飲食店の労働時間|労働基準法に基づく管理方法と長時間労働の対策
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飲食業は営業時間が長く、仕込みや片付けなど営業時間外の業務も多いため、従業員の労働時間が長くなる傾向にあります。
労働基準法を正しく理解し、適切な勤怠管理と労働環境の改善をおこなうことは、コンプライアンス遵守だけでなく、人材の定着やサービスの質向上にも不可欠です。
この記事では、労働基準法に基づく飲食店の労働時間管理の基本から、長時間労働を改善するための具体的な対策まで解説していきます。
こんなお悩みはありませんか?
✅人手不足で長時間労働が常態化している
✅店長や社員の負担が大きく、現場が回らない
✅労働時間は管理しているが、改善につながっていない
こうしたお悩みの多くは「労務管理」だけでなく、採用・育成・組織設計の仕組みに問題があるケースも少なくありません。
TRNグループでは、飲食企業様の組織課題を整理し、採用から組織づくりまでを一体で見直す「採用・組織づくりサポート」をご提供しています。
目次
飲食店における労働時間の基本ルール【労働基準法】
飲食店の労働時間を管理する上で最も基本となるのが、労働基準法に定められたルールです。
法律で定められた労働時間の上限や休日に関する規定は、すべての企業に遵守義務があります。
従業員の健康を守り、健全な店舗運営をおこなうためにも、まずは法定の基本ルールを正確に理解することが重要です。
特に、これから解説する「法定労働時間」と「特例措置」に関する知識は、適切な勤務シフトを作成する上で欠かせません。
原則は「1日8時間・週40時間」の法定労働時間
労働基準法第32条では、労働時間の上限として「法定労働時間」が定められています。
原則として、使用者は労働者に対し、休憩時間を除いて1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはなりません。
この時間を超えて労働させる場合は、時間外労働となり、後述する36協定の締結と割増賃金の支払いが必要です。
パートやアルバイトなど雇用形態に関わらず、すべての労働者にこの原則が適用されます。
特例措置対象事業場なら週44時間まで可能
常時使用する労働者が10人未満の小規模な飲食店は、「特例措置対象事業場」に該当します。
この特例が適用される事業場では、週の法定労働時間が44時間まで緩和されます。
これにより、繁閑に応じて労働時間を調整しやすくなります。
ただし、この特例を適用した場合でも、1日の法定労働時間は8時間のままであり、週44時間を超える労働や1日8時間を超える労働には、通常通り割増賃金が必要となるため注意が必要です。
飲食店の残業と休日労働に関するルール「36協定」

法定労働時間を超える時間外労働や法定休日の労働は、原則として法律で禁止されています。
飲食店において、やむを得ず法定労働時間を超えて従業員に勤務してもらうためには、事前に「36協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
これは所定労働時間ではなく、法定労働時間を超える場合に必須の手続きであり、適切な労務管理の根幹をなすルールと言えます。
「36協定」とは?
