは、まず自店の経営状況を客観的に見つめ直し、売上が低迷している根本的な原因を特定します。
具体的には、過去の売上データ、客単価、客数、回転率、リピート率といった数値を詳細に分析し、どの指標が現状の課題と強く結びついているのかを明確にする必要があります。
例えば、客単価が低いのか、それとも客足が遠のいているのかによって、とるべき対策は大きく異なります。

さらに、店舗が置かれている外部環境も冷静に評価することが不可欠です。
周辺の競合店の動向、ターゲットとする顧客層の変化、地域の人口構成、さらには交通量や周辺施設といった立地条件が、現在の経営にどのような影響を与えているかを再評価します。これらの内部と外部の情報を整理するために、SWOT分析(Strengths:強み、Weaknesses:弱み、Opportunities:機会、Threats:脅威)のようなフレームワークを活用することは非常に有効です。自店の「強み」を活かし、「弱み」を克服し、「機会」を捉え、「脅威」に対処するための方向性が見えてくるでしょう。

これらの分析を通じて、現在の店舗が抱える本質的な課題を特定し、「業態転換によって何を解決したいのか」「どのような未来の店舗像を目指すのか」という目的を具体的に設定します。この目的が曖昧なままだと、その後のコンセプト設定や事業計画もブレてしまい、結果的に失敗するリスクが高まります。

STEP2:新しいコンセプトとターゲット顧客を具体的に設定する

次のステップとして、新しい店舗のコンセプトとターゲット顧客を具体的に設定します。ここでいうコンセプトとは、「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを詳細に定義するものです。
例えば、ターゲット顧客の年齢層、性別、職業、ライフスタイル、飲食店を選ぶ際の重視点などを具体的に設定することで、そのターゲット層に響くような料理のジャンル、メニュー構成、価格帯、店舗の内装デザイン、さらには従業員の接客スタイルまで一貫して検討することが可能になります。
もしターゲットが曖昧なままだと、メニューや内装に統一感がなくなり、結果として顧客に店の魅力が伝わりにくくなってしまいます。
例えば、ビジネスパーソンをターゲットにするのであれば、ランチタイムには提供スピードを重視し、ディナータイムには仕事終わりの疲れを癒すような落ち着いた空間と、少し贅沢な料理を提供するなど、利用シーンに合わせたコンセプトが考えられます。
明確で独自性のあるコンセプトを打ち立てることは、競合店との差別化を図り、顧客の心に強く印象付けるための重要な要素となります。

STEP3:実現可能な事業計画を立てて必要な資金を調達する

コンセプトが固まったら、それを具体的に実現するための事業計画を詳細に策定します。

まず、新しい業態への転換に必要な初期投資額を詳細に見積もることが重要です。これには、店舗の内外装の改装費用、新しい厨房設備の購入費用、メニュー開発にかかる費用、そしてリニューアル後の広告宣伝費などが含まれます。
例えば、高級食材を扱う専門店にする場合、これまでの大衆居酒屋とは異なる高品質な設備や内装が必要となり、それに伴い費用の増加が見込まれます。

次に、新しい業態での売上予測を綿密に行い、原材料費、人件費、家賃などの経費をシミュレーションして収支計画を立てます。この収支計画は、事業の持続可能性を判断するために不可欠です。
もし自己資金だけでは不足する場合、資金調達の手段を検討する必要があります。日本政策金融公庫からの融資は、飲食店の開業・転換において一般的な選択肢の一つです。また、地方自治体が提供する制度融資や、国や自治体の補助金・助成金を活用することも有効です。
コロナ禍においては、「事業再構築補助金」など、業態転換を支援する補助金が提供されました。実現可能性が高く、具体的な裏付けのある綿密な事業計画を提示できるかどうかが、これらの資金調達の成否を大きく左右します。
金融機関や補助金・助成金の審査では、計画の具体性、収益性、そして返済・事業遂行能力が厳しく評価されるため、入念な準備が求められます。

