飲食店経営にかかる税金の種類│軽減税率から節税対策まで解説
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飲食店の税金は「何を・いつ・いくら払うのか」が分かりづらく、資金繰りを圧迫する大きな要因になりがちです。
特に開業直後や利益が出始めたタイミングで「想定以上の納税」が発生し、資金ショートするケースも少なくありません。
そのため、税金の知識は、健全な資金繰りと事業の成長に不可欠なものと言えます。
本記事では、飲食店の経営者が知っておくべき税金の種類や税率、具体的な節税対策について詳しく解説します。
個人事業主と法人の違いや、飲食店特有の軽減税率の仕組みにも触れ、税金に関する疑問を解消していきます。
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目次
飲食店経営で支払う税金の全体像
飲食店の経営で支払う税金は、まず個人事業主か法人かによって異なります。
そして、その税金には所得や利益に対するもの、消費に対するもの、資産に対するものなど、様々な種類が存在します。
事業形態を問わず共通で払う税金もあれば、個人または法人に特有の税金もあるため、まずは全体像を把握することが肝心です。
それぞれの仕組みを理解し、適切な納税と節税につなげましょう。
個人事業主・法人に共通でかかる税金
個人事業主と法人のどちらであっても、事業を運営する上で共通して課される税金がいくつか存在します。
①消費税
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合や、インボイス登録を行った場合に納税義務が生じます。
②固定資産税
店舗用の土地や所有している建物に課されます。
③償却資産税
看板や厨房機器などの事業用資産に課されます。
④自動車税
配送や仕入れに使う所有の自動車に課されます。
⑤印紙税
契約書や領収書などの文書(課税文書)に対して課されます。
これらは利益の有無にかかわらず、所有や取引の事実に基づいて課税されるのが特徴です。
個人経営でかかる4つの主な税金
個人事業主として飲食店を開業した場合、主に4つの税金が課されます。
①所得税
1年間の総売上から経費や各種控除を差し引いた所得金額に対して課税され、所得が多いほど税率が高くなる累進課税制度が採用されています。
税率は5%~最大45%まで変動します。
②住民税
市区町村や都道府県に納める地方税で、前年の所得に基づいて算出されます。
税率は所得に対して一律10%程度です。
③個人事業税
所得が290万円を超えた場合に納税義務が発生します。
飲食業は第一種事業に該当し、税率は5%と定められていますが、年間290万円の事業主控除が適用されるため、これを超えない限り課税はされません。
④消費税
基準期間の売上高が1,000万円を超えた場合やインボイス制度に登録している場合に発生します。
これら4つの税金は、それぞれ納税のタイミングや計算方法が異なるため、資金繰りを圧迫しないよう計画的に準備しておく必要があります。
特に所得税と住民税は連動しているため、確定申告の内容が直接影響を与える点に注意が必要です。
法人経営でかかる4つの主な税金
法人として飲食店を経営する場合にも、主に4つの税金が課されます。
①法人税
会社の利益に対して、原則として一律の税率が課されます。
ただし、中小法人については所得が年800万円以下の部分に対して15%の軽減税率が適用される特例があります。
②法人住民税
自治体の公共サービスを利用する対価としての性格を持ち、所得に応じた法人税割と、利益の有無にかかわらず資本金や従業員数に応じて定額で課される均等割の合計で算出されます。
赤字であっても最低数万円の均等割が発生します。
③法人事業税
法人が行う事業そのものに対して都道府県が課す税金です。
これは所得に対して課税されるため、赤字の場合は原則として発生しません。
④消費税
基準期間の売上高が1,000万円を超えた場合やインボイス制度に登録している場合に発生します。
飲食店は現金商売が多く、消費税の計算が複雑になりやすいため、適切な管理が求められます。
これら4つの税金を合わせた実効税率は約30%程度となるのが一般的です。
個人事業主と法人はどっちがお得?税負担の違いを比較
個人事業主と法人では、利益にかかる税金の仕組みが大きく異なります。
個人事業主の所得税は利益が増えるほど税率が上がる累進課税である一方、法人税は所得に応じて段階的な税率が適用されますが、個人の累進課税と比べて税率の上昇幅が緩やかなのが特徴です。