「36協定」とは、労働基準法第36条に基づく「時間外労働・休日労働に関する協定」の通称です。
使用者が労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、法定休日に労働させたりする場合に、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者との間で書面による協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。
これは、就業規則とは別に、時間外労働を行わせるための法的な根拠となります。
36協定で定められる残業時間の上限
36協定を締結しても、無制限に残業をさせることはできません。
法律により、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間と定められています。
突発的な事情でこれを超える必要がある場合は、特別条項付きの36協定を結ぶことで、
・年720時間以内
・複数月平均80時間以内
・月100時間未満
といった、さらに詳細な上限の範囲内で時間外労働が可能になります。
1日10時間や12時間を超えるような勤務が常態化しないよう、厳格な管理が求められます。
36協定を結ばずに残業させた場合の罰則
36協定を労働基準監督署に届け出ずに法定労働時間を超えて労働させたり、協定で定めた上限時間を超えて残業させたりする行為は、労働基準法違反となります。
この場合、事業者に対して「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
知らなかったでは済まされない重大な問題であり、労働基準監督署による是正勧告や、場合によっては企業名が公表されるリスクも伴います。
飲食店の繁閑差に対応する「変形労働時間制」の活用

飲食店は、曜日や時間帯、季節によって業務の繁閑差が激しい業種です。
このような業務の波に柔軟に対応し、労働時間を効率的に管理する手法として「変形労働時間制」があります。
この制度は、一定期間を平均して週の法定労働時間が40時間(特例事業場は44時間)以内に収まっていれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて働くことが可能になる仕組みです。
残業代を抑制しつつ、効率的な人員配置を実現できる制度と言えます。
変形労働時間制を導入するメリット
変形労働時間制を導入する最大のメリットは、業務の繁閑に合わせて労働時間を柔軟に配分できる点です。
忙しい日には所定労働時間を長く設定し、比較的閑散な日には短く設定することで、無駄な労働時間を削減し、時間外労働手当の発生を抑制できます。
これにより人件費の最適化が図れるほか、従業員にとってもメリハリのある働き方が可能となり、閑散期に長期休暇を取得しやすくなるなど、ワークライフバランスの向上も期待できるでしょう。
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変形労働時間制の導入方法
変形労働時間制を導入する際は、対象期間を平均して週あたりの労働時間が法定労働時間の範囲内に収まるよう、事前に勤務計画を立てることが基本となります。
具体的には、就業規則への記載や労使協定の締結を通じて、対象期間の起算日や各日・各週の労働時間を明確に定めなければなりません。
この際、特定した労働日や勤務シフトを途中で任意に変更することは原則として認められないため、事前の正確な需要予測に基づいた柔軟な設計が求められます。
労使協定で導入する場合は、所轄の労働基準監督署長への届出も必須です。
手続きを正しく完了させることで、繁忙期に合わせた効率的な人員配置が可能になります。
1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月以内の期間を平均して1週間あたりの労働時間が法定労働時間内に収まるように調整する制度です。
この制度を導入することで、飲食店特有の日ごとの繁閑差に合わせた柔軟なシフト管理が可能になります。
例えば、週末や祝日などの繁忙日には1日の労働時間を長く設定する一方で、平日の閑散日には短く設定するといった運用が認められます。
これにより、特定の日の労働時間が8時間を超えても、期間全体で調整されていれば、その超過分に対して時間外手当を支払う必要がなくなる点が大きな特徴です。
1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制は、1年以内の期間を平均して1週間あたりの労働時間を40時間以内に収める制度です。
季節による繁閑の差が激しい店舗に適しており、忘年会シーズンなどの繁忙期に労働時間を長く設定する分、閑散期に休日を増やしたり勤務時間を短縮したりすることで調整します。
1ヶ月単位の制度よりも厳格な管理が求められますが、年間の業務スケジュールを見通した効率的な人員配置が可能となります。
