【飲食店】新人教育がうまくいかない理由とは?“認識のズレ”をなくすコツと実践法
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飲食店の現場では、新人や若手スタッフの教育に頭を悩ませている店長も少なくありません。
「ちゃんと説明したはずなのに、なぜか伝わっていない」
「何度も同じことを言っている気がする」
「自分の教え方が悪いのだろうか」
そんなふうに感じたことはありませんか。
忙しい業務の合間を縫って教育をしても、思った通りに育たないと、がっかりしたり、モヤモヤしたり、自信をなくしてしまうこともあるでしょう。
ただ、スタッフ教育がうまくいかない原因は、店長個人の能力や熱意の問題であるケースは、実は多くありません。
本記事では、教育がうまくいかない理由を構造的に整理しながら、忙しい現場でも明日から実践できる具体策を解説していきます。
「なぜ伝わらないのか」がわかれば、教育はもっと楽になります。

目次
飲食店の新人・若手スタッフ教育がうまくいかない「本当の理由」
新人や若手スタッフの教育がうまくいかないとき、「説明はしているのに、なぜか意図した通りに動いてもらえない」という違和感が積み重なっていきます。
この違和感の正体は、能力ややる気の差ではなく、“認識のズレ”であるケースがほとんどです。
店長と新人スタッフとでは、仕事を見る視点や判断の基準が大きく異なっています。
まずは、そのズレがどこで生まれているのかを整理してみましょう。
要因1:「ここまで言えば伝わる」という前提の違い
教育の場面では、店長の中に「ここまで説明したのだから、次はこう動いてくれるだろう」という前提が自然と生まれます。
一方で、経験の浅いスタッフは、「言われたことを間違えずにこなす」ことを最優先に考えがちです。
特に入店して間もない時期は、
・勝手な判断をして怒られたくない
・余計なことをして評価を下げたくない
といった不安が先に立ちます。
そのため、言われた内容以上の行動を控え、指示された範囲だけを忠実に再現する動きになりやすいのです。この結果、店長から見ると「言ったはずなのにやっていない」というズレが生まれてしまいます。
これはどちらかの落ち度ではなく、仕事に対する安心感と判断基準の差によって起きている現象だと考えられます。
要因2:忙しさによってズレを修正できない
もう一つ見落とされがちな要因が、ズレを修正するタイミングの不足です。
営業中やピークタイムは、スタッフの動きを細かく確認したり、その場で修正したりする余裕がありません。「後でまとめて伝えよう」「次は気をつけてもらえばいい」そう思っていた指摘が、忙しさの中で流れてしまうことも多いでしょう。その結果、
・小さなズレが修正されないまま残る
・ズレを前提にした動きが“普通”になってしまう
という状態が生まれます。
これが積み重なることで、「なぜか噛み合わない」「どうしてか伝わらない」という違和感につながっていきます。
さらに人手不足の現場では、教育よりも「まず現場を回すこと」が優先されやすく、新人スタッフが十分に慣れないまま実務に入るケースも少なくありません。
そのプレッシャーが、判断をより慎重にさせ、ズレを広げてしまうこともあります。
結果:「教えたつもり」と「理解できていない」が同時に起きる
こうした二つの要因が重なると、現場では、
・店長側:教えたつもり
・スタッフ側:理解したつもり(実際には理解しきれていない)
という状態が、同時に成立してしまいます。
店長が手を抜いているわけでも、スタッフの意識が低いわけでもありません。前提や基準が共有されないまま、現場が進んでいるだけなのです。
次のセクションでは、こうしたズレについて、新人・若手スタッフの受け取り方に焦点を当てて見ていきます。
実は伝わりづらい「店長の善意」

