中国のキャッシュレス技術の普及と原因考察~私が経験した中国のスマホ決済~

中国のキャッシュレスの普及と中国の決済アプリについて紹介します。なぜ中国ではスマホ決済が急速に普及したのか?買い物だけでなく、電気・ガス・水道、医療関連の支払いから情報の確認までスマホアプリで一貫管理する中国経済。飲食店ではWeChatを使ったスマホ注文~決済できるセルフオーダーシステムが急速に普及し、医療機関では予約・支払いだけでなく、検査結果までスマホで確認できる。 国の政策および、即時通信サービスの利用率の増加と、爆発的に進んだミニプログラムの開発、中国の一般家庭事情を紹介します。

みなさんは普段の生活の中で、どれくらいスマホ決済を使っていますか?また、インターネットの普及により、身の回りの変化をどれくらい感じていますか?

クレジットカードや、PayPayなどのキャッシュレスのツールを普段から使っている私ですが、中国へ行くたびに、ネット社会の進化の速さに驚き、思わずわくわくするとともに、その雰囲気に吞まれてしまいます。ということで今回の記事は、つい最近中国で経験したスマホ決済の話と、中国のキャッシュレス技術の普及について紹介したいと思います。

買い物・飲食店・交通や医療機関まで。街にあふれるQRコード

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中国の都市や観光地を歩くと、QRコードだらけの風景に驚かされます。
ちなみにこのQRコード、1994年に日本で開発された技術であることをご存じでしたか?これらのQRコードは、スマホのアプリへとつながるようになっており、中国では特にWeChat(ウィーチャット、微信ウィシン)がもっとも多く利用されています。

WeChatとは、日本でいうところのLINEに相当するSNSアプリです。メッセージや電話などの通信ができるだけではなく、電子決済機能「WeChat Pay」を搭載し、ミニプログラムという機能によって、商品購入、電気・ガス・水道、医療関連の支払いから情報の確認まで一貫管理ができます。中国社会において、生活に欠かせないアプリと言っても過言ではなく、スマホ決済の飛躍的な発展と普及に、大きく貢献しました。

【買い物】市場の買い物でも大活躍。どこでもスマホ決済

中国の市場いちばは、通称「菜市場ツアイシージャン」と呼ばれており、新鮮な野菜・果物はもちろん、肉・魚介類や、ホットフードも売っている、中国の日常生活に欠かせない場所でもあります。

実はこのような市場でも、スマホ決済のQRコードが至る所で目に付きます。

店舗によってQRコードの置き方はまちまちですが、どの店舗でもスマホでスキャンがしやすいように掲示しています。中国の代表的なスマホ決済アプリは以下の2つ。日本でもよく使われているかと思います。

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Alipay(アリペイ)
■アクティブユーザー 9億人超
アリババグループにより設立したオンライン決済サービス。国際決済もできるため、日本で導入する店舗も増えています。
WeChat(ウィーチャット)
■アクティブユーザー 11億人超
中国で一番使われているコミュケーションツールであり、日常生活で頻繁ひんぱんに利用されています

支払いの流れはとても簡単。どちらかのアプリを使ってQRコードを読み取り、購入する物の金額を入力した後、パスワードの入力、もしくは指紋認証を行うことで、簡単に決済が完了します。一方、店舗側のスマホには、お客様が入力した金額がスピーカーから流れてくるので、他のお客様の対応をしている最中であっても、入金された金額を確認できます。

人が多い市場でも、お財布を出してモタつくこともなく、気持ちのいい流れですよね。市場を歩き回ってみると、すべての店舗がQRコードを提示しているわけではないですが、スマホ決済を導入していない店舗を探すほうが難しいと言えます。

市場がこのような光景なら、スーパーやデパートはどうでしょうか。
ウォルマートやカルフールのような大型スーパーでは、お客様が自身のスマホで商品のバーコードを読み取り、セルフレジで決済を完了します。
最近では顔認証機能を搭載した決済端末を導入している店舗もあり、今後はパスワードも不要で、身一つで決済が行えるようになるのではないでしょうか。


