飲食店の人件費率の目安は?正しい計算方法と最適化のコツ
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飲食業の経営において、人件費の管理は利益を確保するための重要な要素です。
多くの経営者が、自店の人件費率が適正なのか、その目安や正しい計算方法について関心を持っています。
特に近年は最低賃金の上昇が続いており、従来と同じオペレーションでは利益を維持しづらくなっています。
この記事では、飲食業における人件費率の目安から、業態別の平均値、正確な計算方法、そしてサービスの質を落とさずにコストを最適化する手法まで網羅的に解説します。
この記事でわかること☝️
| ✅人件費率の目安 ✅人件費率の算出方法 ✅FLコスト ✅人件費率が高まる原因 ✅人件費率最適化の方法 ✅人件費削減でやってはいけないこと |

目次
飲食店経営における人件費率の重要性
飲食店経営において人件費率は、経営状況の健全性を判断する上で極めて重要な指標です。
人件費は食材費と並んで経費の大部分を占めるため、そのコントロールが利益に直接影響を与えます。
売上の変動にかかわらず発生するこの固定費を常に監視し、適正な水準に保つことが求められます。
特に最低賃金の上昇が続く昨今では、人件費の推移を数値として可視化し、客観的に分析する重要性が高まっています。
経営者は感覚に頼らず、適切なコスト管理を通じて収益構造を強化する必要があると言えるでしょう。
飲食店の人件費率│理想の目安は?

飲食店の理想的な人件費率は、一般的に売上に対して30%前後が目安とされています。
ただし、この数値はあくまで基準であり、店舗の業態や規模、コンセプトによって適正な値は変動します。
例えば、高級レストランでは手厚いサービスを提供するため人件費率が高くなる傾向があります。
重要なのは、自店のコンセプトを踏まえた上で、食材原価と合わせた「FLコスト」を意識し、トータルで利益を確保できる理想のバランスを見つけることです。
【業態別】人件費率の目安一覧
飲食店の人件費率は、業態によって提供するサービスの内容や調理の難易度が異なるため、目安となる数値に幅があります。
一般的に、セルフサービスが中心の業態は比率が低く、専門的な技術や手厚い接客が必要な業態ほど高くなる傾向にあります。
具体的な目安は以下をご覧ください。
| 業態 | 人件費率 |
|---|---|
| ラーメン店 | 28%~33% |
| カフェ | 25%~30% |
| ファミリーレストラン | 25%~30% |
| 居酒屋 | 28%~35% |
| 高級レストラン | 35%~45% |
経営においては、これらの数値を自店の状況と比較し、現在の立ち位置を正確に把握することが重要です。
平均値との乖離を確認することで、適切な人員配置や収益改善のヒントを見つけられるでしょう。
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飲食店の正しい人件費率を算出する2ステップ

人件費率を正確に把握するためには、正しい手順で計算することが不可欠です。
まず、人件費に含まれるすべての費用項目を漏れなく洗い出し、その合計額を算出します。
次に、その合計額を売上高で割ることで、自店の人件費率を明確に数値化できます。
この2つのステップを踏むことで、現状を客観的に分析し、改善策を検討するための土台が整います。
具体的な内訳の確認方法と、実際の計算手順について詳しく見ていきましょう。
ステップ1:人件費に含まれる費用項目を洗い出す
人件費を正確に算出するためには、毎月の給与額だけでなく、従業員の雇用に関連して発生する全ての費用を漏れなく計上しなければなりません。
| ・正社員やアルバイトに支払う基本給 ・賞与 ・残業手当 ・深夜手当 ・役職手当 ・社会保険料 ・労働保険料 ・通勤交通費 ・制服代 ・まかないの費用 ・退職金の積立金 |
これらの費用項目を細かくリストアップし、合計額を明確にすることが、自店の経営状況を正しく把握するための第一歩となります。
ステップ2:自店の人件費率を算出する
人件費に含まれる全ての費用を合算したら、次の計算式を用いて人件費率を算出します。
人件費率 = 人件費の合計額 ÷ 売上高 × 100 |
例えば、ある月の売上高が500万円で人件費の合計額が150万円だった場合、計算式は150万円÷500万円×100となり、人件費率は30%となります。

