飲食店のクレーム対応の正解は? 迅速に収束させるための適切な行動について

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どれほど注意していても、顧客の不満がクレームとなって表面化する場合があります。クレームを大きくしないよう、正しい対応をすることは飲食店経営において重要なポイントです。クレーム対応は大変ですが、起こる原因や対応方法を知ることで適切に対処できます。

ここでは、飲食店で顧客からクレームを受けた場合の対応、苦情や迷惑行為への処理の仕方について解説します。

飲食店のクレームとは?対応は初動が重要

「クレーム」とは、商品やサービスに関して買い手の不満が生じ、売り手に責任ある対応を求める要求を指します。可能な限り避けたい事態ではありますが、クレームは買い手の意見を知る手がかりでもあるため、売り手側にとってサービスを向上させるための有益な情報でもあります。この点を踏まえて、クレームに対しては誠意ある対応をすることが基本的な姿勢として求められます。

飲食店で発生するクレームの背景には、以下のような理由で人的ミスが発生するケースが多いです。

  • うっかり忘れた
  • 急いでいた
  • 店員に伝わっていなかった 
  • 業務環境が整理整頓されていなかった など

発生したクレームに対しては初動が重要です。正しく対応して相手の納得を引き出すことで、より大きな不満を生じさせずに収めることができます。不用意な言動で相手の感情を逆なでしないよう意識する必要があります。

日本労働組合総連合会が2017年に実施した「消費者行動に関する実態調査」では、「勤務先が迷惑行為についてのマニュアル作成や教育を行っていない」と回答した割合が6割だったと報告されています。 

また、2017年では企業の約8割がマニュアル作成を行っていませんでしたが、2024年には危機管理意識が高まり、従業員の教育や対応マニュアルを作成している飲食店も増えています。これは従業員による意図的な異物混入といったバイトテロやコンプライアンス違反の行動によって、営業活動に悪影響が出るおそれや、企業イメージを損なわないための対策です。 

店舗側は、不測の事態へ備えて対応マニュアルを用意することが求められるでしょう。 

クレーム対応の手順と抑えるべきポイント

飲食店でのクレーム対応の手順と、気をつけるべきポイントを説明します。 

不快な思いをさせてしまったことに対して限定的に謝罪する

女性が頭を下げて謝罪している様子

クレーム対応の第一歩は、まず相手の気持ちに寄り添い謝罪することです。ただし、この段階ではクレームの原因や先方の要求をまだ十分に理解していないため、過度な謝罪は避けるとよいでしょう。「ご不快な思いをさせて申し訳ございません」「ご迷惑をおかけいたしました」など、簡潔に謝罪の言葉を伝えます。

謝罪の際には、相手の目をしっかりと見て、誠実な態度で対応することが大切です。 

相手の主張を聞く

クレーム対応の重要なポイントは、相手の話をしっかり聞くことにあります。クレームする側が自分の不満や要望を聞いてもらうことで気持ちが落ち着くため、解決策を探りやすくなります。 

顧客の話を聞く際には以下のことに注意してみてください。 

  • 相手の話を遮らず最後まで聞く 
  • 相手の気持ちに共感し理解する姿勢を示す 
  • 相手の言葉を復唱して確認する 
  • 相手の話を整理し要点を把握する 
  • 理不尽なクレームだと感じても反論しない

復唱することは確実に主張を聞いてもらっていると感じさせ、相手を落ち着かせる効果があります。反論は敵対心を感じさせるため、説得しようとしないことが大切です。 

解決に向けた提案をする

問題の原因を把握したら、解決策を提示します。解決策は相手の不満を解消し、可能な限り要求を満たすように検討します。例えば、代替の料理を提供・無償にするなどがあります。 

