多店舗展開を見据え“新井屋らしさ”を根づかせる組織づくり ― 成長フェーズを支える、変わらない価値観の受け継ぎ方 ―
株式会社新井屋 代表取締役
新井 英樹 様
焼肉業態を中心に、「焼肉ホルモン 新井屋」5店舗、「BLACK ROCKS BURGER」「いろどりぺんぎん」の計7店舗を展開する新井屋様。
今後は2033年までに20店舗、2048年には60店舗というビジョンを掲げ、新たな成長フェーズへ進んでいます。
店舗数や業態が広がるなかで、新井様が感じ始めていた課題。それは、これまで大切にしてきた「新井屋らしさ」を、組織が大きくなっても変わらず受け継いでいくことでした。
料理を提供したらすぐに離れるのではなく、一呼吸置いてお客様の表情を見る。何か伝えたいことがありそうなら、こちらから声をかける。
マニュアルだけでは表現しきれないその価値観を、店舗が増えても共有できる仕組みに変えていくため、新井屋様ではMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定や行動基準の整理、評価制度づくりに取り組み始めました。
本記事では、新井屋様が組織づくりに向き合うことになった背景と、店舗流通ネットの「採用・組織づくりサポート」を通じて進めている制度づくりについて伺いました。

新井 英樹 様 / 株式会社新井屋 代表取締役
株式会社新井屋 代表。2013年に高円寺で「焼肉ホルモン 新井屋本店」を開業し、現在は焼肉業態「新井屋」5店舗に加え、ハンバーガー業態「BLACK ROCKS BURGER」、かき氷業態「いろどりぺんぎん」を展開。今後は2033年までに20店舗、2048年には60店舗を目指し、焼肉に限らず多様な飲食業態への挑戦を見据える。
目次
「今はまだ伝えられている。でも、ここから先は違う」
店舗拡大を前に感じた、組織づくりへの課題

――以前の弊社とのお打ち合わせで「接客の余韻が大事」というお話があったと伺っています。新井屋様が大切にされている接客について、教えてください。
“新井屋らしい接客”というより、自分がしてもらえて嬉しい接客を大事にしてきました。例えば、料理をテーブルに置くときも、ただ置いてすぐに離れるのではなく、1秒、2秒、お客様の雰囲気を見るんです。何か言いたそうであれば、こちらから声をかける。流れ作業のようにポンポンポンと進めるのではなく、一呼吸置いて、お客様の表情を見る。そういう接客が好きなんです。
――店舗数や業態が広がる中で、そういった思いやお考えを、これまでの伝え方では伝わりづらくなるのではと感じていたことはありましたか。
今はまだ、各店舗の店長や幹部に、これまで一緒に働いてきた仲間がいます。この店舗数であれば、自分の考えはまだ伝えられていると思っています。ただ、店舗が増えることで、自分の思いが行き届かなくなるというか、ここから先はどんどん伝えづらくなるだろうとは感じていました。今は月1回のミーティングなどで伝えていますが、店舗が増えれば社員もスタッフも増えていきます。考え方の違いや、いろいろな意見も増えてくる。そうなったときに、今までと同じような伝え方では難しくなるだろうと思っていました。
――そう考え始めたのは、どのようなタイミングだったのでしょうか。
2〜3年前くらいですね。焼肉屋が5店舗になった頃です。焼肉だけではなく、違う業態にも挑戦したいと思ったときに、これからさらにスタッフも増えていく。だからこそ、店舗が増える前に、今のうちから共有できる形にしておかなければいけないと考え始めました。
「良くも悪くも、なんとかやってこれてしまった」
成長できたからこそ、向き合う必要があった組織づくり
――組織づくりや評価制度づくりは重要だと感じていても、すぐに着手するのは難しいテーマだと思います。新井屋様では、なかなか取り組めなかった理由はありましたか。
そこまで組織としてのことを考えていなかった、というのはあります。良くも悪くも、なんとかやってこれてしまったんです。もっと店舗展開したいのに2店舗目までしかいけない、というような大きな壁があれば、早めに取り組んでいたのかもしれません。でも、少しずつ店舗を増やすことができていた。だからこそ、着手するタイミングが難しかったのだと思います。
――今回、MVVや評価制度づくりに取り組まれています。最初に課題感を持たれていたのは、どの部分でしたか。
最初は、会社として全員の目線を合わせることでした。そのためには、ミッション・ビジョン、理念やコンセプトなど、軸になる部分を最初につくらなければいけないのかなと思っていました。今までも、理念やコンセプトについて聞かれることはあり、そのたびに『やっぱり大事な部分だよな』『ちゃんと考えなきゃな』と思っていたんです。ただ、何からどう考えればいいのかが分かりませんでした。
――店舗流通ネットから組織づくりや評価制度づくりの提案を受けたとき、どのように感じられましたか。
まさに『本当に考えなきゃな』と思っていたタイミングでした。ただ、何から進めればいいのか分からない状態だったので、自分としてはすごくいいタイミングだったと思います。どこにお願いすればいいのかも分からなかったですし、どう進めればいいか分からなかったときに、手を差し伸べてもらえたような感覚でした。
――最初から完成した制度を導入するというより、一緒につくっていく形だったと思います。不安はありませんでしたか。
不安は全然ありませんでした。最初にお話ししたときも、これから進めていくプロジェクトとして、一緒につくっていきましょうという流れだったんです。今までもお付き合いのある会社でしたので、特に不安には感じませんでした。
感覚で守ってきた接客を、「ハートフル」という言葉へ