適切に運用することで、年間を通じた時間外手当の削減と、従業員の長期休暇取得を促進する柔軟な働き方を両立できるでしょう。
飲食店で長時間労働が発生してしまう3つの主な原因

飲食店の労働時間が長い傾向にある背景には、業界特有の構造的な課題が存在します。
人手不足や営業時間外の業務、需要の変動といった要因が複雑に絡み合い、従業員一人ひとりの負担を増大させています。
ここでは、飲食店で長時間労働が常態化しやすい主な3つの原因を解説します。
原因1:慢性的な人手不足による一人当たりの負担増
飲食業界は、他業種と比較して離職率が高く、慢性的な人手不足に悩まされています。
特に地方や小規模な店舗では、十分な人員を確保することが困難な状況です。
その結果、在籍しているスタッフ一人ひとりの業務範囲が広がり、労働時間が長くなってしまうのです。
急な欠員が出た場合には、他の従業員がその穴を埋めるために長時間労働を強いられるなど、個人の負担が過重になりやすい構造的な問題となっています。
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原因2:営業時間外に発生する仕込みや片付け業務
飲食店の業務は、顧客にサービスを提供する営業時間内だけでは完結しません。
開店前には食材の仕込みや清掃、開店準備が必要であり、閉店後には後片付けやレジ締め、翌日の準備など、多岐にわたる付随業務が発生します。
特に社員はこれらの業務を担うことが多く、結果として営業時間の前後にも労働時間が発生し、拘束時間が長時間化する一因となっています。
これらの業務を効率化できないと、サービス残業の温床にもなりかねません。
原因3:急な予約や団体客への対応による業務量の変動
飲食店の業務量は、日々の来客数によって大きく変動します。
特に、事前の予測が難しい当日の急な予約や、予期せぬ団体客の来店は、現場のオペレーションに大きな負荷をかけます。
一時的に業務量が急増すると、休憩時間を十分に取れなくなったり、予定していた終業時間を大幅に過ぎてしまったりすることが少なくありません。
このような突発的な業務量の増加に正社員が中心となって対応するため、結果的に長時間労働につながりやすくなってしまうのです。
長時間労働を防ぐ5つの対策

飲食店の長時間労働は、従業員の心身の健康を損なうだけでなく、サービスの質の低下や離職率の増加を招き、経営にも悪影響を及ぼします。
この問題を解決するためには、原因を根本から見直し、多角的な視点から労働環境の改善に取り組む必要があります。
ここでは、長時間労働を防ぎ、従業員が健康的に働ける環境を構築するための具体的な5つの対策を紹介します。
対策1:勤怠管理システムを導入し労働時間を正確に把握する
長時間労働を是正するための第一歩は、従業員一人ひとりの労働時間を客観的かつ正確に把握することです。
しかし、手書きの出勤簿やタイムカードでは、記録の漏れや改ざんのリスクがあり、正確な管理が困難でしょう。
そのような問題を解決するのが、ICカードやスマートフォンアプリで打刻できる勤怠管理システムの導入です。
出退勤時刻や休憩時間をリアルタイムで正確に記録し、時間外労働や深夜労働の自動集計が可能になります。
客観的なデータに基づき労働実態を可視化することで、特定の人に負担が集中している状況の早期発見が期待できます。
適切な労務管理体制を整えることは、法令遵守のみならず、スタッフが安心して働ける環境づくりにつながります。
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対策2:業務マニュアルを作成して作業を効率化・標準化する
調理や接客、清掃といった各業務の手順をマニュアル化し、作業を標準化することは、業務効率の向上に直結します。
作業が特定の社員の経験や勘に依存する「属人化」の状態では、その人が不在の際に業務が滞り、全体の生産性が低下してしまいます。
誰が担当しても一定の品質とスピードで作業を遂行できる体制を整えることで、無駄な時間を削減し、新人教育にかかる時間も短縮できるでしょう。
対策3:予約システムやセルフレジを導入して業務を自動化する
ITツールを積極的に活用し、定型的な業務を自動化・省力化することも有効な対策です。
例えば、ウェブ予約システムを導入すれば電話対応の時間を削減でき、セルフオーダーシステムやセルフレジを導入すれば、注文受けや会計業務の負担を大幅に軽減できます。
これらの投資は、経営の効率化に貢献するだけでなく、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を作り出し、長時間労働の削減にもつながります。
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対策4:従業員のスキルアップ研修をおこない生産性を向上させる