そのため、利益が低い段階では個人事業主の方が税負担は軽いですが、利益が一定額、例えば500万円や800万円を超えてくると、法人の方が税率上有利になるケースが多くなります。
また、法人の場合は経営者自身の給与を役員報酬として経費にできるため、所得を分散させて全体の税額を抑えることも可能です。
いくらの利益で法人化すべきかは、社会保険料の負担増なども含めて総合的に判断する必要があります。
すぐに実践できる5つの節税対策

飲食店の経営において、利益を確保するためには適切な税金対策が欠かせません。
納税は国民の義務ですが、法律で認められている制度を正しく活用することで、手元に残る資金を増やすことが可能です。
ここでは、個人事業主でも法人でも、すぐに実践できる代表的な5つの節税対策を紹介します。
対策1:青色申告の承認申請で最大65万円の特別控除を受ける
個人事業主が飲食店を経営する場合、確定申告を青色申告で行うことで、所得金額から最大65万円を差し引ける青色申告特別控除を適用できます。
この控除は、売上から経費を引いた後の利益からさらに差し引けるため、所得税や住民税の負担を直接的に軽減する強力な手段です。
65万円の満額控除を受けるためには、複式簿記での帳簿作成に加え、「e-Tax」による電子申告、または電子帳簿保存を行う必要があります。
それ以外の方法でも55万円、簡易的な記帳であっても10万円の控除が可能です。
このほか、赤字を最長3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺できる制度や、家族へ支払う給与を全額経費にできる専従者給与など、白色申告にはない多くのメリットがあります。
節税効果を最大化し手元の現金を増やすため、事前に税務署へ承認申請書を提出し、青色申告の準備を整えましょう。
対策2:家族への給与を経費にする(青色事業専従者給与)
青色申告を行っている個人事業主は、生計を共にする配偶者や15歳以上の親族に支払う給与を「青色事業専従者給与」として全額経費に計上できます。
これにより、事業主の所得を分散させ、所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。
ただし、事前に税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があり、支払う給与額も仕事内容に見合った適正な金額でなければなりません。
計画的に活用することで、大きな節税効果が見込める手法と言えます。
対策3:30万円未満の厨房機器は一括で経費計上する(少額減価償却資産の特例)
通常、取得価額が10万円以上の厨房機器や設備は固定資産となり、数年にわたって減価償却費として経費計上します。
しかし、青色申告を行っている中小企業者等には「少額減価償却資産の特例」が適用され、取得価額30万円未満の資産であれば、購入した年に一括で経費として計上できます。
例えば50万円のオーブンは対象外ですが、28万円の冷蔵庫などは対象となります。
ただし、年間の合計限度額は300万円です。
対策4:小規模企業共済や経営セーフティ共済に加入して所得控除を増やす
節税しながら将来に備える方法として、国の共済制度の活用があります。
「小規模企業共済」は、個人事業主や小規模企業の経営者のための退職金制度で、掛金の全額が所得控除の対象です。
また、「経営セーフティ共済(倒産防止共済)」は、取引先の倒産に備える制度で、こちらも掛金を全額経費(法人の場合)または必要経費(個人の場合)に計上できます。
これらは補助金とは異なりますが、コロナ禍のような不測の事態への備えと節税を両立できる有効な手段と言えるでしょう。
対策5:一定の利益を超えたら法人化(法人成り)を検討する
事業が成長し、利益が一定額を超えた段階で法人化を検討することも有効な節税対策です。
個人事業の所得税は累進課税で最大45%ですが、法人税の実効税率は約30%台で頭打ちになります。
利益が800万円を超える辺りから、法人の方が税負担は軽くなる傾向があります。
開業して3年目など、経営が軌道に乗ったタイミングで、社会保険料の負担増などのデメリットも考慮しつつ、税理士などの専門家と相談してシミュレーションするとよいでしょう。
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これは経費になる?飲食店で経費計上できる費用

飲食店の税金計算において、どこまでが経費として認められるかを知ることは極めて重要です。