STEP4:コンセプトに基づいたメニュー開発と店舗改装を行う

事業計画と資金調達の目処が立ち、いよいよ実行に移る段階では、設定したコンセプトとターゲット顧客に基づき、具体的なメニュー開発を進めます
看板メニューやドリンクメニュー、コース構成などを決定し、試作と原価計算を繰り返しながら完成度を高めていきます。
例えば、コンセプトが「高級志向の和食」であれば、旬の食材を活かした会席料理や、こだわりの日本酒ペアリングなどが考えられます。

並行して、コンセプトを体現する店舗の改装工事も行います
内装デザイン、レイアウト、照明、看板などを計画に沿って変更し、顧客がコンセプトを感じられる空間を創出します。ここで既存の厨房設備や内装を最大限に活用することで、改装費用を抑える工夫も大切です。
例えば、壁の一部だけを塗り替えたり、既存の家具をリメイクしたりするだけでも、印象は大きく変わります。

また、メニュー開発と店舗改装は、従業員の働きやすさやオペレーションの効率性も考慮して進める必要があります。
厨房内の動線や客席配置など、スタッフがスムーズに作業できるようなレイアウトは、サービスの質の維持向上にもつながります。
例えば、調理と配膳の分離や、効率的な食器洗浄スペースの確保などが挙げられます。

このように、コンセプトと実用性のバランスを考慮しながら、具体的な店舗づくりを進めていくことが大変重要です。

STEP5:オープン前から集客プロモーションを計画的に実施する

店舗の完成後も、顧客に認知されなければ業態転換の努力が無駄になってしまいます。
そうならないためにも、リニューアルオープンの一ヶ月前ないし数週間前から、計画的に集客プロモーションを実施していくことが肝心です。

新しい店舗のコンセプトや魅力を効果的に伝えるためには、多角的なアプローチが重要です。
具体的には、自社のウェブサイト各種SNS(Instagram、X、Facebookなど)での情報発信を積極的に行い、プレスリリースの配信を通じてメディアへの露出を図ることも有効です。
また、店舗周辺の地域住民に向けては、ポスティング地域情報誌への掲載も検討しましょう。
加えて、オープン前のレセプションパーティーを開催することで、インフルエンサーや地域関係者を招待し、口コミによる集客効果を狙うこともできます。
特にSNSでは、改装の進捗状況や新しいメニューの試作風景などを定期的に発信することで、オープン前からフォロワーの期待感を高め、来店のモチベーションを向上させることが期待できます。

オープン直後の「オープン景気」だけで終わらせないため、オープン後も見据えた中長期的な販促計画が不可欠です。リピーターを増やすためのポイントカードや会員制度の導入、季節限定メニューの提供、イベントの企画など、継続的に顧客が訪れる仕組みを構築していくことが、持続的な成功につながると言えます。

忘れずにチェック!業態転換に伴う主な手続きと届出

飲食店の業態転換は、メニューや内装の変更だけでなく、法的な手続きや届出が必要になる場合があります。
これらの手続きを怠ると、罰則の対象となったり、営業停止を命じられたりするリスクもあるため、事前にしっかりと確認し、漏れなく対応しましょう。

ここでは、業態転換の内容によって必要となる可能性がある、保健所や消防署などへの主な手続きについて解説します。

管轄の保健所へ提出する営業許可関連の書類

業態転換に伴い、店舗の構造や設備に大幅な変更を加えた場合は、新たに飲食店営業許可を取得し直すケースもあります。
例えば、厨房区画を大きく変更したり、これまでなかった手洗い設備を新設したりする場合が該当します。

変更の規模が比較的小さい場合は、「営業許可申請事項変更届」の提出で済むこともあります。
ただし、必要な手続きは変更内容や自治体の判断によって異なるため、計画段階で必ず管轄の保健所に事前相談を行い、どの書類が必要か、どのような基準を満たすべきかを確認することが不可欠です。