従業員一人ひとりのスキルを高め、生産性を向上させることも長時間労働の抑制に効果的です。
調理技術や接客スキル、複数の業務を同時にこなすマルチタスク能力などを向上させるための研修を実施します。
スキルアップは、作業時間の短縮に直接つながるだけでなく、従業員のモチベーションを高め、主体的に働く意欲を引き出す効果も期待できます。
結果として、店舗全体の業務効率が向上し、労働時間の短縮が実現しやすくなります。
一方で、実際の現場では「研修を実施しているのに思ったように効果が出ない」という声も少なくありません。
その背景には、
✅教える内容が人によってバラバラ
✅スキルの到達基準が不明確
✅評価や昇給との連動がない
といった、”育成の仕組み”が整理されていない状態があります。
こうした課題を解消するためには、研修単体ではなく、「どのようなスキルを、どの段階で習得し、どのように評価するのか」までを一体で設計することが重要です。
TRNグループの「採用・組織づくりサポート」では、こうした育成の土台となる仕組みづくりの一環として、人事評価制度の設計から導入、その後の運用・定着まで一貫して伴走支援しています。
評価基準やスキル要件、キャリアの道筋が明確になることで、
現場での教育が機能しやすくなり、結果として業務効率化や長時間労働の改善にもつながります。
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対策5:休憩時間を確保できるシフト体制を構築する
法律で定められた休憩時間を確実に取得させることは、使用者の義務です。
忙しさを理由に休憩が取れない状況が常態化しないよう、シフトの組み方を工夫する必要があります。
例えば、ランチとディナーの間のアイドルタイムに交代で長めの休憩時間を設定したり、人員に余裕を持たせたシフトを作成したりするなどの対策が考えられます。
適切な休憩は、従業員の疲労回復と集中力の維持に不可欠であり、労災の防止にもつながります。
飲食店の労働時間に関するよくある質問
ここでは、飲食店の労働時間に関して、経営者や従業員から寄せられることが多い質問とその回答を紹介します。
労務管理上のトラブルを未然に防ぐためにも、正しい知識を身につけておくことが重要です。
ぜひ参考にしてください。
Q. アルバイトやパートタイマーにも労働基準法は適用されますか?
A. はい、適用されます。
労働基準法は、正社員やアルバイト、パートタイマーといった雇用形態に関係なく、すべての労働者に適用される法律です。
したがって、1日8時間・週40時間の法定労働時間、休憩、休日などの規定は、アルバイト従業員にも同様に守られる必要があります。
法定労働時間を超えて勤務した場合は、割増賃金の支払いも義務付けられています。
Q. 休憩時間が思うように取れません。違法になりますか?
A. 違法になる可能性が高いです。
労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが義務付けられています。
忙しいなどの理由で法定の休憩時間を与えないことは法律違反です。
この問題を防ぐためには、シフト作成時にあらかじめ休憩時間を組み込み、交代で確実に休憩が取れる体制を整える必要があります。
Q.「店長は管理監督者だから残業代は出ない」と言われましたが本当ですか?
A. 必ずしも本当ではありません。
「管理監督者」に該当する場合、労働時間や休憩、休日の規定は適用されませんが、その認定は役職名ではなく実態で判断されます。
経営方針の決定に関与し、自らの出退勤に裁量を持ち、地位にふさわしい待遇を受けているなど、厳しい要件を満たす者が該当します。
単に店長というだけで、これらの権限や待遇がない場合は「名ばかり管理職」とみなされ、残業代の支払い義務が発生する可能性もあります。
まとめ
飲食店における労働時間の適正管理は、労働基準法の遵守だけでなく、従業員の定着やサービス品質の維持にも大きく関わる重要なテーマです。
法定労働時間や36協定といった基本ルールの理解に加え、勤怠管理の徹底や業務の標準化、IT活用、育成強化などを組み合わせることで、長時間労働の改善は着実に進めることができます。
一方で実際の現場では、「人手不足が続く」「人が育たない」「負担が偏る」といった問題が重なり、労働時間の改善が思うように進まないケースも少なくありません。
その背景には、採用・育成・評価といった組織の仕組みそのものが整理されていないことが影響している場合もあります。
「どこに課題があるのか整理したい」
「現場負担を減らしながら、持続的に運営できる体制をつくりたい」
そのように感じられた方は、当社の「採用・組織づくりサポート」をぜひご活用ください。
情報収集としての一歩でも構いません。
まずは現状の課題を整理するだけでも、改善の方向性が明確になります。
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