――「採用・組織づくりサポート」担当部署である、弊社の小野にも伺います。今回の支援は、社内ではどのような流れで構築されていったのでしょうか。
小野:
まず全体の構成について、人材事業の経験がある社員が中心となって設計を行いました。そのうえで、MVVや評価制度など、それぞれの領域を得意とするメンバーがサポートしていく形で進めました。MVVについては、他社様の事例なども参考にしていただきながら、新井様が大切にされていることや、会社として目指したい方向性を一つずつ整理していきましたね。大切にしたのは、外部の型をそのまま当てはめることではなく、新井屋様がこれまで大切にしてきた接客や価値観を整理し、店舗が増えても共有できる形へ落とし込むことでした。
――では、再び新井様へお伺いします。実際に、MVVや理念、コンセプトの言語化は、どのように進めていったのでしょうか。
店舗流通ネットの皆さんに、『好きな言葉はありますか』『大事にしていることは何ですか』と聞いていただきながら、自分の核になる部分を少しずつ引き出してもらいました。それをテキストにして整理していただいた、という感じです。自分たちだけで言葉を選ぶのは難しいですね。レシピをつくる作業に少し似ていると思いました。料理はつくれても、その手順を文章にして、誰が見てもできるようにするのは難しい。感覚的にやっていたことをテキストにしていく作業が、こんなに難しいとは思っていませんでした。
――これまで感覚的だったことが言葉になって、特に整理されたと感じる部分はありますか。
MVVの中にある『ハートフル』という言葉は、新井屋らしい言葉だと感じました。接客の話にもつながりますが、作業ではなく、ちゃんと人の状態や雰囲気を見ること。お客様がどう感じているのか、相手がどういう状態なのかを考えて動くこと。それが新井屋にとっての『ハートフル』なのだと思います。『思いやり』や『気遣い』も近い言葉ですが、人によって捉え方が変わる部分もあります。でも、『ハートフル』という言葉は、それらも含めて表現できる言葉だと感じています。
――MVVが完成した今、今後の課題として見えていることはありますか。
つくったものをどう落とし込むか、どう浸透させていくかが次の課題になると思っています。例えば、ある会社ではカードをつくって名刺入れに入れていたり、朝礼で唱和したり、いろいろな方法があると思います。ただ、うちは全員が集まる朝礼があるわけではありませんし、仕込みの時間もそれぞれ違います。やりすぎると違和感が出てしまうかもしれない。だから、新井屋に合った形で、どう浸透させていくかを考えていきたいです。
新井屋様のように、成長フェーズに合わせた組織づくりを検討されている企業様へ。
店舗流通ネットでは、MVV策定や評価制度づくりを支援しています。
「気づく人が損をする」組織にはしたくない
新井屋が評価制度に込めた想い

――これまで評価制度は、どのように決められていたのでしょうか。
本当にざっくりというか、自分の感覚でした。これからは、自分が見られなくなる範囲も出てきます。今はよくても、今後不満が出てくる可能性が十分にある部分ですし、自分が考えていることを基準にして、みんなに共有できる形にしていかなければいけないと思っていました。
――制度づくりを進める中で、「こういう人を評価したかったんだ」と見えてきたことはありますか。
数字で評価しづらい部分が、接客業ではすごく重要だと思っています。例えば、作業場をきれいにする。ゴミ箱がいっぱいになっていることに気づいて替える。そういった、決まりごとではないけれど、誰かがやらなければいけないことに気づいて、率先して動ける人は評価してあげたいと思います。気づく人が損をする、という状態にはしたくないんです。気づいて動ける人が上に行ってほしい。数字ではない部分が、お店の味というか、お店の肝になる気がしています。
――今回の組織づくりの取り組みはそろそろテスト運用に入ると聞いています。現場に落とし込まれたあと、どのような変化を期待していますか。
いろいろなことが明確になって、働いている人のモヤモヤが解消できればと思っています。もちろん、すべてがなくなるわけではないと思います。でも、できるだけクリアな会社にしていきたいです。
――最後に、同じように多店舗化を目指す飲食店オーナーへ、伝えたいことはありますか。
自分の身近に、こういった制度をしっかり仕組み化されている会社があって、『うちもやらなきゃな』と感じたことがきっかけの一つでした。仕組みをちゃんとつくっているからこそ、多くの店舗を展開できているのではないかと思いました。20店舗になったとき、60店舗になったとき、その場所ごとに課題は常に出てくると思います。だからこそ、早めに整えておくことが大事だと思います。
20店舗、60店舗になっても変わらない会社であるために
店舗流通ネットの「採用・組織づくりサポート」では、飲食企業様ごとの価値観や成長フェーズに合わせて、組織づくりを支援しています。
MVVの策定、行動基準の整理、教育制度、人事評価制度の構築など、企業に必要な仕組みを一緒に整理し、現場で活用できる形へ落とし込んでいきます。
「店舗が増える前に、組織づくりの土台を整えたい」
「経営者の考えや自社らしさを、現場へ浸透させたい」
「評価や育成の基準を明確にしたい」
そうお考えの飲食企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
