【さよなら平成】平成の“食”を振り返る!そこから見えてくる食文化とメディアの影響力<後編>

メディアが食文化に与えた影響力と、平成の“食”について〈後編〉。豪華な食が好まれた時代、手軽さが求められた時代、見栄えが重要視された時代、そして、健康への影響力が注目されている時代。平成が終わり、新たな時代になると、“食”はどうなるのでしょうか。平成の終わりにかけて注目すべき“食”の、新たなブームを予想します。

“平成”という時代が終わりを告げようとしている今日こんにちですが、“平成”が始まった頃と今では、“食”の存在意義が変わってきたように感じます。
とはいえ、“食”に対する人々の関心は、今も昔も冷めることはありません。ただ、食の情報共有手段は変化を遂げ、誰もが知りたい情報を多くの選択肢の中から取得でき、伝えたい情報をリアルタイムで不特定多数の方に届けられる時代になりました。
 
前編の記事に引続き、後編もメディアが食文化に与えた影響力を考えつつ、平成の“食”について振り返ってみたいと思います。
www.tenpo.biz

f:id:tentsu_media:20190312103320j:plain
パンケーキ

 

平成16年から平成20年(2004-2008)~新しい味・懐かしい味~

昭和の後期に生まれた世代は、効率的な食材が導入されゆく台所事情、激しい受験戦争という世相の中、親が料理をする現場を見る機会が減った世代でもありました。逆をいえば、外食・中食・手作りといった違いの差がせばまり、外食体験が日常生活の一部となっている世代であるともいえます。
平成16(2004)年に創刊された主婦向け情報誌『Mart』のキャッチフレーズ「もっと生活遊んじゃおう!」に表れているように、加工食品のアレンジ料理など、オリジナルレシピを考案する人も出現し、雑誌では、コストコやカルディコーヒーファームなどのバラエティ豊富な輸入食材のお店が紹介され、店舗数を増やしていきました。
総務省の家計調査によると、平成16年には、醤油しょうゆの消費量がピーク時の1/3となり、その代わり、つゆ・たれ類の購入額が逆転しています。顆粒かりゅうや固形スープ、ルウ、合わせ調味料などが生活に定着し、進化を遂げた背景にはこのような事情もあったのかもしれません。
 
■平成16年(2004)■ 
 ・黒酢ブーム
 ・『Mart』(光文社)創刊
■平成17年 (2005)■ 
 ・TKGブーム 第1回日本たまごかけごはんシンポジウム開催
 ・インターネットを媒体にキャラ弁広がる
 ・ジンギスカンブーム(おすすめのジンギスカンのお店はこちら。)
 ・『食べログ』スタート
 ・『食楽』(徳間書店)創刊
■平成18年 (2006)■ 
 ・B級グルメの祭典、第1回「B-1グランプリ」開催
 ・全国で酒類販売完全自由化
■平成19年 (2007)■ 
 ・ミートホープ事件発生
 ・『作ってあげたい彼ごはん』(宝島社)発売
 ・『きょうの料理ビギナーズ』(NHK)放送開始
■平成20年 (2008)■ 
 ・中国製冷凍餃子中毒事件
 ・『NHKためしてガッテン』(主婦と生活社)を新装刊
 ・『太一×ケンタロウ 男子ごはん』(テレビ東京系)放送開始 
 

専門醤油に専門店、出版業界も巻き込んでブレイクしたTKG(平成17年)

f:id:tentsu_media:20190312133740j:plain
TKG 卵かけご飯

日本の元祖ファストフードといわれる卵かけご飯

“TKG”なんのことだかお分かりですか?「T=たまご、K=かけ、G=ごはん」のことです。レシピも簡単、お値段もお手頃、アレンジバリエーションも豊富と、不景気の時代にマッチしたのか、TKGブームは、“TKG”という単語とともに一気に広がりました。 
ブームが広がると、こだわりの卵で作ってみたり、醤油にこだわる人が続出。味付けに使う卵かけご飯専用の醤油は、生産が追いつかず、一ヵ月以上待たないと入手できないほどの人気ぶりでした。 
 
そのほか、「たまごかけごはんの唄」がCD化されたり、『365日たまごかけごはんの本』(読売連合広告社)をはじめとした、卵かけご飯を題材にした書籍が多数発売されました。テレビでも連日特集が組まれ、大活躍の卵かけご飯。なんと、“料理本のアカデミー賞”グルマン世界料理本グランプリ『栗原はるみのジャパニーズ・クッキング』(扶桑社)でも、「TAMAGO GAKE GOHAN」として世界に向けて紹介されたのです。
 