この数値を定期的に算出し、推移を観察することで、経営状況の変化を早期に察知し、対策を講じることが可能になります。
また、月単位だけでなく、日次や曜日ごとに算出することで、より精度の高い人件費コントロールが実現できるでしょう。
売上高と連動させて数値を客観的に分析し、適正な範囲内に収まっているかを常に確認してください。
「FLコスト」での管理が飲食店成功のカギ
飲食店経営において、人件費と食材の原価を合わせて管理する「FLコスト」という考え方は非常に重要です。
食材原価と人件費は、飲食店の経費の中で最も大きな割合を占める二大コストであり、両者は互いに影響し合います。
例えば、カット野菜など加工済みの食材を使えば原価は上がりますが、調理の手間が省けるため人件費を抑制できます。
このように両者を一体で捉え、全体のバランスを最適化することが、利益を最大化する上で不可欠と言えます。
FLコストの計算方法と理想的なバランス
FLコストは、売上高に対する食材費と人件費の合計額の割合を算出した指標で、飲食店経営の健全性を測る上で欠かせません。
計算式は以下のようになります。
FLコスト =(食材費+人件費)÷ 売上高 × 100 |
一般的には、この比率を60%以内に収めることが利益確保の理想とされています。
内訳の目安としては、食材費と人件費をそれぞれ30%ずつに設定するバランスが基本です。しかし、実際の最適解は業態によって異なります。

例えば、原価率が高い高級食材を扱う店舗では食材費を35%に上げる代わりに人件費を25%に抑えるなど、店舗の特性に合わせて柔軟に比率を調整し、トータルで60%を超えない管理体制を築くことが重要とされています。
あなたの店舗は大丈夫?人件費率が高まる3つの原因

人件費率が目安とされる30%を大きく超え、40%に迫るような状況にある場合、経営を圧迫する深刻な問題が潜んでいる可能性があります。
その原因は一つとは限らず、複数の要因が絡み合っていることも少なくありません。
ここでは、人件費率が高騰する主な3つの原因を解説します。
自店の状況と照らし合わせ、該当する点がないか確認してみてください。
事前にチェック!👇
| あなたの店舗は大丈夫?人件費率の危険ライン ・25〜30% → 比較的安定 ・30〜35% → 改善余地あり ・35〜40% → 要注意 ・40%超 → 利益圧迫リスク大 ※業態や営業時間により適正値は異なります |
原因1:売上規模に対して従業員の数が過剰になっている
人件費率が高くなる最も直接的な原因は、売上規模に対して従業員の数が過剰になっていることです。
特に、客足が遠のくアイドルタイムに必要以上のスタッフを配置していると、無駄なコストが発生しやすくなります。
また、新規オープン時や繁忙期に備えて多めに採用したものの、期待したほど売上が伸びずに人員が余ってしまうケースも珍しくありません。
経営を圧迫しないためには、常に現状の売上に見合った適正な人員配置ができているかを確認し、定期的な見直しを行う体制づくりが必要です。
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原因2:従業員一人ひとりの労働生産性が低い
従業員の数が適切であっても、一人ひとりの業務効率が低いと、結果として人件費率は上昇してしまいます。
労働生産性が低下する主な要因としては、新人スタッフへの教育不足によるオペレーションの遅れや、業務手順が標準化されていないことによる作業の無駄が挙げられます。
適切なトレーニングが行われず、従業員のスキルレベルにばらつきがある状態では、同じ売上を上げるために必要以上の労働時間を費やすことになります。
作業の属人化や非効率な動きを放置することも、本来削減できるはずの工数を膨らませ、利益を圧迫する大きな要因となります。
店舗全体の生産性を高めるため、業務フローの見直しと継続的な教育体制の構築を心掛けましょう。
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原因3:曜日や時間帯の繁閑を無視したシフトを組んでいる
過去の売上や客数データを分析せず、店長の経験や勘だけでシフトを作成していると、人件費の無駄が発生しやすくなります。
忙しい時間帯に人手が足りなければ機会損失を招く一方、暇な時間帯に従業員が手持ち無沙汰になる状況は、非効率な運営の典型です。
特に曜日や時間帯によって客足の波が激しい飲食店では、正確な需要予測に基づいた人員配置が欠かせません。
繁閑の差を無視したシフト管理を続けていると、無駄な労働コストが積み重なり、人件費率は悪化の一途をたどります。
店舗の収益性を高めるためには、客観的な数値データを活用し、過不足のない適切な人員数を割り出す体制の構築が不可欠です。
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サービス品質を維持しながら人件費率を最適化する5つの方法

