飲食店の廃業の手続きを解説|コストと精神的負担を軽減する方法とは?

公開日:
更新日:

飲食店はほかの業種に比べ、非常に廃業率が多いことで知られています。それは、周囲から注目され華やかな話題となる店がある一方で、競合が多く厳しい市場競争の中での経営を強いられるからです。やむにやまれぬ事情で廃業を検討する経営者もいるでしょう。廃業にあたっては、可能な限り損を出さない方法を選びたいものです。今回は、廃業の手続きと負担軽減の方法を解説します。

飲食店の閉店をお考えの方へ

居抜き物件を直接買い取る「退店サポート」について詳しく知りたい方は、こちらから無料の資料をダウンロードしてみてください。

 

飲食店の廃業で必要な手続きや作業について

飲食店(個人事業主の飲食店)が廃業する際に必要な事務手続きに関して説明します。

個人事業主の飲食店廃業に必要な事務手続きについて

1.関係各所への連絡・解約

  • 賃貸借契約の解約
賃貸借契約書に基づく解約予告賃貸借契約書に基づいて賃貸物件を退去する解約予告を行い、解約日を確定します。 
原状回復義務の履行賃貸借契約書に基づいて原状回復義務を履行します。(物件を契約開始時の状態に戻す) 
  • 取引先への連絡 
閉店日の告知取引先に閉店日を伝え、今後の発注や納品について調整します。 
未納金・未払金の支払い閉店日までにすべての未納金・未払金を支払います。 
取引停止閉店後は取引を停止し、必要に応じて取引停止の書面を発行します。 
  • 従業員への通知(労働契約書に基づいて) 
閉店日の決定閉店日を従業員に伝え、十分な準備期間を確保します。(原則として少なくとも30日前までに、解雇する趣旨を伝える必要がある) 
退職金の支払い法定退職金、勤続年数に応じた退職金、慰労金などを支給します。 
雇用保険手続き従業員が雇用保険に加入している場合は離職証明書を発行します。 
  • 各種契約の解約 
電気・ガス・水道閉店日までに電気・ガス・水道の供給を停止します。 
退職金の支払い法定退職金、勤続年数に応じた退職金、慰労金などを支給します。 
電話・インターネット回線閉店日までに電話やインターネット回線を解約します。 
設備リース閉店日までにリース契約を解約し設備を返却します。 
保険閉店日までに保険を解約します。(火災保険や損害賠償責任保険、雇用者責任保険など) 
その他食材や飲料の供給契約、広告や宣伝を行っていた場合には関連する広告契約など、閉店に伴い不要になるそのほかの契約を解約します。

2.行政機関への手続き

税務署や年金事務所、保健所、消防署、警察署などの各行政機関に、書類提出や手続きが必要です。詳しくは次の項目で説明します。

3.その他

  • 在庫・設備の処分 

売却可能なものは売却し、売却できないものは廃棄処分します。食品衛生法に基づき、食品は適切に廃棄する必要があります。 

  • 廃棄物の処理

産業廃棄物、一般廃棄物などを廃棄物処理法に基づいて適切に処理します。 

  • 各種帳簿・書類の保存

税務署や年金事務所、労働基準監督署などの指示に従い、各種帳簿・書類を保存する必要があります。 

法人の飲食店廃業の手続きの流れについて

法人の飲食店廃業の手続きは以下のような流れになります。 

1.株主総会の開催

解散の決議株主総会で法人の解散を決議します。 
清算人の選任解散に伴い清算するための清算人(株式会社の解散後の清算手続きを行う担当者)を選任します。 

2.登記申請

法人の解散および清算人の選任登記解散日から2週間以内に法人の解散と清算人選任の登記が必要です。司法書士や行政書士を通じて登記します。

3.財産・債務の整理

財産の売却法人の資産を売却し売却代金を得ます。 
債務の弁済売却代金や法人の残存資産を用いて法人の債務を償却します。 

4.清算結了(けつりょう)の登記

清算結了の登記申請株主総会で清算事務報告の承認を受けてから2週間以内に清算結了の登記を行います。清算が終了したら、税務署、都道府県税事務所、市区町村役場など各公的機関に清算結了の届出を提出します。
法人格の消滅登記が完了することで法人の法的存在が消滅します。つまり、法人の活動が終了し、事業が終わったことを意味します。