店舗の内装工事を行う場合に必要!消防署への届出

店舗の内装工事を行う際は、消防署への届出が必要になるケースがあります。
特に、壁や天井の素材を変更したり、間仕切りを新設・撤去、火気使用設備の位置を変更したりする場合に「防火対象物工事等計画届出書」の届出が必要になることがあります
届出が必要な場合、工事を開始する7日前までの提出が義務付けられています。
また、店舗の収容人数が30人以上で、責任者を変更した場合は「防火・防災管理者選任(解任)届出書」の提出も必要です。

内装業者とも相談の上、必要な手続きを怠らないようにしましょう。

深夜0時以降にお酒を提供する場合の手続き

業態転換によって深夜0時以降の酒類提供を始める場合は、警察署への届出が必須です。
具体的には、「深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書」を、営業開始の10日前までに店舗の所在地を管轄する警察署の生活安全課へ提出する必要があります。
この届出には、店舗の図面や住民票などの添付書類も求められます。

無許可で深夜営業を行うと法律違反となるため、営業時間の変更を伴う業態転換の際には、忘れずに手続きを行いましょう。

【成功事例に学ぶ】飲食店の業態転換アイデア7パターン

業態転換を成功させるためには、自店の課題や立地、強みを踏まえた上で、どのような業態に転換するかのアイデアが重要になります。
他店の成功事例は、そのヒントを与えてくれます。

ここでは、様々な経営課題を克服し、成功を収めた業態転換の具体的なアイデアを7つのパターンに分類して紹介します。
これらの事例を参考に、自店に合った業態転換の方向性を見つけるための一助としてください。

パターン1:居酒屋からランチ主体の定食屋へ

夜間の集客に伸び悩んでいた居酒屋が、立地条件を活かしてランチ営業を主体とした定食屋へ転換する事例です。
居酒屋で培った和食の調理技術を活かし、バランスの取れた日替わり定食や、素材にこだわった魚定食などを提供することで、昼間の食事需要を取り込みます。

この転換のメリットは、まず夜間の集客力に左右されにくくなる点です。ランチタイムは客単価が低くなりがちですが、回転率を上げることで売上を確保できます。
また、夜の営業時間を短縮したり、休業したりすることで、従業員の労働環境を改善し、人件費を抑制する効果も期待できます。
さらに、既存の厨房設備や食器を流用しやすいため、比較的低コストで業態転換を進められる可能性が高い事例です。内装も大幅な変更を必要とせず、照明を明るくしたり、カウンター席を増設したりする程度の改装で済むこともあります。

成功のポイントは、ターゲット層のニーズに合ったメニュー開発と提供スピードの確保です。ビジネスパーソンであれば短時間で食事ができること、住宅街であれば家族連れにも対応できるメニュー構成などが求められます。

パターン2:夜営業の店舗からテイクアウト・デリバリー専門店へ

この転換パターンは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、消費者の間で需要が急増した中食市場に特化することで、店舗の収益構造を大きく改善するものです。
具体的には、これまでの店内飲食に必要だった客席スペースを縮小、または完全に廃止し、その分の賃料負担を軽減できます。
さらに、客席での接客が不要になるため、ホールスタッフの人件費も大幅に削減することが可能です。

客席だったスペースを調理場や商品の最終仕上げ、デリバリースタッフの待機スペースなどに改装することで、注文から提供までのオペレーションをより効率化できます。
例えば、複数のデリバリープラットフォームに対応するための梱包エリアや、保温・保冷設備を充実させることで、顧客への迅速かつ高品質な商品提供が可能になります。
また、メニューをテイクアウトやデリバリーに適した品目に絞り込み、専門性を高めることで、「この料理ならこの店」という強いブランドイメージを確立し、特定のニーズを持つ顧客層に対して強力なアピールができます。丼ものやカレー、フライドチキンなど、持ち帰りや配達に適したメニューに特化することで、調理の簡素化と品質の安定化を図り、固定客の獲得につなげることができるでしょう。

