【特別連載②】サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ブルワリーに行ってきた!-講義編-

“醸造技師”の仕事は、開発者が製作したレシピの味を工場という大きなスケールで実現させ、日々の官能検査を行う役割。サントリー醸造技師長・西川様に、ビールの作り方、素材へのこだわり、大麦と麦芽・ダイヤモンド麦芽の違い、じっくり煮出し、味わいを引き出す「ダブルデコクション製法」や、苦みと香りのもととなる「ホップ」を入れるタイミングにこだわる「アロマリッチホッピング製法」といった、「ビールづくりの特別講義」を学んできました。

こんにちは!菫青石きんせいせきです。
前回は、サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ブルワリーの工場見学・ガイドツアーのレポート記事を書かせていただきました。
 
■第一弾・見学編はこちらから 
www.tenpo.biz 
第二弾となる今回の記事は、醸造技師長・西川様によるビールづくり特別講義編です。
第一弾でビールづくりの工程を学びましたが、実はザ・プレミアム・モルツには、ガイドツアーだけではまだまだ伝えきれないこだわりや魅力がある…ということで、ここでしか聞けないお話をうかがっていきたいと思います。
 
「醸造技師」と呼ばれる方々がどういった仕事をしているのか、どのようにしてザ・プレミアム・モルツのおいしさが保たれているのか。くわしくお伝えしていきましょう!

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武蔵野ビール工場 醸造技師長 西川様

醸造技師・西川技師長による特別講義

ここからは、醸造技師・西川技師長に、さらにくわしいビールの作り方や、素材へのこだわりについてお話していただきます。

“醸造技師”は、こんな仕事をしています

醸造技師とは、開発者が製作したレシピの味を、工場という大きなスケールで実現させる役割を担う人のことです。
いくらレシピがあるとはいえ、単純にその通りにつくれば毎回同じ味にでき上がるわけではありません。原料である大麦とホップは、その年によって作況が異なるため、分析値や五感によって、原料配合や仕込条件を調節しなければ、同じ味には仕上がらないのです。
また、発酵に必要となる酵母は「生き物」なので、毎回同じ発酵の条件にはならず、今週は12℃で発酵させるという条件が、翌週も12℃だと発酵速度が変わってしまったりします。生き物がゆえに、微妙な調整が必要となるのです。そうして醸造されたビールは、すべてのプロセスでの品質チェックをて、パッケージングへ送られます。
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パッケージングした後には、でき立てのFresh品質だけでなく、お客様の手に渡った後の飲用時品質の確認もおこなわれます。
例えば「夏場の環境下の28℃で3週間」という条件に商品を置いた後でも、品質に問題がないかどうかをチェックして、品質が悪くならないような醸造の条件を設定します。チェック項目は仕込みの段階だけでも100以上あり、多岐に渡る仕事をしているのです。
  

大麦と麦芽、ダイヤモンド麦芽の違いって?

麦芽ばくがとは、大麦を水に浸して発芽させ、乾燥させたもの。麦芽は、主成分のでんぷんが分解されて糖になります。その他にもたんぱく質や細胞壁成分から構成されています。麦芽づくりに要する期間は、役一週間。
サントリーはこの麦芽にこだわっており、コクやうまみにつながるたんぱく質を豊富に含んでいる「ダイヤモンド麦芽」を使用しています。
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ダイヤモンド麦芽は古くからの品種で、ビール大国であるチェコのビールも、このダイヤモンド麦芽がかなりの比率で使用されているのです。
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大麦と麦芽を試食

~大麦、麦芽、ダイヤモンド麦芽を試食~
ここで、麦芽の試食タイム。
大麦はあまり味を感じず、非常に硬い食感です。麦芽は糖による甘みが出て、もろくなっているため、ポリポリ食べられます。
ダイヤモンド麦芽はさらに甘く、香ばしさが増していました。これをつまみにお酒が飲めそうです。
 

こだわりその1 じっくり煮出し、味わいを引き出す「ダブルデコクション製法」

現在では、一つのタンクで温度を上げて糖化させる「インフュージョン製法」が、時間もエネルギーもかけずにできるという理由で主流となりつつあります。
しかしサントリーでは、ダイヤモンド麦芽のコクとうまみを引き出すために、伝統的なダブルデコクション製法が採用されています。これは、麦汁ばくじゅうを別のかまで2回煮出す製法です。「マスターズドリーム」という製品では、3回もデコクションをしています。ビールも料理と同じで、煮込むほどに色や味わいも濃くなるのです。その反面、エネルギーも時間もかかりますが、細部にこだわって、ザ・プレミアム・モルツをつくっています。
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こだわりその2「アロマリッチホッピング製法」

ホップはビールの香りやにがみのもとになります。麦汁は甘いので、ホップが入ることで初めて苦みが出てくるのです。
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乾燥させ、プレスしたホップ
これは、ホップを乾燥させてプレスしたもの。これを割ってみると、フワッと華やかな香りが広がり、黄色いパウダー状のもの(ルプリン)が出てきます。ここにホップの苦みや香りの成分がつまっているのです。
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ホップの香りの成分は、わかっているだけでも数千ぐらいの成分があり、花のような香りのリナロールやバラのようなゲラニオール、レモンのリモネンなど、さまざまな香りの成分が入っています。ホップの種類によっても香り成分が違うので、チェコやドイツに行って品種の特長をしっかり確認しながら原料を調達しているのだそうです。
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このペレット(粒子状にして固めたもの)には苦み成分が凝縮されています。こちら(写真)の右側のホップはビターホップといい、煮沸しゃふつ開始時に良質な苦みを出すために使用し、左側のアロマホップ(チェコのザーツという品種)は、ホップの華やかな香りをつけるために使用します。
この華やかな香りと良質な苦みを実現するため、麦汁を煮沸する際、煮沸開始直後にはアロマホップだけを使用し、仕上げにファインアロマホップを投入します。この製法をアロマリッチホッピング製法といい、2度目のホップを入れるタイミングがおいしいビールづくりの鍵になります。
  