【飲食店】注文から支払いまで!?飲食店で普及する専用アプリ

飲食店においてもQRコードが大活躍!スマホで決済することは当たり前ですが、先ほど取り上げたWeChatを使ったセルフオーダーが急速に普及してきました。手順もとても簡単です。

例:WeChatでのセルフオーダー、支払いの手順

① WeChatでテーブルに貼り付いているQRコードをスマホで読み取り、お店の専用ページに入る。
② 専用ページから注文したいメニューを選び、個数を確定して、「お買い物カゴ」に入れる。
③ 注文画面を確認の後、注文ボタンを押すと決済画面に進んで先払いをする。
④ 注文内容のデータがすぐに厨房へ飛んでいくので、あとは料理を待つだけ。


もちろん、店内利用だけではなく、入店前の予約注文・テイクアウト・宅配もアプリでできます。
着席後、テーブルに貼ってあるQRコードを読み取れば料理の注文から支払いまでできます。


セルフ式の店舗が混雑している際に、席を確保しながら注文のために並ぶのは大変ですよね。スマホ注文ができるようになってからは、並ぶ手間がなくなり、楽になりました。スマホ注文・決済システム導入後の、店舗側と消費者側のそれぞれのメリットを以下にまとめました。

店舗にとってのメリット お客さんにとってのメリット
人件費の削減
回転率アップ
両替の負担が減少
盗難事故のリスクが減少
偽札の利用を防ぐ
並ぶ必要がない
現金不要
小銭すら不要
利用明細を一貫管理できる

【医療】予約・支払いから検査結果までスマホで完了!

中国の一部の病院では、受診や検査の予約だけではなく、受診費用の決済までスマホで行えるようになっています。実際に私も、中国二線都市(※)の総合病院でスマホでの受診予約と決済を体験しました。
前述のWeChatから病院名を検索して病院の専用ページに入り、診療科・医者名・受診時間を選択すると、受診番号が発行されます。受診日当日になると、WeChatから受診順番のお知らせがくるので、以前のように窓口で並んだり、長時間ロビーで待つ必要がなくなりました。検査項目も確認ができ、内容に問題がなければ、その場ですぐ決済を行うことができます。

ここまでの機能はそこまで珍しくはありませんが、受診後の検査結果までスマホで確認ができてしまうことには驚きました。血液検査報告書やX線・CT検査などの画像は、専用の電子機器から個人の受診コードを取り込めば印刷ができます。過去の検査結果と治療情報は病院のサーバーに保存されているので、転院する際にもスマホさえあれば、他の病院に画面を提示することで過去の治療情報を簡単に渡せます。

(※中国では都市の規模や経済の発展状況により、「一線都市」、「二線都市」でランクが付けられています。ちなみに北京、上海などは代表的な一線都市です。)

【交通】公共交通機関のスマホ決済の普及化

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飛行機・高速鉄道・タクシー・シェアサイクル・駐車場のスマホ決済は、数年前からすでに普及していましたが、地下鉄・バスのスマホ決済の普及はここ最近で急速に進みました。
一線都市である広州こうしゅうの地下鉄では、2018年11月にスマホ決済での改札口の運用が開始しました。WeChatなどの乗車用ミニプログラムから、QRコード画面を出し、改札口でタッチすれば入退場ができるという仕組みです。

しかしあまりにも速い変化のスピードに不便さを感じたこともあります。私も2019年の夏に広州を旅行したのですが、初めて地下鉄のスマホ決済を体験しました。やり方がまったくわからず、人に聞こうと思っても駅も全自動化のため係員もいない・切符売り場もないという状態で、すごく不便でした。逆に地域によってはスマホ決済が使えず、切符・現金が必要な交通機関もあります。中国へ行く際には、事前に最新の交通事情について調べておいたほうがいいかもしれません。

こんなときもスマホ決済?!