先述の通り、教育のズレは「能力」や「やる気」ではなく、前提や判断基準が共有されていないことから生まれます。
ここでさらにややこしくなるのが、店長の善意による行動です。
良かれと思って取った対応が、関係性がまだ浅い新人・若手スタッフにとっては、意図とは異なる形で受け取られてしまうことがあります。
自主性を尊重したつもりが「放置」と受け取られてしまう
「細かく言わずに任せたほうがいい」「まずは自分で考えてほしい」こうした考え方は、決して間違いではありません。
しかし、判断基準がまだ定まっていない新人・若手スタッフにとっては、何も言われないこと自体が不安の原因になることがあります。
・今のやり方で合っているのか
・どこまで自分の判断で動いていいのか
これが分からない状態では、店長が「任せたつもり」で距離を取った行動が、スタッフ側には「見てもらえていない」「期待されていない」と映ってしまうのです。
先回りのフォローが判断を鈍らせてしまう
反対に、失敗させないようにと先回りしすぎるケースもあります。
・気づく前に声をかける
・判断する前に指示を出す
こうした行動は、店長の優しさでもありますが、続くとスタッフは「自分で決めていいのかどうか」が分からなくなります。結果として、
・指示がないと動けない
・判断を避けるようになる
という状態に陥りやすくなります。
これもまた、善意が原因で起きるズレの一つです。
ズレを大きくする「評価基準が見えない不安」
こうした受け取りの違いが起きやすい背景には、評価基準が見えないことへの不安があります。
特に若手スタッフや、いわゆるZ世代と呼ばれる層は、
・どこまでやれば「できている」のか分からない
・人によって言うことが違う
・正解がその場その場で変わる
といった状況に、強いストレスを感じやすい傾向があります。
評価の軸が共有されていないままでは、店長の行動が「任せている」のか「放置している」のか、「助けている」のか「口出ししている」のか、判断ができません。
善意が逆効果になるのは「気持ち」ではなく「仕組み」の問題
ここで重要なのは、善意が伝わらない理由は、人間関係や気持ちの問題ではないという点です。
・何を期待しているのか
・どこまで任せているのか
・何を基準に評価しているのか
これらが言語化されていないだけで、店長とスタッフの間には大きな認識の差が生まれてしまいます。
つまり、善意が逆効果になるのは、想いが足りないからではなく、共通ルールや基準が整っていないからなのです。
次のセクションでは、こうしたズレが現場でどのような場面で表れているのか、
具体的なケースをもとに見ていきましょう。
ズレは、こんな場面で起きている

ここまで見てきたように、教育のズレは考え方や姿勢ではなく、日常の何気ない場面で起きています。
ここでは、飲食店の現場でよくある具体例について見ていきましょう。
店長の「ちゃんと」と、スタッフの「ちゃんと」は同じではない
店長がよく使ってしまいがちな言葉に、「ちゃんと」「しっかり」といった表現があります。
一見すると便利で、指示としても通じているように感じますが、実はここに大きな落とし穴があります。
例えば、「トイレをちゃんと掃除しておいてね」と伝えた場合、店長の頭の中には明確な完成イメージがあるはずです。
・床はゴミひとつ落ちていない
・便座や便器は拭き上げられている
・鏡や蛇口まわりもピカピカ
・トイレットペーパーや備品も補充済み
しかし、入ったばかりの新人・若手スタッフにとって、その「ちゃんと」がどこまでを指すのかは分かりません。床を掃いただけで終わりだと思う人もいれば、見える範囲だけ整えれば十分だと考える人もいるでしょう。
このズレは、意識の低さや手抜きが原因ではありません。「ちゃんと」という言葉が、そもそも人によって解釈が違う曖昧な表現だからです。
指示と期待は具体的な言葉で明確に
先ほどのトイレ掃除の例で言えば、「ちゃんと」という一言で済ませるのではなく、何を・どこまでやれば完了なのかを言葉で示すことが重要です。例えば、
「床を掃いてください」
「便座と便器を拭いてください」
「トイレットペーパーの補充を確認してください」
「蛇口まわりの水滴を拭いてください」
といったように、スタートからゴールまでを分解して伝えることで、初めて同じ完成イメージを共有できます。特に若い世代は、
・最初に正解を知ってから動きたい
・曖昧な指示に対して強い不安を感じやすい
という傾向があります。
これは「考えない世代」なのではなく、スマホの普及により、整理された情報に慣れているだけです。この前提を理解せず、「察してほしい」「見て覚えてほしい」という想いで接してしまうと、スタッフは戸惑い、自信を失い、結果として動きが鈍くなってしまいます。
店長が省略したその一言こそが、実は新人・若手スタッフにとって一番つまずきやすいポイントなのです。
次のセクションからは、実際に試してほしい具体的な行動や考え方について紹介していきます。
【実践法1】若手スタッフとの”ズレ”を防ぐ3つの具体策