日々の官能検査

「官能検査」とは、専門的な厳しい試験に合格した人だけが、複数人で実施している品質チェックのこと。
異味異臭などがないかの出荷判定をするだけではなく、基準のレベルに対する出来栄えの評価判断が重要
になってきます。官能検査は、品質のわずかな差を見逃さないように、感覚が敏感になる空腹時におこないます。
完成品の他にも、仕込に使用する天然水、仕込ごとの麦汁、発酵タンクごとの若ビール、貯酒タンクごとの貯酒ビール、ろ過後のビール、完成した製品まで、すべての段階でチェックをおこなっています。
よく、「仕事で飲めて良いですね」と言われるのですが、なかなか大変です。まあおいしいんですけどね(笑)。
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機械的に製造されていると思われがちなビールですが、原料である麦芽、ホップ、一番麦汁、そして煮沸後も人がしっかり検査をおこなっています。その数多くのポイントをクリアした商品だけをお客様のもとに届けているのです。
 

ザ・プレミアム・モルツが目指す味わい

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ザ・プレミアム・モルツの目指している味わいは「ヴァイタートリンケン」
これはドイツ語で、「もっと飲みたい、何杯飲んでも飲み飽きない味」という意味です。薄くてガンガン飲めるという意味ではなく、印象に残る特有の味わいがあるからまた飲みたくなる、というイメージです。ザ・プレミアムモルツでは、「華やかな香り」「深いコクとうまみ」の2つの大きな特長を両立させるために、こだわりの素材と製法で作っています。
2017年に製法と味のリニューアルをしたのですが、今後より良くするためのリニューアルを検討しながら、挑戦し続けているところなのです。
 

気になることを質問してみました

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◆原料の作況が味に影響してくるという話でしたが、今年の麦芽やホップのでき具合はどうなのでしょうか?
西川技師長:近年、ヨーロッパでは異常気象が続き、ホップにひょうが当たってしまったり、温度が急変したりと、作況に影響を受けています。5年ほど前、ドイツとチェコの異常気象によって全体の収穫量が少なくなり、ファインアロマホップが世界中で取り合いになってしまいました。サントリーには調達のプロがいるので、チームプレイで何とかなりましたが…。収穫状況がどうなっても、品質が変わらないように条件を設定し、しっかり作っていかなければなりません。そこが難しいところでもあり、面白いところでもあります。
 
◆官能検査は感覚が大切だと思うのですが、検査ができるようになるまで、どれくらいの年月がかかるのでしょうか。
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西川技師長:官能検査の試験自体は、猛特訓すれば大概の人が合格できると思います。でも、実際の出来栄え評価というのは、そのブランドをしっかり飲み続けていないと、ブランドイメージにふさわしい品質になっているかがわからないので、そのイメージ合わせができるかがとても重要になってきます。また、人には香りの種類に対する得手不得手があります。嗅覚は、育ってきた環境がもっとも影響するといわれている感覚器官なので、田舎で育ってきた人にはこの香りは許容できるけれど、都会で育った人には許容できない、など個人差があります。私は青っぽい香りの嗅ぎ分けが比較的得意で、そういうものを感じた際には、もう少し熟成期間を延ばした方がいい、などのアドバイスをします。チームで得手不得手を補いながらしっかり評価をしているのです。
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◆スタッフの皆さんはやっぱりビールが大好きなのですか?
西川技師長:そうですね、みんなビールが好きです。以前の上司はビールが好きなのにお酒が弱くて、官能検査が終わった後はいつも赤い顔をしていました。1時間ぐらいかけて飲みますし、やはり酔ってしまう人もいますが、基本的にはビールが好きな人が多いです。
サントリーには山崎蒸留所や白州蒸留所などのウイスキーの蒸留所もあり、そちらでも官能検査をおこなっているのですが、ウイスキーの場合は飲み込まないことも多いです。しかしビールはのど越しや、飲んだ後に鼻に抜ける香りも品質に関係するので、全部飲んで検査をしているのです。
 

 
ここで講義は終了。西川技師長はこれから官能検査のため退出です。
西川技師長、どうもありがとうございました!
 
今まで工場で作られているものは、各原料を同じ配分で入れれば同じ味ででき上がるのだと思っていたので、このように多くのチェックや調整を経て製品になっているとは思いませんでした。商品を開発した人と、それを忠実に再現し続けて受け継いでいく人、さらに品質を良くするために改良する人。それぞれのこだわりとビールの深みを知ることができたので、これまでよりもさらにビールをおいしく飲めそうな気がします。
 
さて、次回第三段となる最後の記事は、飲食店でおいしいビールを提供するための秘訣ひけつをお送りいたします。ビールを提供している飲食店の方々必見ですよ!どうぞお楽しみに!
 
▼第一弾・第三弾の記事はこちらから!
 
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◆サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ブルワリー
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アクセス:JR南武線・京王線「分倍河原駅」無料シャトルバスで10分
JR南武線・武蔵野線「府中本町駅」より徒歩15分
住所:東京都府中市矢崎町3-1
予約受付電話:042-360-9591(9:30〜17:00受付)
営業時間:9:30〜17:00
休業日:年末年始・工場休業日(臨時休業あり)
www.suntory.co.jp

 

菫青石

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