【消防法】居抜き店舗は要注意!?避難器具の種類や設置要件について

避難器具とは火災が発生した場合、外へ避難するために使う設備。火災が発生した際、避難の助けになるのが避難器具です。安全に店舗を運営をするためにも、防災の意識を持って設置しましょう。避難器具の種類、2方向避難とは、飲食店における避難器具の設置要件、消防用避難器具の設置要件、居抜き店舗の際は注意点、レイアウト変更で必要になる避難器具について分かりやすく説明します。

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店舗流通ネット施設部による連載記事「実録!トラブル対応24時シリーズ」では、飲食店のダクト火災、漏電、漏水、騒音など、実際に起こったトラブル事例などを交えながら、飲食店に関わる方々に知っていただきたい情報をお伝えしてまいりました。
 
今回は、前回執筆した「消防法」とも関連する、「避難器具」のお話です。

冬になって、空気が乾燥すると増えてくる「火災」。総務省消防庁の統計によると、昨年1年間の総火災発生件数は37,981件あり、そのうち建物火災が20,764件と、総火災発生件数の半分以上を占めていることがわかります。
 
店舗流通ネットでは、日々飲食店の出店支援から営業中のトラブル対応まで、さまざまなサポートをさせていただいております。いざという時のトラブルに備え、安心して営業を続けるため、避難器具について学んでおきましょう。
 

避難器具とは?避難器具の種類

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避難器具とは、建物で火災が発生した場合、その建物から外へ避難するために使う設備のことです。エレベーターは、火災が発生すると火災信号を受信して非常停止階に止まるよう設計されているため、火災の際には使用できなくなります。そのため、階段などを利用する避難ルートを確保する必要があります。これについては、建築基準法で定められており、2方向以上の避難ルートを確保しなくてはならないこととなっています。
 

■2方向避難とは

火災時の避難については、二方向の避難経路(階段、バルコニー等)を確保する必要がある。ただし、階段は別々の方向に設けられているべきで、Aの階段に行くにもBの階段に行くにも、ほとんど同じ経路を通る場合は、二方向とはいえないとされている。
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規模が大きい建物は2方向以上の避難階段を確保できますが、規模が小さい建物は2方向の避難階段を確保するのが困難になります。そこで重要な役割を担うのが避難器具なのです。
この避難器具、実は8種類もあり、すべて消防法で指定されている消防設備です。
 

■避難器具の種類

種類 設置できる階*1 特徴
避難ロープ 2階のみ 上端部を固定し吊り下げたロープを使い降下する。
すべり棒 2階のみ 垂直に固定した棒で滑り降りる。
避難用タラップ B1、2~3階 避難はしごの一つで「階段状で手すりがある」もの。現在はあまりみかけない。
避難はしご B1、2~10階 最もメジャーな避難器具。設置対象である防火対象物のほとんどで使用できる。
緩降機かんこうき 2~10階 使用者が他人の力を借りずに自重で降下する。
救助袋 2~10階 垂直または斜めに展長した袋の内部を滑り降りる。
すべり台 2~10階 名前どおり、すべり台のような形状。短時間で多くの人が避難できる。
避難橋 2~10階 他の建築物へ避難するために建築物相互を連結する。

 

飲食店における避難器具の設置要件

では、避難器具の設置が必要な要件とはどういうものでしょうか。消防法において、飲食店は3項(ロ)に規定されています。
 

避難器具の設置が必要な飲食店とは?

<飲食店:3項(ロ)の避難器具設置要件>
 
 2階以上の階において収容人員が50人以上の場合
 (壁や柱などの主要構造部が耐火の場合、2階は除かれる)
 
上記が設置要件となっています。この要件だけみると該当しない飲食店も多く思えますが、以下の条件が当てはまる店舗では、設置要件が厳しくなります。
 
2階以上の階のうち*2、当該階から避難階または地上に直通する階段が2つ以上ない場合で、収容人員が10人以上の場合
 
簡単に言うと、避難階段が1つしかなく、2階以上の階の収容人員が10人以上の飲食店は避難器具の設置が必要ということになります。ここで重要なのが「収容人員が10人以上」という要件です。これについての計算方法は非常に明確になっており、以下のように算出されます。
 
-収容人数の算出方法-
①固定椅子の場合:1脚で1人
②長椅子の場合 :50cmで1人
③椅子が無い場合:床面積の3㎡で1人
 ⇒ 2階以上の階で10人以上であれば避難器具が必要!
 

居抜き店舗の際は注意!レイアウト変更で避難器具が必要に?

ここで注意が必要になります。この「収容人員」は、お店のレイアウトが影響するという点です。居抜き店舗での出店の際、レイアウト変更をして座席数を増やすと、前店舗のレイアウトでは必要なかった避難器具が必要になることがあるのです。この場合、消防署が査察に来た際に指摘を受けることになります。
 
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消防用避難器具の設置要件

しかし、避難器具を設置するには、開口面積や操作面積など守らないといけない以下の要件があるため、後から避難器具を設置するには物理的に困難な場合があります。
 
①開口部:高さ80cm以上かつ幅50cm以上、または高さ100cm以上かつ幅45cm以上
②操作面積:器具面積を除く0.5㎡以上(一片の長さはそれぞれ60cm以上)
③降下空間:外壁面から15~30cmとなる位置を中心とした半径0.5mの円柱型の範囲に障害物がないこと
④避難空地(着地点):降下空間の投影面積を有し、広場へ通じる通路は幅1m以上
 
これらが守られていないと、正常な設置と認められません。設置面の窓が開かない場合はサッシごと作り変える必要があったり、降下外壁面に看板やオーニングテントなどがあればそれを外す必要があったりと、なかなか簡単に設置できない場合もあります。
 
飲食店では、席数で売り上げが変わりますので、改装して席数を増やしたいというお考えもあると思います。その際は、避難器具についても忘れないよう考慮してください。
 

まとめ

今回は、消防用の避難器具についてご紹介しました。避難器具は、ベランダや窓際に設置されていることがほとんどです。
物に埋もれる避難器具
この画像は、実際にあった飲食店の様子です。
 
このように、ベランダに設置されている場合は物の下敷きになっていたり、窓際に設置されている場合はお店のレイアウトへの影響により移動されていることがあり、ひどい場合は撤去されていたりしているのを、巡回などで訪問した際に見かけます。そして、そこに避難器具があること自体忘れられてしまっている状況が多いように感じます。
しかし、火災が発生した際に、避難の助けになるのが避難器具です。安全に店舗運営をするためにも、防災の意識を持って設置しましょう。
 

せんべろじじぃ

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■参考URL
総務省消防庁
消防法令別表第1
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*1:消防法令別表1の6項(病院など)の場合は設置制限あり

*2:2階が2項・3項ではない場合は3階以上