5.税務申告

法人税の確定申告廃業年度の法人税の確定申告を行います。申告期限は事業年度の終了日から2カ月以内となります。 
消費税の確定申告廃業年度の消費税に関する確定申告を行います。こちらも基本は課税期間の終了の日の翌日から2カ月以内です(個人事業者はその年の翌年3月31日)。 

以上が法人の飲食店廃業手続きの基本的な流れです。ただし、地域や法的要件によって手続きが異なる場合があるため、具体的なケースに応じた手続きの確認が必要です。

飲食店では行政機関への廃業届が必要

飲食店を廃業する際に届出が必要な行政機関と書類を説明します。

税務署への提出書類について

個人事業の開業・廃業等届出書廃業日から1カ月以内に提出します。 
確定申告書廃業した年の廃業日までの所得に関する確定申告を行います。 
青色申告特別控除承認申請書青色申告特別控除を適用していた場合は取りやめる手続きをします。 

保健所への提出書類について

東京都北区保健所
廃業届廃業届は廃業日から10日以内に提出するのが一般的です。(※税務署へ提出する廃業届とは異なります) 
営業許可証営業許可証を返納し、廃業届と合わせて提出します。営業許可証は原本を提出する必要があります。
食品衛生責任者資格証今後、食品衛生責任者として活動する場合は返納する必要はありませんが、活動しない場合は、保健所に返納する必要があります。食品衛生責任者資格証は、原本を提出する必要があります。

消防署への提出書類について

防火管理者解任届防火管理者を選任していた場合は営業終了日を解任日として解任届を提出します。 

警察署への提出書類について

深夜酒類提供飲食店営業許可証深夜酒類提供飲食店営業許可証を持っている場合は廃止届を提出します。 
風俗営業許可証風俗営業許可を取得している場合は風俗営業許可証の返納も必要です。 

日本年金機構への提出書類につい

雇用保険適用事業所廃止届の事業主控および健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届雇用保険や健康保険に加入している場合、雇用保険適用事業所廃止届の事業主控と健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届を提出します。期限は廃業から5日以内です。 

飲食店廃業での作業コストや心理的負担を軽減する方法 

廃業にかかる作業コスト、心理的コストを軽くするための方法を紹介します。 

M&Aを行う

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称で、日本語では「企業の合併・買収」を意味します。具体的には、2社以上の企業が統合したり、ある企業が別の企業を買収したりする取引を指します。別の企業との合併や買収を検討することで、事業の存続や資産の価値を最大化できます。M&Aによって従業員や顧客への影響を最小限に抑えられ、廃業に伴う負担を軽減できます。 

また、合併や買収によって得られる資金やリソースを活用して、事業の再編や次の展開への可能性もひらけます。 

店舗を売却する

店舗売却によって資産を現金化できるため、経済的な負担を軽減できます。同業態を引き継ぐ次の経営者がいれば、従業員や顧客の安定性も確保できます。

店舗売却の流れやメリットやデメリットについてはこちらの記事をご覧ください。

造作譲渡で閉店する 

備品や設備などを譲渡することで、店舗を閉鎖する際に発生する費用や原状回復の負担、各種手続きを最小限に抑えられます。次の運営者に従業員や顧客の一部を引き継げるため、周囲への影響を最小限にできます。 

閉店するときに造作譲渡するメリットやデメリットについては、こちらの記事をご覧ください。 

スケルトン物件や居抜き物件の違い、それぞれのメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。 

​​​飲食店の廃業では負担なく進められる方法を選ぼう 

飲食店の廃業には大きなエネルギーが必要です。店舗を閉じるための物理的な負担のほか、従業員をはじめとする周囲への精神的な負担もあります。廃業に至る方法をよく検討し、できるだけ負担のかからない方向性を選択する必要があります。 

通常閉店と売却の比較表
通常閉店と売却の比較表

特に飲食店を廃業する場合はさまざまな事務手続きがあるため、作業面での手間も時間もかかります。店舗流通ネットの退店サポートでは、一部作業を代行するだけでなく、本来ならば撤退にかかるはずのコストを削減しスムーズな退店を実現します。損失や負担を最小限にする廃業をお望みの方はぜひご検討ください。 

退店サポートのバナー

飲食店の閉店をお考えの方へ

居抜き物件を直接買い取る「退店サポート」について詳しく知りたい方は、こちらから無料の資料をダウンロードしてみてください。