パターン3:メニューを専門特化させて客単価を向上

総合居酒屋などが、特定のジャンルに特化して専門性を高めることで、客単価の向上を目指すパターンです。
例えば、看板となる食材やメニューを「熟成肉」「牡蠣」「クラフトビール」などに絞り込み、「この〇〇を食べるならこの店」という強いブランドイメージを構築できます。これは、特定の目的を持った顧客を呼び込み、付加価値の高いメニューを提供することで、客単価を向上させることが期待できるでしょう。
また、メニュー数を絞ることは、食材ロスの削減や調理オペレーションの効率化にもつながり、経営の安定化に貢献します。

例として、一般的な焼肉店から、希少部位の熟成肉に特化した専門店へと業態変更したケースが挙げられます。
この場合、通常の焼肉店では提供できないような高品質な肉を揃え、調理法や提供方法にもこだわり、高い客単価を設定しても顧客は「ここでしか味わえない体験」を求めて来店します。
さらに、専門性を高めることで、食材の仕入れも効率化され、特定の食材に関する深い知識を持つスタッフの育成も可能になります。これにより、顧客への提案力も向上し、顧客満足度を高めることにつながると言えます。

パターン4:既存の強みを活かして新たな看板メニューを開発

既存の飲食店が持つ独自の「強み」を最大限に活かし、それを基盤として新たな看板メニューを開発することで業態を再構築する戦略です。全く新しいジャンルに挑戦するのではなく、これまでの歴史や技術、人気メニューを深掘りして特化することで、既存顧客を維持しつつ、新たな層にもアピールできる可能性を秘めています。
例えば、長年愛されてきた自家製ソースが自慢の洋食店であれば、そのソースを活かした「専門のグラタン専門店」や「ビーフシチュー専門店」として転換することが考えられます。
また、和食店であれば、料理人がこだわり抜いてとる「出汁」を主役にした「だし茶漬け専門店」や「おでん専門店」といった業態も有効です。

自店の「強み」を前面に出すことで、顧客に対して一貫したブランドイメージを提供し、競合店との差別化を図ることができます。さらに、既存の設備や仕入れルートを比較的そのまま活用できるため、大規模な初期投資を抑えやすいというメリットもあります。

パターン5:カフェに物販スペースを併設して収益源をアップ

カフェに物販スペースを併設する業態は、飲食店の新たな収益源を確保し、経営の安定化を図る有効な方法です。
例えば、自家焙煎のコーヒー豆や、店舗で使用しているこだわりの食器、地域に根ざしたハンドメイド雑貨などを販売する物販スペースをカフェ内に設置することが挙げられます。
これにより、コーヒーやフードの提供による飲食収益に加えて、物販による収益も得られるため、売上全体の向上とリスク分散につながります。

物販スペースは、単に商品を販売するだけでなく、カフェの世界観やブランドイメージを顧客に伝える重要な役割も担います。
例えば、ナチュラルテイストのカフェであれば、オーガニック食品やエコフレンドリーな雑貨を置くことで、店のコンセプトに一貫性を持たせることができます。顧客は食事や飲み物を楽しむだけでなく、気に入った商品を購入して自宅でも店の雰囲気を味わえるため、顧客満足度の向上にもつながります。
結果として、客単価の向上だけでなく、店のファンを増やし、リピーターを獲得するきっかけにもなり得ます。
しかし、物販商品の選定には、カフェのコンセプトとの親和性や、ターゲット顧客のニーズを考慮した慎重な検討が必要です。また、商品の在庫管理や陳列方法など、物販ならではの運営ノウハウも求められるため、事前の計画と準備が成功の鍵を握ります。

パターン6:ファミリー層向けから「おひとり様」向けにターゲットを変更

このパターンは、社会のライフスタイルの変化に対応し、ターゲット顧客を大きく変更するものです。
例えば、郊外のロードサイド店などでファミリー層をターゲットにしていた店舗が、駅前立地などに移転し、カウンター席中心のレイアウトに変更して「おひとり様」や少人数グループを狙うケースが考えられます。共働き世帯の増加や非婚化などにより、「おひとり様」や少人数で外食を楽しむ層が増加しているため、このようなニーズに対応することで新たな顧客層を獲得できます。
ターゲットを変更する際は、メニュー構成、価格設定、内装デザイン、接客スタイルまで全てを見直し、新しい市場を開拓します。
例えば、ファミリー層向けの店舗では座敷席や子供向けのメニューが中心でしたが、「おひとり様」向けでは、仕事帰りに気軽に立ち寄れるようなカウンター席や、少量で多様なメニューを提供することで、顧客単価の向上と回転率の改善が期待できます。