解決策を提示する際には、以下のことに気をつけましょう。 

  • 相手の要求を明確に把握しあいまいにしない 
  • 実現可能な解決策を提示する 
  • 相手の納得が得られるように説明する 

再度の謝罪と感謝を伝える

最後に提示した解決策を再度説明し、改めて謝罪します。また、店舗の利用と意見提供に対して感謝の言葉を伝えましょう。

クレームは店舗運営の問題点を明らかにする貴重な情報です。前向きにとらえている姿勢を示すことで、顧客との関係改善ができ、継続的な利用につながります。誠意ある姿勢に対する共感を得ることができれば、クレームをきっかけとして顧客との関係性が強化される可能性もあります。相手の不快な気持ちが解消され、気持ちよく対応を受けられるように、丁寧な言葉遣いでの対応に努めましょう。 

クレーム対応のスキルは顧客との関係を良好に保つために重要です。そのため、基本姿勢をしっかりと理解した上で実践しましょう。 

飲食店で見られるクレームの種類

クレーム内容の種類と、そのときの顧客心理に関して説明します。

異物混入

実際によくある例としては、髪の毛や小さな虫、破片などの混入があります。顧客の健康や安全を脅かす可能性があり、重大なクレームのひとつです。異物混入のクレームを申し出た顧客は、強い怒りや不安、不快を感じており、原因の説明と再発を防ぐための対策を求めています。 

接客態度

接客態度は、顧客の満足度を大きく左右する要素です。接客態度が悪いと顧客は不快な思いをし、店の方針や教育体制に不満を抱くようになりかねません。心理状態としては不快感や不信感を持っているため、謝罪や接客姿勢の改善を求めています。 

注文から料理提供までの時間 

注文から料理が提供されるまでに長い時間がかかると、顧客はイライラし、忘れられているのではないかと不安になります。店のサービス姿勢に対する不満を感じているため、業務フローやオペレーションの改善が求められます。料理の提供に時間がかかる場合には、事前に提供までの時間を伝えておくと、クレームにつながりにくくなる可能性があります。 

料理の味

料理の味に関する満足度は各人によりますが、期待感とのギャップが関係していることもあります。特に常連客の場合には、味の変更などによる不満が生じやすくなります。軽く考えず、料理の味や品質が低下していないか確認する貴重な意見として参考にしたいものです。 

クレーム対応で注意するポイント・NG例

クレーム対応でしてはいけない行動や、対応時の注意点を説明します。 

相手の怒りを増幅させないよう言葉選びに気をつける

以下のような言葉は相手の神経にさわり、反感をあおる可能性があります。 

  • 「だって」「でも」「ですから言っているように」 
  • 「決まりなので」「店のルールで」 
  • 「担当ではないのでわかりません」 
  • 「どうしたら納得していただけますか?」 

できるだけ早急に対応する

忙しい時間帯であっても待たせないことが大切です。担当者が対応しきれない場合にはすぐに上申し、判断を仰ぎましょう。顧客が何を望んでいるのかを迅速に把握すれば、正しい対応を実施できます。混雑で料理の提供まで時間がかかる際は、提供まで時間がかかることを先に伝えるとクレームを回避できます。 

相手の誤りを指摘しない

例えば、顧客側の言い分が勘違い、思い違いであっても即座に指摘しないことが大切です。相手の誤りを指摘することは、相手のプライドを傷つけ感情的にさせる可能性があります。その場合には、説明不足や表記の分かりにくさなど、店舗側の落ち度も認め、謝罪する姿勢で対応します。

クレーム対応では基本を押さえて冷静な行動を

飲食店で来店客からクレームを受けた場合には、自店を選んで来店していただいたことを忘れず、誠意を持った対応が大切です。なによりも、迅速に相手の不満を解消できるような対応を心がけ、店舗全体でサービス意識を高めていく必要があります。 

一方で、クレーム対策を講じていても不測の事態が起こる場合もあります。店舗流通ネットでは、豊富な知見をもとに、飲食店経営のサポートを提供しています。円滑な店舗運営のためにも、ぜひご活用ください。