経費を漏れなく計上することで、課税対象となる所得を抑え、結果的に節税につながります。
経費の基本は「事業を運営するために直接かかった費用」であることです。
例えば、タイ料理店がメニュー開発のために現地の料理を調査する渡航費なども事業関連性が証明できれば経費となり得ます。
ここでは、飲食店特有の費用で経費計上できるものの具体例と、その際の注意点を解説します。
領収書の保管も忘れずに行いましょう。
1. まかない(食事補助)の費用
従業員に提供するまかないの費用は、一定の要件を満たすことで福利厚生費として経費計上できます。
具体的には、「従業員が食事代の半分以上を負担していること」および「事業主の負担額が1人あたり月額3,500円(税抜)以下であること」という2つの条件を両方満たす必要があります。
これらの条件を満たさない場合や、無料でまかないを提供した場合は、従業員への給与として扱われ、源泉徴収の対象となるため注意が必要です。
2. 競合店の視察や試食にかかる費用(調査研究費)
メニュー開発やサービスの向上のために、競合店を視察した際の飲食代は「調査研究費」や「研修費」として経費に計上することが可能です。
一人での食事であっても、事業目的が明確であれば問題ありません。
ただし、税務調査などで指摘された際に、事業関連性を客観的に説明できることが重要です。
視察の目的、日時、店舗名、気づいた点などをまとめた簡単なレポートを作成・保管しておくと、有力な証拠となります。
3. スタッフの制服代(福利厚生費)
従業員が業務中に着用する制服やコックコート、エプロンなどの購入費用は、福利厚生費として経費計上できます。
これは、従業員が業務を行う上で必要不可欠なものと判断されるためです。
制服を店でクリーニングする場合の費用も経費として認められます。
ただし、日常的に着用できるスーツなどは、業務専用とはいえないため、原則として経費には認められない点に注意が必要です。
4. 自宅兼店舗の家賃や光熱費(家事按分)
自宅の一部を店舗や事務所として使用している場合、家賃や水道光熱費、インターネット通信費などの一部を「家事按分」という考え方に基づき、経費として計上できます。
経費にできる金額は、事業で使用している割合に応じて合理的に計算する必要があります。
例えば、家賃であれば床面積の割合で、電気代であれば使用時間やコンセントの数などで按分するのが一般的です。
客観的な根拠に基づいて按分比率を設定するよう心掛けてください。
【重要】飲食店の消費税と軽減税率の仕組みを理解しよう

飲食店経営において、消費税の取り扱いは特に複雑で注意が必要です。
なぜなら、同じ商品でも提供方法によって税率が変わる「軽減税率制度」が導入されているからです。
店内飲食でのサービス提供と、持ち帰り(テイクアウト)での商品販売では、適用される消費税率が異なります。
この違いを正しく理解し、適切に会計処理を行うことが、コンプライアンス遵守と正確な納税のための第一歩となります。
消費税10%(標準税率)が適用される店内飲食などのケース
消費税の標準税率10%が適用されるのは、顧客が店内のテーブルや椅子などを利用して飲食する「店内飲食」のケースです。
これは、食事の提供という「役務の提供」とみなされるためです。
具体的には、レストランやカフェでの食事、フードコートでの飲食などが該当します。
また、ケータリングや出張料理も、調理や配膳といったサービスを伴うため標準税率の対象です。
さらに、ビールや日本酒などの酒類は、テイクアウトであっても軽減税率の対象外となり、10%の税率が適用されます。
消費税8%(軽減税率)が適用されるテイクアウトなどのケース
消費税の軽減税率8%が適用されるのは、飲食料品の「譲渡」にあたるケースです。
具体的には、テイクアウトやデリバリー、出前がこれに該当します。
これらは店内での飲食サービスを伴わないため、軽減税率の対象となります。
また、お祭りなどの露店で、テーブルや椅子などの飲食設備がない場合の食品販売も同様です。
メニューや店内の表示で、テイクアウト価格と店内飲食価格が異なることを明確に伝える工夫が求められます。
(資料出所)財務省「軽減税率制度の対象品目」
消費税の軽減税率は、テイクアウト業態にも大きく影響します。
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納税額の計算方法|原則課税と簡易課税の違い
消費税の納税額の計算方法には「原則課税」と「簡易課税」の2種類があります。
■原則課税
実態に即した計算ができる反面、全ての領収書や請求書を保存し、品目ごとに税率を確認して集計する必要があるため、事務負担は非常に重くなります。