人件費率を改善する際は、単にコストを削るのではなく、顧客満足度や従業員のモチベーションを維持しながら「最適化」する視点が不可欠です。
無理な人員削減はサービスの質を低下させ、かえって売上減少を招く恐れがあります。
ここでは、店舗運営の質を保ちつつ、人件費の比率を健全な状態に導くための5つの方法を紹介します。
方法1:売上予測とデータに基づいた最適なシフトを作成する
店長の勘や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいて売上を予測し、必要な人員数を割り出すことが重要です。
具体的には、過去の売上実績や客数に加え、曜日、天候、周辺イベントなどの外部要因も考慮に入れて予測を立てます。
POSレジから得られるデータを活用し、時間帯ごとの売上や客数のピークを正確に把握しましょう。
これにより、必要なタイミングで過不足のないスタッフを配置する「適正な人員配置」が可能になります。
方法2:ITツールを導入して接客や調理業務を効率化する
近年、飲食店の業務効率化を後押しするITツールが数多く登場しています。
具体的には、顧客が自ら注文を行うセルフオーダーシステムやテーブルオーダーシステムが挙げられます。
これらを導入することで、ホールスタッフによる注文受付の工数を大幅に削減でき、接客の質の向上にもつなげることが可能です。
また、予約管理システムやモバイルPOSレジ、自動釣銭機などの活用も、事務作業の省力化やレジ締め業務の短縮に直結し、結果として人件費の最適化に寄与します。
導入には初期費用を要しますが、長期的な視点で見れば、労働生産性を高めつつ安定した店舗運営を実現するために非常に有効な手段となります。
省力化のための補助金もいくつか用意されています。
以下に代表的なものを記載しますので、ぜひご検討ください。
デジタル化・AI導入補助金
中小企業省力化投資補助金
中小企業新事業進出促進補助金
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方法3:従業員の多能工化(マルチタスク化)を推進する
一人の従業員がホールとキッチンの両方を担当するなど、複数の業務を遂行できる状態に育成することを多能工化と呼びます。
スタッフがマルチタスク化することで、特定のポジションで急な欠員が出た際も他のメンバーが柔軟にカバーできるようになります。
これにより、特定の担当者に依存しない運営体制が構築され、シフト編成の自由度が大きく向上します。
この体制が浸透すれば、不測の事態に備えて余剰人員を確保しておく必要がなくなります。
最小限の人数で店舗を円滑に回せるようになるため、結果として無駄な労働コストが削減され、人件費の抑制を無理なく実現できるでしょう。
方法4:メニュー構成を見直して仕込みや調理の工程を減らす
メニュー数が多すぎたり、調理工程が複雑なメニューが並んでいたりすると、キッチンスタッフの負担が増加し、必要以上の人員を配置しなければなりません。
まずはメニュー構成を根本から見直し、調理工程が少ないメニューを開発しましょう。
カット野菜や半調理品などの活用も、仕込みや調理時間の短縮に非常に有効です。
現場の負担を軽減しながら、サービスの質を落とさずに人件費を最適化できるため、収益構造の改善に直結します。
無理な削減ではなく、無駄を省く効率化を優先しましょう。
方法5:販促施策で客数や客単価をアップさせ売上を伸ばす
人件費率を下げるためには、コストの削減だけでなく、分母となる売上を伸ばすアプローチが非常に重要です。
具体的には、SNSを活用した情報発信や魅力的な新メニューの開発、リピーター獲得に向けた特典の提供などの販促施策を積極的に展開し、客数と客単価の向上を同時に図ります。
仮に人件費の総額が変わらなくても、施策によって売上を大きく伸ばすことができれば、相対的に人件費率は低下します。
この手法は、現場の従業員に無理な負担を強いることなく、収益構造を健全な形で改善できるのが大きなメリットです。
店舗の活気を高めながら、攻めの姿勢で利益率の最適化を目指しましょう。
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失敗しないために!人件費削減でやってはいけない3つの注意点

