飲食店の開業までの流れとスムーズに準備を進めるためのポイントを解説

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飲食店を開業したいと考えても、初めての場合は「何から準備すればよいのか」「どんな流れで進めるのか」がわかりにくいものです。全体像を把握しないまま進めてしまうと、資金計画や物件探し、人材確保などで思わぬトラブルや遅れが生じることもあります。さらに近年は飲食業界全体で人材採用の難しさが大きな課題になっており、開業準備と同時に「スタッフの採用・教育」をどう進めるかも成功のカギとなります。

今回は、飲食店を開業するための一連の流れを時系列で解説しながら、スムーズに進めるためのポイントを紹介します。人材採用や出店戦略に成功した事例記事へのリンクもありますので、あわせて参考にしてください。

飲食店を開業するまでの流れ 

飲食店開業のおおまかな流れと、対応する時期の一般的な目安は以下のとおりです。 

飲食店を開業するまでの流れがざっくり分かる画像
※あくまで目安となります。

飲食店のコンセプト決める(開業12カ月)

飲食店の成功は 「どんな顧客に」「どんな価値を」提供するか にかかっています。居酒屋、レストラン、カフェ、オーガニック専門店、ファミリー向けなど、明確なコンセプトを打ち出すことで、店舗づくりやメニュー開発が一貫性を持ち、開業後の集客にもつながります。

事業計画書の作成(開業11ヵ月前)

飲食店を開業する際には、物件取得費や内装・設備投資、人件費、仕入れ費用、そして当座の運転資金など、まとまった金額が必要です。そのため「どれくらい資金が必要なのか」を明確にし、金融機関や投資家に納得してもらえる形で示すために、事業計画書の作成は欠かせません。事業計画書は単なる数字の羅列ではなく、店舗のコンセプトやターゲット顧客、将来の成長イメージまでを整理する大切な経営ツールです。ここで計画を具体化できるかどうかが、開業後の安定した運営にも直結します。ここでは、事業計画書の作成について解説します。

必要な開業資金を具体的に把握する 

飲食店の開業には、物件取得費・保証金、内装や厨房機器などの設備費、人材採用にかかる人件費、オープン前後の広告宣伝費、さらに半年程度の運転資金を準備するのが一般的です。
事業計画書を作成することで、どの費用にいくら必要かを細かく洗い出せます。これにより、資金ショートのリスクを未然に防ぐことができます。

サービス内容を具体化し、競合との差別化を図る

飲食業界は競争が激しく、立地や価格だけでなく、「その店ならではの魅力」が生き残りの鍵となります。事業計画書を通じて、自店のコンセプトやメニューを整理し、競合店との差別化ポイントを明確にしましょう。例えば、「地域に根ざした食材活用」「深夜営業に特化」「高単価でも付加価値を提供」など、ターゲット顧客に刺さる強みを具体化しておくことが大切です。 

融資・補助金・助成金の申請準備

銀行融資を受ける場合や、自治体・国の補助金や助成金を活用する場合、事業計画書は必ず求められます。特に金融機関は、売上予測や損益シミュレーションを見て「返済可能性があるか」を判断します。計画書の精度を高めることで、資金調達の成功率を大きく高めることができます。

飲食店の事業計画に盛り込むべき要素

飲食店の事業計画書には、以下の内容を盛り込むのが基本です。

ビジョンとミッション 

事業の方向性や目標を明確に定義し、どのような価値を提供するか、どういった顧客層に焦点を当てるかなどを示します。 

コンセプトの説明 

店舗の独自性、こだわり、競合との差別化ポイントを記載します。

運営計画 

営業時間、席数、従業員配置、オペレーションフローなど日常の運営方法を示します。 

財務予測 

開業資金、売上・原価・人件費などの収支予測を立て、収益性を評価します。 

資金調達 

自己資金、金融機関からの融資、補助金・助成金など、具体的な調達手段を明記します。

実行スケジュール(時間軸の設定)

開業までの準備スケジュールを示し、各工程での達成目標を設定します。 

事業計画書作成について詳しくは、以下の記事をご覧ください。 

飲食店の物件探し(開業8ヵ月前)

物件は売上に直結する重要な要素です。立地条件、競合状況、家賃、スケルトンか居抜きかなどを多角的に検討し、必要に応じて専門業者のサポートを受けましょう。

飲食店の物件探しで失敗しないために押さえるべきポイント

飲食店を開業する際、最も重要なステップの一つが物件探しです。立地や物件条件はその後の売上や集客力に直結するため、「家賃が安いから」「駅から近いから」といった単純な理由で決めてしまうのは危険です。さらに、金融機関から融資を受ける際にも「どの場所でどんな店舗を運営するのか」という具体的な物件イメージが求められるため、計画段階から慎重に進める必要があります。ここでは、飲食店オーナーが物件選びで必ず確認しておきたい要素を整理しました。物件探しのポイントは次の通りです。