パターン7:営業時間をニッチな時間帯に特化して競合を回避

このパターンは、多くの飲食店が集中するランチタイムやディナータイムの競争を避け、特定の時間帯に絞って営業することで、市場での優位性を築く戦略です。
例えば、早朝に特化した「朝食専門店」として、出勤前のビジネスパーソンや健康志向の顧客に栄養満点の朝食を提供したり、「夜パフェ専門店」として、飲んだ後のデザートや夜間のカフェ需要を狙ったりするケースが挙げられます。

このように、競合が少ない時間帯にサービスを集中させることで、独自の顧客層を獲得しやすくなります。
また、営業時間を絞ることで、食材の仕入れや人件費の管理がしやすくなり、運営コストの最適化にもつながるというメリットもあります。
成功の鍵は、ターゲットとなる顧客層のニーズを深く理解し、その時間帯に求められる特別なメニューや雰囲気を提供することと言えるでしょう。

飲食店の業態転換に関するよくある質問

飲食店の業態転換を具体的に検討し始めると、費用、資金調達、コスト削減の方法など、様々な疑問が浮かび上がってきます。
実際に多くの経営者が抱えるこれらの疑問について、事前に知識を得ておくことは、計画をスムーズに進める上で非常に重要です。

ここでは、業態転換に関して特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q.飲食店の業態転換にかかる費用はどのくらいですか?

A.業態転換の費用は、工事の規模や内容によって大きく変動するため、一概には言えません。
内装を一部変更する小規模な改装であれば数十万円から可能ですが、スケルトン状態から全面的に改装する場合は1,000万円以上かかることもあります。
費用を大幅に抑えたい場合、既存の設備を流用できる「居抜き物件」の活用も有効な手段です。

まずはコンセプトを固め、複数の内装業者から見積もりを取ることが重要です。

Q.業態転換に活用できる補助金や助成金はありますか?

A.業態転換には、国や地方自治体が提供する補助金や助成金が活用できる場合があります。
代表的なものに、新分野展開や業態転換を支援する「事業再構築補助金」が挙げられます。
その他にも、各自治体が独自の支援制度を設けていることがあるため、商工会議所や自治体のウェブサイトで情報を確認することをおすすめします。
申請には事業計画書の提出が必須となるため、早めの準備を心がけましょう。

Q.既存の設備を活かしてコストを抑える方法はありますか?

A.コストを抑えるには、既存の厨房設備や内装を最大限に活用することが最も効果的です。
新しい業態でも流用できるダクトや防水、ガス設備などをそのまま使うことで、工事費用を大幅に削減できます。
また、テーブルや椅子などの什器をリメイクしたり、DIYで内装の一部を手掛けたりすることもコスト削減につながります。
何を残して何を変えるかを慎重に見極めることが大切です。

まとめ

飲食店の業態転換は、経営不振を打開し、事業を再成長させるための強力な選択肢です。
成功のためには、現状の課題を正確に分析し、明確なコンセプトと実現可能な事業計画を立てることが不可欠となります。
また、メニュー開発や店舗改装といった実行フェーズだけでなく、保健所や消防署への法的な手続きも漏れなく行う必要があります。

本記事で紹介したステップや成功事例のパターンを参考に、自店の状況に合わせた慎重な計画立案と、準備を進めていきましょう。

退店サポートのバナー
店舗流通ネットグループ

著者:店舗流通ネット株式会社
編集チーム

「明日の街、もっと楽しく」をスローガンに、創業から25年、飲食店支援のスペシャリストとして4,000件を超える課題解決をサポートしてきました。
この長年の経験と知見を、悩めるオーナー様や未来の開業者様へ届けるべく、編集チームが執筆・解説します。