このように、若手スタッフとのすれ違いは、意欲や能力の差ではなく、判断基準やゴールイメージが共有されていないことから生まれるケースがほとんどです。
店長としては「伝えたつもり」でも、スタッフ側は「これで合っているのだろうか」と不安を抱えたまま動いています。その不安こそが、動きの鈍さやミス、指示待ちの原因になります。
ここでは、そうした“ズレ”を未然に防ぎ、スタッフが安心して動ける状態をつくるための具体策を3つ紹介します。
具体策1:優先順位を「判断基準」として言葉にする
たとえば、「忙しい時間帯は、周りを見て動いてほしい」という指示は、よく聞かれる表現です。しかし、スタッフ側からすると、
・何を優先すべきなのか
・どこまで自分の判断で動いていいのか
が分からず、結果として動きが止まってしまうことがあります。
ここで重要なのは、行動の正解を具体的に示すことです。
ピークタイムは、
①まずは配膳を優先
②次にバッシング
③それでも余裕があればドリンク補充
というように、優先順位を言語化するだけで、スタッフは「今、何をすべきか」を自分で判断できるようになります。
動けないのは能力の問題ではなく、評価基準が共有されていないことへの不安なのです。
具体策2:注意するときは「できている点」も一緒に伝える
注意や指摘が必要な場面でも、いきなり「ここがダメだった」と伝えると、スタッフは身構え、心を閉ざしてしまいがちです。ましてや、店長という立場を利用した威圧的な言い方はもってのほかです。いいパフォーマンスを発揮してもらうためにも、相手の状態に配慮した声掛けが欠かせません。
例えば、「声が小さい」「動きが遅い」といった指摘をする前に、「さっきのオーダー確認は丁寧だったね」「忙しい中でも最後までやり切ってくれて助かったよ」と一言添えるだけで、指摘の受け取り方は大きく変わります。あわせて、指摘事項に対して「なぜそれを直してほしいのか」という理由も必ず一緒に伝えましょう。
現場でよくあるのは、できていることが当たり前になり、できていないことだけが目に入ってしまう状態です。
しかし、スタッフ自身は「自分が役に立てているのか」を常に気にしています。
小さな肯定の積み重ねが、「次も頑張ろう」という行動につながるのです。
具体策3:「見返せる情報」で不安を減らす
口頭だけでの教育は、人によって記憶量や理解度に差が出てしまいます。
一方で、写真や動画、メモのように“見返せる情報”があると、作業の再現性が高まり、スタッフの不安も大きく軽減されます。ここで必要なのは、完璧なマニュアルではありません。
・料理の盛り付け写真
・注意点だけを書いたメモ
・作業手順を収録した簡単な動画
こうした“小さな情報”のほうが、スタッフにとっては扱いやすいのです。視覚的な正解があるだけで迷いが減り、スタッフは安心して動けるようになります。
大切なのは、覚えさせることではなく、迷わず再現できる状態をつくることです。
【実践法2】店長が抱え込まないための「任せ方」と仕組みづくり

ここまで、「指示のズレ」「評価基準の共有」「具体的な伝え方」について見てきましたが、これらをすべて店長一人で担い続けるのは現実的ではありません。教育に真剣な店長ほど、「自分が教えないと現場が回らない」と考えがちです。
しかし、その状態が続くと、
・店長が疲弊する
・スタッフが育たない
・現場の判断が遅くなる
という悪循環に陥ってしまいます。
「任せる」は放置ではなく、役割を渡すこと
ここで大切なのが、「任せる」という考え方です。任せるとは、すべてを丸投げすることではありません。役割を分けて関わってもらうことです。例えば、
・教え方や基準を伝えるのは店長
・実際の現場で動きを見守るのはベテランスタッフ
・失敗したときや不安そうなときに声をかけるのは、年齢の近いスタッフ
といったように、それぞれが役割を持って関わることで、教育が無理なく継続できるものになります。
この役割分担において、決して大がかりな仕組み作成は必要ありません。「実践しているときは、少し見てあげてください」「焦っていそうだったら、声をかけてもらえると助かります」と、一言添えるだけでも、現場の空気は変わっていくでしょう。
分担制の教育が、現場を安定させる
実は、教育が特定の人に属人化していない現場ほど、スタッフの定着率が安定している傾向があります。「忙しい中で人に頼むのは申し訳ない」そう感じる店長も少なくありません。
しかし、教育がワンマン体制になっている現場では、その人が忙しくなった途端、教育が止まってしまいます。その結果、
・新人が不安を抱えたまま働く
・ミスが増える
・現場全体の空気が不安定になる
といった状態を招きやすくなります。
役割を分けることは、責任を放棄することではありません。店長が一人で背負わなくていい体制をつくることが、結果としてスタッフ教育の質を高め、現場を安定させるのです。
【実践法3】スタッフの定着に必要な店長の心構えを知る