<計算式>
| 売上税額 - 仕入税額 = 消費税額 |
■簡易課税
売上高に対する消費税額に、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を乗じて納税額を算出します。
飲食店は第四種事業に該当し、みなし仕入率は60%と定められているので、売上の40%分が納税対象となります。
この制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択でき、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
<計算式>
| 売上税額 -{仕入税額 × みなし仕入率(60%)}= 消費税額 |
確定申告と納税のスケジュール

飲食店を経営する上で、確定申告と納税は定められた期間内に正確に行う必要があります。
このスケジュールは、個人事業主と法人で大きく異なります。
それぞれの申告・納税の期限を正しく把握し、日々の経理業務を計画的に進めることが、スムーズな手続きとペナルティの回避につながります。
特に確定申告の時期は業務が煩雑になりがちなので、早めの準備を心掛けましょう。
個人事業主
個人事業主の所得税の確定申告は、毎年1月1日~12月31日までの1年間の所得と税額を計算し、原則として翌年の2月16日~3月15日までの間に税務署へ申告・納税します。
また、前年の納税額が一定額を超えた場合は、7月と11月に予定納税を行う必要があります。
消費税については、課税事業者である場合、翌年の3月31日までに申告と納税を済ませなければなりません。
法人
法人の場合、確定申告と納税の期限は、定款で定めた事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内と定められています。
例えば、3月決算の法人であれば、申告と納税の期限は5月31日です。
ただし、定款の定めにより、申告期限を1ヶ月延長することが可能です。
法人税、法人住民税、法人事業税、そして消費税のいずれもこの期限内に申告・納税を行う必要があります。
事業年度の途中には、中間申告と納税が必要になる場合もあります。
\漏れのない定款を作りたい/
飲食店経営の税金に関するよくある質問
ここでは、飲食店の経営者が税金に関して抱きやすい疑問について、Q&A形式で解説します。
Q1. 飲食店の開業時にかかる税金には何がありますか?
A. 開業時に直接かかる税金は、法人の場合に必要な登録免許税や契約書に貼る印紙税です。
事業開始後は、利益に応じた所得税や法人税が発生します。
また、店舗物件を取得した場合は不動産取得税、所有している場合は固定資産税の納税義務が生じます。
開業準備にかかった費用は「開業費」として経費計上できるため、領収書を必ず保管してください。
Q2. 売上が1,000万円以下でも消費税の申告は必要ですか?
A. 原則として、2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下の場合、消費税の納税は免除されます。
そのため開業から2年間は免除されることが多いです。
ただし、インボイス制度に登録した場合は、売上高にかかわらず課税事業者となり申告・納税が必要です。
免税事業者であっても、取引先の意向でインボイス登録を検討するケースが増えています。
Q3. 税務調査で指摘されやすいポイントは何ですか?
A. 税務調査で最も厳しく見られるのは、売上の計上漏れです。
現金商売が多いため、レジの記録と実際の入金額が合っているかなどを入念にチェックされます。
次に、事業主のプライベートな支出を経費にしていないか、架空の人件費がないかといった点も指摘されやすいポイントです。
赤字申告であっても調査の対象となる可能性があります。
まとめ
飲食店経営における税務は多岐にわたりますが、正しい知識を持つことで適切な納税と効率的な節税を両立できます。
まずは個人と法人の税制の違いを整理し、自社の利益水準に合わせた最適な事業形態を選択しましょう。
また、青色申告の活用や各種共済への加入、飲食店特有の経費計上ルールを把握することで、キャッシュフローの改善が期待できます。
特に複雑な消費税の軽減税率やインボイス制度への対応は、日々の正確な記帳が欠かせません。
納税は義務ですが、制度を賢く活用して手元に残る資金を増やし、持続可能な店舗経営を目指しましょう。
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