お金を単純に「払う」場面のスマホ決済には便利さを感じますが、お祝い金や弔慰金ちょういきんのスマホ決済について、みなさんはどう思いますか?
中国では、お年玉や結婚・入学・出産・引越しなどのお祝い金の贈呈も、スマホで決済することが多くなってきました。そして、一番驚いたのは、弔慰金のスマホ決済を経験したことです。弔慰金のスマホ決済はまだ一部だけの文化かもしれませんが、日本に長く住んでいる私には、すぐには受け入れられませんでした。

■ここに注意! スマホ決済ができないところもあります!
すっかりスマホ決済に満ちあふれた生活が当たり前になった中国ですが、いまだに通用しないところもあります。それは、ガソリンスタンドです。ガソリンスタンドでは携帯電話の電磁波による引火の恐れがあるという理由から、スマホ決済を行っていません。そのため、タクシーに乗ると、まれに「現金で払ってくれませんか」と頼まれることがあります。これだけスマホ決済が普及した現代社会においても、少しでも現金を持っていないといけないのが現状です。

なぜ中国ではスマホ決済が急速に普及しているのか?

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中国でここまで急速にスマホ決済が普及にした要因はさまざま言われていますが、以下の3つが主な要因になっていると思います。

1. 国の政策および、スマホの普及

キャッシュレス化を進めたい国の政策によって、アリペイやWeChatなどの第三者決済機関と、銀行、ユーザー、小売店間のお金の流れがスムーズになったこと。さらには決済手数料と導入コストの安さが、スマホ決済の環境整備に大きな影響を与えました。

そして何より、コンピューター時代を超えたスマホの普及が、スマホ決済の基盤になっていると言えます。
中国インターネット情報センターが、2019年8月に発表した「第44回中国インターネット発展状況統計報告」によると”2019年6月時点でインターネット利用者は8億5,449万人に達し、うち、スマホなどの携帯端末による利用者は8億4,681万人で、ネット利用者全体の99.1%を占めた”とのことです。


2. 即時通信サービスの利用率の増加と、爆発的に進んだミニプログラムの開発

WeChatを代表とする即時通信サービスが年々刷新されて使いやすくなり、同時に爆発的に開発されたミニプログラムは、スマホ決済を飛躍的に発展させました。WeChatは中国の即時通信サービスにおいて利用率No.1が公表され、2019年度の利用者数は11.5億人を超えました。
アプリを個々でダウンロードする必要がなく、WeChatの画面から、簡単に病院・飲食店・交通機関・水道光熱費の支払いなどのミニプログラムに入れる点も、利便性を高める要因となりました。決済だけではなく、更なるスマホの活用ができる点での相乗効果が大きかったのだと思います。


3. 中国の一般家庭事情

中国では大学生になっても、親から資金援助をされている人が多く、学生であっても親の資金でスマホを持たせているのが一般的です。

また、中国では、シニアのスマホユーザーも非常に多いという特徴があります。若い世代の人がスマホを買い換える際、古くなったスマホを自分の親に使ってもらうケースが多く見られます。シニア世代にとっては未知の世界かもしれませんが、スマホがなければ生活が不便になってしまうため、変化の激しいこの時代に取り残されないように成長しないといけません。大変なように思えますが、スマホ操作を子供に教えてもらうことをきっかけに、親子の交流時間もできるので、ある意味で楽しんでいる方も多いかもしれませんね。


■ 中国のテレビ番組からスマホの重要度を読み解く
中国のとあるお見合い番組の話です。番組内では男性が5組の女性家族へ質問をするタイムが設けられているのですが、一人の男性が、「ここにいらっしゃる親御さんの中でスマホを使っている方は手をあげてください」とたずねました。すると、女性の親御さんは全員手をあげました。
なぜそれを知りたいのかときかれた男性は、「もし親御さんがまだガラケーを使っているなら、お子さんの親孝行が足りていないと思います。」と説明したのです。お見合いとはまったく関係ない話ですが、それを聞いて改めてスマホが示す社会的地位の高さを認識しました。そして自分の両親がスマホを使っていることにほっとしました。


まとめ

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以上が、私が体験した中国のスマホ決済の話でした。今の中国においてのスマホ決済は、「あったら便利なもの」から「なくてはならないもの」という認識になってきています。

これから顔認証、AIの襲来と、まもなく5G通信の実用化が始まります。これからスマホでできることがもっと増えていくのが楽しみですね!

snowman



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