・ターゲット層が集まるエリアか
・居抜き物件かスケルトンか(初期費用の差が大きい)
・家賃と売上予測のバランス
・設備・法規制の確認

物件探しについては、以下の記事で詳しく解説しています。 

飲食店の開業資金の調達(開業5ヵ月前)

飲食店開業の平均資金は約1,000万円前後といわれています。多くの経営者にとって、自己資金だけでまかなうのは難しく、銀行融資や日本政策金融公庫の制度、公的助成金や補助金も視野に入れる必要があります。さらに、最近ではクラウドファンディングを活用し、開業前から顧客を巻き込んで資金調達とプロモーションを同時に進める飲食店も増えてきました。

調達方法には以下のような選択肢があります。 

  • 銀行融資、公的融資(日本政策金融公庫など)

飲食店開業時に多く利用されるのが、銀行融資や公的融資です。特に日本政策金融公庫は、開業資金に特化した融資制度を提供しており、低金利かつ無担保での融資を受けられる可能性があります。ただし、事業計画書や返済計画の精度が審査に大きく影響するため、しっかりと準備が必要です。

  • 助成金や補助金の申請 

地方自治体や国が提供する支援制度です。返済不要なのが大きなメリットですが、申請には条件や審査があり、採択されるかどうかは保証されません。採択までの期間が長引く場合もあるため、他の調達手段と並行して検討しましょう。 

  • クラウドファンディング 

オンライン上で支援者を募る方法です。単なる資金調達にとどまらず、開業前からお客様を巻き込み、ファンづくり・話題づくり・宣伝効果にもつながるのが特徴です。支援が集まらなければ資金調達に失敗するリスクがあるため、企画力や情報発信力が求められます。 

  • 家族や友人からの借入 

柔軟に資金を調達できる手段であり、金融機関に比べて条件が緩やかなケースが多いのがメリットです。しかし、返済条件を曖昧にすると、後々の人間関係に影響を及ぼすリスクもあります。必ず契約書を交わし、返済計画を明確にしておくことが信頼関係を守るポイントです。

  • 公的融資機関の利用

日本政策金融公庫などの公的融資機関から資金を借り入れる方法です。低金利での融資や保証制度の活用が可能ですが、審査を受ける必要があります。 

それぞれメリット・デメリットがあるため、複数を組み合わせて計画的に調達するのが理想です。開業資金の詳細については、以下の記事をご覧ください。 

飲食店の開業準備(4ヶ月前) 

従業員がお店をオープンしている様子

飲食店の開店準備には、主に以下のような項目があります。 

スタッフの採用・教育 

飲食店は人で成り立つビジネスです。接客スタッフや厨房スタッフの採用は、サービス品質や店舗運営の安定性に直結します。求人媒体の活用や紹介を通じて人材を確保したら、開業前に十分な研修を行い、接客マナーやオペレーションを習得してもらうことが重要です。教育体制を整えることで、開業初日から安定したサービスを提供できます。

厨房機器・備品・設備の準備 

店舗運営には、厨房機器(オーブン・冷蔵庫・調理器具など)やPOSレジ、テーブル・椅子などの家具類が欠かせません。新品で揃えるとコストがかさむため、中古品の活用やリース契約も検討すると良いでしょう。また、店舗レイアウトに合わせた導線設計を意識することで、作業効率を高められます。 

メニュー開発と食材仕入れルートの確保

飲食店の差別化ポイントは「メニュー」です。原価率を考慮しながら魅力あるメニューを開発し、開業前にテスト提供や試食会を実施するのがおすすめです。また、安定的に仕入れられる食材ルートを確保することは、長期的な店舗経営の安定につながります。複数の仕入れ先を持っておくとリスク分散にもなります。

内装・外装工事 

店舗デザインは「お客様がまた来たいと思うか」を左右する重要な要素です。コンセプトに沿った空間作りを意識し、内装・外装の工事を進めましょう。看板や照明、外観の印象は集客に直結します。施工会社との打ち合わせは早めに行い、工期が遅れないようスケジュール管理を徹底してください。

オペレーションの事前シミュレーション

開業前に一度「模擬営業」を行い、スタッフ動線・調理時間・配膳の流れをシミュレーションしておくことが効果的です。事前に課題を洗い出して改善しておけば、開業後の混乱を最小限に抑えることができます。

実際に採用に成功した出店事例はこちらの記事をご覧ください。

飲食店開業までの各種届出・手続き(開業1ヵ月前)

飲食店をスムーズに開業するためには、保健所や消防署、警察署、税務署などへの 各種届出や手続き が必須です。これらは法律で定められており、手続きを怠ると営業許可が下りず、開業日が延期になるリスクもあります。手続きを怠ると営業許可が下りず、開業予定日に間に合わない可能性があります。特に、食品営業許可や開業届、社会保険・労働保険の加入などは早めに準備しましょう。手続きのスケジュール管理を怠らず、必要書類や申請窓口を事前に確認しておくことが大切です。代表的なものは以下です。 

