店舗リースからソリューション提供へ。店舗流通ネットのコロナ禍での事業変革

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2000年にフューチャークリエイト株式会社として創業し、飲食店の業務委託型ビジネスのパイオニアとして、飲食店に特化した店舗リース事業を柱にビジネス展開をしてきた店舗流通ネット。

創業から20年となる2020年11月1日、代表取締役社長であった石井が代表取締役TRNグループ統括に、常務執行役員であった戸所が店舗流通ネットの代表取締役社長へ就任し、「飲食店の出退店支援事業」から「店舗運営事業者へのソリューション提供事業」へのモデルチェンジを決意しました。

本記事では社長の戸所に、“店舗を作るだけじゃない”方向へ舵を切った理由や経緯、店舗流通ネットが展開する“街づくり”のための新たな事業について語っていただきました。

コロナ禍で一変した飲食店の課題

戸所 岳大(トドコロ タケヒロ) / 店舗流通ネット 代表取締役社長

2005年、店舗流通ネット新卒1期生として入社。現在の主軸事業の基礎である飲食店の出退店支援事業に従事し、2012年営業部部長に就任。2017年の常務執行役員就任後に飲食店へ向けた人材紹介事業を立ち上げる。2020年11月に代表取締役へ就任。新たに「内製、協業、M&A」の三本の柱を掲げ、事業ポートフォリオの変革に向けオープンイノベーション活動などアグレッシブな事業展開を行う。

ーーこれまで行ってきた店舗流通ネットの出退店支援についてお話を聞かせてください。当社は飲食店が抱える課題に対してどのようなサポートを行ってきたのでしょうか?

飲食店を出店する際、物件を借りるための保証金や内装工事費用など、多額の初期費用がかかります。大半の飲食事業者は、これらの費用の捻出を金融機関からの借り入れに依存するため、出店速度は上がらず、手元に残る資金も乏しいといった課題を抱えていました。

そこで当社では、“初期費用を抑える”ことと“利益率の向上”に着目し、居抜き物件を活用した出店支援を行ってきました。当社の主力サービスでもある『ショップサポートシステム』では、当社が出店をする物件を賃借し、厨房やエアコンなどの設備は既存のものを生かし、内装は出店希望者の意向に沿った工事を施し出店をします。さらに、これらの内装工事費用を当社が負担することで、飲食店側は借入金に依存せずとも利益率を高める出店サポートを行ってきました。

また、退店においては、閉店する店舗物件を当社で引き取り・買い取りを行った上で、これらの物件を新規出店希望者へご紹介してきました。閉店する店舗は金銭的な課題を抱えているケースが多いため、解体工事等の退店費用の負担を減らし、新たにその物件で出店したい方へ受け継ぐ、出店者と退店者の両者にとってメリットに働く出退店のサイクルを確立しながら、これまで累計約4,000件の出店サポートを手掛けてきました。

ーーそのようなサポートを行いながら密に関わってきた当社と飲食店にとって、2020年の新型コロナウィルスの流行による飲食業界全体の落ち込みは大きな出来事だったと思います。当時の状況はいかがでしたか?

多くの飲食店では、新型コロナウィルスの感染拡大による来店客の減少から、売上が大幅に落ち込み、これまで想像できないような災難に見舞われていました。テイクアウト・デリバリーの導入や国や自治体からの協力金でどうにか持ちこたえていましたが、協力金もいつまで続くかが不透明な状況下で、今後どのような経営をしていくことが最善なのかが分からない状況でした。

当社でサポートしている店舗も売上低迷による閉店が続き、当社としても大量の空き物件が発生してしまう課題が新たに生まれました。当時は緊急事態宣言が発令されていたこともあり、出店ニーズはほぼ皆無の状態で、非常に頭を悩まされた時期だったことを覚えています。

事業継続のために踏み出したビジネスモデルの変革

ーー戸所社長は同時期に執行役員から代表取締役へ就任されましたが、そのような厳しい状況の中、どのようなビジョンを描き、当社はどう動くべきだと考えていたのでしょうか?