店長の立場であれば、「早く一人前になってほしい」「できれば即戦力として動いてほしい」と期待をするのはごく自然なことです。
しかし、その思いが強くなりすぎると、知らず知らずのうちに焦りとなって伝わり、新人スタッフを追い込んでしまうことがあります。
ここまで紹介してきた仕組みや伝え方を活かすためにも、最後に、スタッフの定着に繋がる3つの心構えを確認しておきましょう。
1.最初から「即戦力」にはなり得ない
新人スタッフに対して、「このくらいはすぐできるだろう」と感じてしまう瞬間は、誰にでもあります。
しかし、冷静に振り返ると、店長自身も最初から何でもできたわけではないはずです。今では無意識にこなしている動きも、かつては何度も失敗しながら身につけてきたものではないでしょうか。
特に飲食店の現場は、
・覚えることが多い
・判断のスピードが求められる
・状況が常に変わる
という特徴があります。
その中で「短期間で完璧」を求めると、スタッフ側は常に追われている感覚になり、自信を失いやすくなってしまいます。
結果として、「向いていないかもしれない」「迷惑をかけているのではないか」と感じ、離職につながるケースも少なくありません。
2.成長のスピードは人それぞれ
現場では、「Aさんはすぐ覚えたのに」「前の新人はもっとできていたのに」と、つい比較してしまうこともあるでしょう。
ただ、成長のスピードは本当に人それぞれです。覚えるのは早いがミスが多い人もいれば、時間はかかるものの、一度覚えると安定する人もいます。特にZ世代を含む若手スタッフは、周囲との比較に敏感な傾向があります。無意識の一言や態度が、プレッシャーとして強く伝わってしまうこともあるのです。
「他の人と比べてどうか」ではなく、「昨日よりできることが増えているか」という本人基準の成長に目を向けることで、教育は少しずつ前向きなものになっていきます。
3.教育は短距離走ではなく、長距離走
教育は、一気に成果を出そうとすると、店長にとっても、スタッフにとっても苦しくなります。
毎日完璧を求めるのではなく、
・今日はこれができればOK
・今週はここまで理解できていれば十分
と、目標の区切りを小さくすることで、お互いに余裕を持ちやすくなります。
完璧を目指さないことは、妥協ではありません。続けられる教育を選ぶことが、結果的にスタッフの定着と成長につながっていくのです。
【実践法4】店長が教育に向き合える環境を整える

ここまで見てきた通り、スタッフ教育は、店長の意識や工夫だけで解決できるものではありません。どれだけ丁寧に向き合おうとしても、現場に余裕がなければ、スタッフ教育が続かないことは明白と言えるでしょう。
教育がうまくいかない原因を、「自分の教え方が悪い」「もっと頑張らなければ」と店長個人の問題にしてしまうと、状況はますます苦しくなってしまいます。
まずは、教育を続けられる環境そのものに目を向けることが重要です。
「現場が回っているか」を見直す
先述したように、人手が常に足りていない状態では、教育はどうしても後回しになります。
・教えながら業務を回す
・フォローできないまま任せる
・ミスが起きてから注意する
こうした流れが続くと、教育は「負担の大きい作業」になってしまいます。
この状態で「もっと丁寧に教えよう」と考えるのは、店長にとって非常にハードルが高いものです。
まずは、”教育に時間と意識を割ける余白があるか”という視点で、現場の状態を見直してみましょう。
人材の確保が、教育の質を左右することも
教育がうまくいっている店舗を見ると、必ずしも店長が特別な教育スキルを持っているわけではありません。
共通しているのは、
・最低限の人員が確保されている
・教育を分担できる体制がある
・採用段階でのミスマッチが少ない
といった点です。
人が足りない状態が続くと、「教えやすいかどうか」よりも「とにかく人を入れる」という判断になりがちです。その結果、教育負担がさらに増え、現場がますます回らなくなるという悪循環に陥ることもあります。
教育の悩みは、採用や人材の問題と切り離せないケースも多いという視点を持っておくことも大切です。
外部のサポートを、選択肢の一つとして持つ
すべてを店長一人で解決しようとしなくていい、という考え方も忘れないでください。
現場を知る第三者が入ることで、
・人材面の課題が整理できる
・店舗に合った人材像が明確になる
・教育に向き合う余裕が生まれる
といった変化が起きることもあります。
教育に悩んだとき、人材確保や体制づくりを含めて相談できる先を「選択肢として持っておく」こと自体が、店長の負担を軽くする一つの方法です。

まとめ
スタッフ教育は、店長一人で抱え込むものではありません。
うまくいかない原因の多くは、「教え方の上手・下手」ではなく、伝え方の前提や評価基準、現場の余裕といった構造のズレにあります。
伝える内容を具体的にすること、基準や優先順位を言葉にすること、教育を分担し、続けられる環境を整えること。こうした工夫を重ねることで、スタッフは安心して成長し、店長自身も無理なく現場と向き合えるようになります。
スタッフ教育に悩むことは、決して特別なことではありません。むしろ、真剣に現場と向き合っている店長ほど、同じような壁にぶつかっています。
すべてを一度に変える必要はありません。
本記事を参考に、「ひとつ言葉を足してみる」「基準を明確にしてみる」など、
できるところから取り入れてみてください。
「伝わる教育」「続けられる教育」は、小さな見直しの積み重ねから始まります。