人件費率の改善を急ぐあまり、誤った方法に手を出してしまうと、かえって経営状況を悪化させる危険性があります。
特に、従業員の士気や顧客満足度に直接影響するような短絡的なコストカットは、長期的に見て大きな損失につながりかねません。
ここでは、人件費削減に取り組む際に絶対に避けるべき3つの注意点を解説します。
健全な店舗運営を維持するためにも、これらのポイントを必ず押さえておきましょう。
注意点1:従業員のモチベーションを下げる一方的な給与カット
人件費を直接的に下げる方法として給与カットが考えられますが、これは最も避けるべき手段の一つです。
従業員の生活に直結する給与を一方的に下げることは、彼らのモチベーションを著しく低下させ、店舗への不信感を募らせます。
結果として、優秀な人材の離職を招き、サービスの質が低下するという悪循環に陥る可能性が非常に高いです。
人件費の改善は、まず業務効率化など他の手段から着手するべきでしょう。
注意点2:顧客満足度の低下を招く無理な人員削減
人件費率を下げるために、現場の状況を考慮せず無理にスタッフの数を減らすと、サービスの質が著しく低下する恐れがあります。
注文した料理がなかなか出てこない、呼び出しに応じてもらえない、店内が清潔に保たれていないといった状況は、顧客満足度の低下に直結します。
一度失った顧客の信頼を取り戻すのは容易ではありません。
結果として客足が遠のき、売上が減少してしまっては本末転倒です。
注意点3:サービスの質に関わる研修や教育コストの削減
目先のコストを削減するために、従業員の研修や教育にかける費用を削るのは危険な判断です。
十分な教育を受けられなかったスタッフは、スキルが向上せず、生産性も上がりません。
これは長期的に見ると、店舗全体のサービスレベルの低下や競争力の喪失につながります。
教育は未来への投資であり、これを怠ると、結果的に生産性の低い状態が続き、人件費率の改善も遠のいてしまう可能性があります。
飲食店の人件費率に関するよくある質問
ここでは、多くの飲食店経営者が抱く人件費率に関する疑問について、Q&A形式で解説します。
Q1. アルバイトやパートの給料も人件費に含めて計算しますか?
A. はい、含みます。
雇用形態に関わらず、店舗運営のために支払う労働の対価はすべて人件費です。
正社員の給与や賞与はもちろん、アルバイトやパートの時給、各種手当、交通費、さらには事業主が負担する社会保険料なども合算して計算する必要があります。
Q2. 人件費率が目安を超えたらすぐに改善が必要ですか?
A. 一概には言えません。
例えば、手厚い接客を売りにする高級店では人件費率が高くなるのは自然なことです。
重要なのは、売上や利益が計画通りに確保できているかです。
FLコストのバランスが60%台に収まっているかなど、他の指標と合わせて総合的に判断してください。
Q3. 個人経営の小さな飲食店でも人件費率の考え方は同じですか?
A. はい、基本的な考え方は同じです。
事業規模にかかわらず、売上に対してどれだけの人件費がかかっているかを把握することは、健全な経営の基本です。
ただし、個人事業主の場合、自身の給与(生活費)をどこまで経費として計上するかなど、法人とは異なる点も考慮が必要です。
まとめ
飲食店の人件費率は売上の30%が一般的な指標ですが、数値だけに固執せず業態ごとの特性を考慮することが大切です。
食材費と合算したFLコストを売上の60%以内に抑える視点を持ち、全体の収支バランスを整えるよう意識してください。
人件費が高騰している場合は、人員配置の過剰や労働生産性の低さが要因として考えられます。
データに基づいた適切なシフト管理やITツールの活用、多能工化による業務効率の向上などを進め、現場の無駄を省く取り組みが求められます。
また、コスト削減を急ぐあまり、強引な給与カットや人員削減を行うと、サービス品質の低下や離職を招く恐れがあります。
売上の拡大と業務の効率化を並行して進め、店舗の活気と利益を両立させる最適化を目指すことが、持続可能な経営を実現する鍵となります。
人件費率に限らず、飲食店経営におけるお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
TRNグループの専門スタッフが伴走させていただきます。