まず第一に行うべきことは、会社のキャッシュの保全、即ち当社で出店サポートをした店舗の閉店を防ぐことでした。当社に店舗を貸してくださっている大家の皆様が毎月の家賃の減免に協力してくださったことで、多くの店舗が救われました。その際にご協力いただいた皆様には心から感謝しています。

コロナ禍で人々の生活が一変したことにより、飲食業界は各事業者がこれまで持っていたセオリーが一切通用しない、先行きが不透明な局面を迎えました。このような状況下で、出退店のみの支援だけでは事業継続がままならない可能性があると感じ、サービスのバリューアップとして、店舗運営のサポートの充実を決意しました。

今までは、当社は金融と不動産の領域で出店を支援し、運営は各事業者の裁量に委ねる、いわば餅は餅屋の考えでしたが、運営中のサポートを充実させることにより、飲食店の売上向上やコスト削減に貢献できるだけではなく、当社にとっても事業収益の向上が見込めると考えました。お互いにメリットを生み出せるビジネスモデルの構築を思索し、“店舗にまつわるソリューション提供”へとビジネスモデル変革に乗り出しました。

あごに手を当てている戸所代表取締役社長の写真

ソリューションと事業の展開による新たな角度からの運営サポート

ーー店舗にまつわるソリューション提供企業として、具体的にどのような事業やサービスを展開しているのか教えてください。

新たに展開した事業、サービスは3つあります。最初に展開したのは、運営中の店舗にかかるコストを削減するためのサービスです。

①コスト削減サービス

電気やガスなどのインフラ関係、レジなどの決済端末関連、店舗設備のメンテナンスなど、店舗運営に必要な設備を通常よりも安い費用で導入できるサービス。その他にも、食品関連業者の紹介やデリバリーサービスのサポートが可能。

コスト削減サービスの詳細はこちらの記事からご確認ください。

②人材支援事業

次に、飲食業界の人材不足解消への一助として、2018年より行ってきた人材支援事業にこれまで以上に力を注ぎ、飲食業界でのハイクラス人材の紹介事業や飲食業での従事に高い関心を持つ特定技能外国人材採用支援サービス事業を充実させました。

(1)飲食業界へのハイクラス人材紹介「入札採用.COM」

約12,000社の企業に対して、飲食業勤務希望登録者の業務経験を公開し、条件を自由に設定したうえで仕事条件が受け取れる、非公開・希少性の高い入札型のハイクラスな人材紹介サービス。

(2)外国人材採用支援サービス「VUI TOWN(ブイタウン)」

特定技能資格を保有した志の高い外国人材を飲食店へ紹介する人材支援サービスの公式サイト。複数名を一括採用したい、人材紹介料を抑えたいなどのお悩みをお持ちの飲食店へ、一定のスキルを持ち、成長意欲のある外国人材をご紹介するサービス。

さらに新たな試みとして、オープンイノベーションでのサービス構築と、M&A事業を展開しました。当社はこれまですべての事業・サービスを内製していましたが、他社と当社のリソースを組み合わせることで事業スピードを加速させ、これまで以上に飲食業界に貢献することができるのではと考えました。

③オープンイノベーションとM&A

(1)オープンイノベーション
株式会社NTTドコモ様とのアプリ開発、株式会社ツナグHD様とアルバイトの募集支援、株式会社MILIZE様との飲食店の売上予測を行うAI店舗開発プロジェクトの取り組みなど、協業から飲食業界に役立てられるソリューションの創出。

(2)M&A事業
製菓・製パン店様向け顧客管理POSレジシステム「ninaposⓇ」の開発・販売を行う株式会社アニーがTRN Groupへ参入。より強固な経営基盤を築き、サービスの品質向上と新規事業への参入の可能性を広げる。

ーー時代の変化と飲食店のニーズに合わせてさまざまな事業を展開していますが、今後課題となる点はありますか?

今回のモデルチェンジによって、飲食店のコストを削減するという点において、一定の貢献ができ、これまで以上に質の高いサービスを提供できるようになったと考えています。

しかしながら、“店舗の売上をのばす”という部分に対しては、まだまだ課題が多いと感じております。
立地産業と言われてきた飲食業ですが、昨今のSNSの普及などによりマーケティング業としての側面が顕著に現れ、繁盛店は日々変化しています。繁盛店にはどのような勝ち筋があるのかを見出し、飲食店の売上向上に繋がる本質的なサポートができてこそ『本来のソリューション提供』に繋がると信じています。

真剣な表情で話す戸所代表取締役社長

「明日の街、もっと楽しく。」の実現へ

ーー最後に、今後のビジョンを聞かせてください。

コロナ禍で飲食業は人材不足、原材料高、業態の陳腐化速度の上昇、外食機会の減少といった問題が顕著になり、事業者側は本来得られるはずのスケールメリットがデメリットとなってしまい、もはや規模の拡大は正とは言えない状況です。

そのような環境下で今後の飲食業界における当社の役割は、特色ある個店を数店舗規模の小さなチェーン店化することを支援しながら、事業者同士を繋げ、オルタナティブデータを用いた“街ごとの飲食店のエコシステム”を作ることです。即ち、飲食事業者単位で戦うことを支援しながら、街全体にある飲食店の魅力を集客装置とすることで、コーポレートスローガンである「明日の街、もっと楽しく。」を叶える術になると考えています。