飲食店経営の効率化を進める人時生産性とは?計算式や向上させる方法、人時売上高との違い

「人時生産性」とは、生産性を測る指標のことで、従業員1人当たりが1時間で上げた粗利金額をいいます。人時生産性は、【粗利÷総労働時間】という計算式で算出でき、店舗の利益状況やオペレーションの効率性を測ることができるます。「人時売上高」「労働生産性」との違い、人時売上高を向上させる方法もご紹介します。

人手不足が加速する飲食業界では、生産性の向上が喫緊きっきんの課題となっています。そんな生産性を測るための指標のひとつが「人時にんじ生産性」です。今回は、企業の競争力を高めるための具体的な道しるべとなる人時生産性について解説します。

人時生産性とは?

人時生産性とは、従業員1人当たりが1時間で上げた粗利金額です。お店にかかった労働力に対して、どれだけの利益が出せたのかを表す生産性の指標として活用されています。決算書に記載されるような企業全体の利益率などとは異なり、その店舗での個別の利益状況やオペレーションの効率性を測ることができる点が人時生産性の特徴です。

また、人時生産性と類似する指標に「人時売上高」があります。こちらは従業員1人当たりが1時間で上げた「売上」を表します。人時売上高はお店の労働力である従業員1人が1時間でどれだけの売り上げを生んだかを計る指標として使われます。人時生産性と人時売上高の計算方法は以下の通りです。

●人時生産性=粗利÷総労働時間
従業員1人あたりが1時間にあげた粗利益

●人時売上高=売上÷総労働時間
従業員1人あたりが1時間にあげた売り上げ

「人時生産性」は、純粋に1時間あたりの利益がわかるため、経営改善のために有効な判断材料となります。
「人時売上高」は、1時間あたりの売り上げの値なので、業種によって大きく差が出ます。そのため、自分のお店と同じ業態の店舗と生産性を比較する場合に利用できます。

労働生産性と人時生産性の違い

人時生産性と似た概念として、労働生産性というものがあります。労働生産性とは、投入した労働力に対してどれだけの生産物を得られたかを表す指標です。労働生産性は「労働生産性=生産物÷労働力」という計算式で算出できます。

労働生産性は計算式の中にある「生産物」と「労働力」をそれぞれどのように定義するかによって、なにを示す指標なのかが変わります。生産物は製造した商品の数や売上金額などを当てはめることができますし、労働力には人数や総労働時間を当てはめることができます。このように、幅広い使い方ができる点が労働生産性の特徴です。

これに対して人時生産性は、従業員1人当たりが1時間で上げた粗利金額というように、より具体的な数値を表しています。つまり、労働生産性とは生産性の指標における大きな概念で、人時生産性は生産性を表す指標のうちのひとつ、と考えることができます。

人時生産性を上げるには

人時生産性を上げるには、粗利の増加と労働時間の削減が必要です。飲食店の人時生産性を上げるための工夫は、日々の業務の中にたくさん見つけ出すことができます。ここでは、そんな人時生産性をアップさせる方法の一部をご紹介していきたいと思います。

従業員のオールマイティー化

従業員が多くの仕事をこなせるようになれば業務の効率化につながり、人時生産性の向上にも大きく貢献します。そのため、従業員にはどんどん新しい業務を教えていきましょう。

例えば、ホールスタッフなら簡単な調理補助やバックヤードから食材を運んで切るなどの業務。キッチンスタッフなら予約電話を取る、ドリンクを作り運ぶなどの業務であれば手伝うことが可能です。

ホールとキッチンの垣根を越え、従業員がフォローしあえる環境は、繁忙期やピークタイムなどの忙しい場面で大きな力を発揮します。少数精鋭の強いチームを作って人時生産性を高めていくためにも、従業員の教育に力を注いでいきましょう。

シェアメニューの導入

シェアメニューを導入することによって、従業員の手間を省くことができます。シェアメニューとは大皿やデカ盛りなど、提供した後でお客様自身に料理を取り分けていただく商品のことです。

具体的には、メガジョッキのビールやデカンタワイン、大判ステーキや魚の一本焼などが例に挙げられます。他には、茹でたジャガイモと調味料を提供してお客様自身に作ってもらうポテトサラダなど、最後のひと手間をお客様に任せる商品も有効です。

これらは、お客様に人時生産性を上げる手助けをしてもらう商品だと考えることもできます。そのため、お得感やエンターテイメント性などをお客様に感じてもらえるような商品作りがカギとなります。料理のレシピを見返して「この調理工程をあえてお客様にやってもらったら楽しんでもらえるんじゃないか...」と思うことがあれば、それを活かしてメニュー化してみましょう。

しかし、新型コロナウイルス禍においては感染予防のためにシェアメニューは避けられる傾向があります。店舗によっては、事態が終息するまでは複数人用のシェアメニューの提供は控えたほうが良いかもしれません。

業務のセルフ化やIT・AI化

昨今の飲食業界では業務の一部セルフサービス化が進んでおり、これが人時生産性を大きく伸ばしています。飲食店のオペレーションには「ご案内・注文取り・配膳・会計・片付け」などがあります。これらのオペレーションの一部をセルフ化することで、従業員の業務内容を削減することが可能です。

例えば、大手ファストフード店ではカウンターでお客様の注文を取り、食べ終わったゴミや食器は店内にある食器下げ棚までお客様に運んでもらうオペレーションが採用されています。大手回転寿司チェーン店では、受付機の指示に従ってお客様は席に付き、タッチパネルを利用して料理を注文します。

また、お客様がお持ちのスマートフォンからQRコードを読み込み、スマートフォンの画面上のメニューから注文を受け付ける方法も普及しつつあります。

このように、大手の外食チェーンを見ると業務のセルフ化のヒントを得ることができます。個人経営のお店ではこれらの事例をそのまま導入することは難しいですが、少しでも参考にできそうなことがあれば試してみましょう。

簡単な事例としては、お客様に注文を用紙に書いて渡してもらう、券売機の導入、ドリンクのバイキング化、食器返却口を設ける、などが考えられます。

店内の動線の見直し

動線とは「飲食店のフロアや厨房での人やモノの動きを示す線」のことです。動線の設計は飲食店における作業効率を大きく左右します。きれいな動線が設計された店舗はスムーズな作業を行うことができますが、動線が複雑な店舗は作業に無駄な動きが多くなりがちです。

動線を考える際の鉄則は「お客様の動線は長く、スタッフの動線は短く」です。お客様の動線を長くすることによって、より店内を楽しんでもらうことや、料理の提供を遅く感じさせない効果が得られます。一方でスタッフの動線は作業効率を上げるために、最短距離を目指した設計が求められます。

お店の部屋や厨房の位置を変えることは難しいですが、棚や冷蔵庫の位置、備品、在庫の置き場所は変えることができます。日々の営業の中で常に動線を意識し、気づいたところから改善を重ねていきましょう。

まとめ

人時生産性を高めることは、飲食店が生き残っていくうえで常に考えていかなければならない課題のひとつです。急激に進むIT・AI化の波は飲食業界にも迫ってきています。活用できるものはどんどん活用し、人時生産性を高めて競争力をアップしていきましょう。


店通編集部