届出・手続き先詳細
開業届(税務署)法人でなく個人で経営する場合。
食品営業許可申請(保健所)食品衛生責任者の取得および飲食店の営業許可を保健所で取得 。
火を使用する設備等の設置届(消防署収容人数30人以上の店舗で火気を使用する場合。防火管理者の設置が必要。 
深夜における酒類提供飲食営業開始届出書(警察署)午前0時を過ぎて酒類を提供する飲食店の場合 。
風俗営業許可申請(警察署)客に接待行為を行う飲食店などの場合。
社会保険の加入(日本年金機構・社会保険事務所)法人で従業員を雇用する場合 。
労災保険の加入(労働基準監督署)従業員やアルバイトを雇用する場合。
雇用保険の加入(公共職業安定所)従業員を雇用し、31日以上の雇用予定と週の労働時間が20時間以上になる場合。

飲食店開業は「届出・手続き」が最後の関門 

飲食店の開業を成功させるには、物件探しやコンセプト設計、資金調達といった準備と並行して、届出・手続きを計画的に進めることが重要です。
・届出の種類を一覧化し、優先順位をつけて進める
・書類不備や手続き漏れを防ぐため、行政書士や税理士などの専門家に相談する
・少なくとも開業1ヵ月前から動き出す
これらを徹底することで、開業準備をスムーズに進められ、安心して新しい飲食店をスタートできます。

飲食店をスムーズに開業するポイント

飲食店開業は資金調達や物件契約だけでなく、コンセプト設計から人材確保、マーケティングまで幅広い準備が必要です。開業後に「資金が足りない」「物件の立地が悪かった」と後悔しないためには、事前に十分な計画を立て、開業準備を一つずつ着実に進めることが大切です。

飲食店をスムーズに開業するために押さえるべき3つのポイントを解説します。

      十分な開業計画を立てる(事業計画書の作成) 

      飲食店を成功させるためには、事業計画の策定 が欠かせません。
      ・資金計画:開業資金と運転資金を分けて考える
      ・メニュー開発:ターゲット顧客層に合った商品を設計
      ・人材確保:採用・教育方針を明確化
      ・マーケティング:SNSやチラシなどの集客施策を事前に準備
      特に金融機関から融資を受ける場合、事業計画書は審査に直結します。資金調達をスムーズに進めるためにも、数値根拠のある事業計画 を用意しましょう。

      物件探しは慎重に進める 

      飲食店経営において物件は売上を大きく左右する要素です。安易な決定は禁物であり、以下の観点で検討しましょう。
      ・立地条件:駅近・人通り・商圏人口を分析
      ・競合調査:周辺飲食店の業態・価格帯をリサーチ
      ・居抜き物件の活用:初期費用を抑えつつ短期間で開業可能
      ・専門業者のサポート:店舗不動産に強い業者を活用することで、非公開物件や有利な条件の物件に出会える可能性が高まります。 居抜き物件の活用、店舗専門の業者に相談するなど、多角的な視点で検討しましょう。

      初期費用を抑えて資金に余裕を持たせる

      飲食店開業時に資金をすべて使い切ってしまうと、開業後の運転資金が不足し、廃業リスクを高めてしまいます。
      ・居抜き物件の利用で工事費を削減
      ・厨房機器や家具を中古で調達
      ・リースやサブスクを活用して初期投資を抑える
      資金に余裕を残すことで、オープン直後の赤字期間を乗り切り、安定した経営につなげられます。

      飲食店開業後の成功は物件選びと資金確保が重要

      飲食店開業は、必要な手順を踏めば誰でもスタートできます。しかし本当に難しいのは、開業後に安定した経営を継続できるかどうかです。十分な準備をせずに開業すると、思うように集客が伸びず、早期閉店に追い込まれるケースも少なくありません。中でも特に重要なのが物件選び資金確保です。「資金が足りずに広告が打てない」「居抜き物件を選んだが改装費がかさんだ」などの失敗例を避けるためにも、事前計画とプロのサポートを取り入れることが、成功への近道です。

      店舗流通ネットの「ショップサポート」は、こうした課題を抱える飲食店経営者を支援するためのサービスです。秘匿性の高い優良物件のご紹介から契約に至るまでを専門スタッフがサポートし、さらに内装工事や厨房機器の準備までワンストップで対応します。これにより、初期費用を大幅に抑えた開業が可能となり、開業後の運転資金に余裕を持たせることができます。「できるだけ初期投資を抑えて飲食店を開業したい」「安心して事業をスタートさせたい」とお考えの方にとって、ショップサポートは最適な仕組みです。開業を検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。