その反面、食品加工会社のミートホープ社が長い期間ミンチ肉の表示を偽装ぎそうして販売していたことや、中国製の冷凍餃子が原因で食中毒事件が発生するなど、平成12(2000)年に起こった食騒動(※詳しくは前編を参照)を彷彿ほうふつとさせるような出来事がありました。多発する食品偽装問題から、販売されている食品は安全であるという、消費者の考えは根底から揺るがされたのです。

平成21年から平成25年(2009-2013)~カフェ飯とお弁当~

食品への信頼の揺らぎからか、2000(平成12)年頃からひそかに人気に火がついていたスローフードが広がり始めました。安全性やオーガニックを売りにした商品がお店で並ぶようになり、産地や製造者と直接契約をして食品を集めるローカルスーパーの躍進やくしんが注目を集めるようになります。
 
そんな中、健康や環境に対する意識の高まりを受けて、オーガニックやマクロビオティックにこだわるカフェも増え、都会の真ん中でスローライフを楽しむ人々が登場します。
 
ごはん、メイン、サラダなどがワンプレートに盛られたワンプレートランチ、通称「カフェ飯」がこの頃には定着し、居心地の良い空間を売りにした、喫茶店でもレストランでもない、ファストフード店とも異なる新しいスタイリッシュな飲食店が確立されます。
雑穀ご飯や有機野菜など、基本的にはヘルシー志向のメニューで構成されていますが、カフェ飯は世界各国の食材や調味料を組み合わせており、さまざまな国の料理を貪欲に吸収してきた日本らしい料理とも言えるでしょう。
f:id:tentsu_media:20190313132328j:plain
カフェ飯 カフェプレート
■平成21年(2009)■
 ・食べるラー油ブーム
 ・バナナダイエットブーム
 ・『めしとも』(角川マーケティング)創刊
 ・『太一×ケンタロウ 男子ごはんの本』(角川グループパブリッシング)がベストセラー
■平成22年 (2010)■
 ・宮崎県下で口蹄疫発生
 ・女子会ブーム
■平成23年 (2011)■
 ・東日本大震災
 ・パンケーキ大流行
 ・キャラ弁がイギリスのBBCニュースでとりあげられる
 ・『体脂肪計タニタの社員食堂:500kcalまんぷく定食』(大和書房)がベストセラー
■平成24年 (2012)■
 ・塩こうじブーム
 ・丸の内タニタ食堂OPEN
■平成25年 (2013)■
 ・コンビニコーヒー競争激化
 ・パイナップルケーキブーム

広がるご飯のおともだちとご飯のかたち

味付けお任せ調味料が人気に(平成21年)

卵かけご飯の次に、ご飯のお供として爆発的な人気を得たのが、“食べるラー油”。当時店頭では品薄状態が続きました。そもそも、ラー油は調味料ですが、料理にあまり慣れていない人にとっては、かけただけで味が決まるというのは魅力的な要素の1つ。また、長引く不況で外食が減っていた当時、内食で食費をおさえながらも、オリジナルの料理を作りたいという、消費者のニーズと「ちょい足しブーム」の後押しが、うまくマッチしたのかもしれません。
 
実は、この“食べるラー油”がヒットしたきっかけとなったと言われているのが、本記事でも登場している雑誌『Mart』。秋冬向けの新製品2,000種類の中から『Mart』読者が1位に選んだのが、株式会社桃屋の“食べるラー油”だったのです。その後、数々のコラボレーション企画を打ち出し、最初の口コミの原動力として影響を及ぼしました。ここでも、食文化とメディアの関係性を垣間見ることができますね。

もはやアート作品!キャラクター弁当(平成23年)

f:id:tentsu_media:20190312181601j:plain
キャラクター弁当
意外かもしれませんが、昭和40年(1965)に読売新聞が行ったお弁当持参者の調査結果25.1%から、増減を繰り返しながらもお弁当持参率は増加の一途をたどっています(2008年 サラリーマンとOLを対象にした外食事情調査 株式会社インテージ 調査結果「家からの持参弁当36%」参照)。
 
食べ盛りの学生にはカロリー豊富なお肉中心、野菜嫌いな子供には果物でバランス補正、朝早くから会議がある日は昨日の夕飯の残り物。お弁当には、それぞれの事情や好み、気配りが反映されています。平成21(2009)年に“弁当男子”も登場し、再び注目され始めたお弁当ですが、キャラクター弁当が流行した理由として、SNSの普及が考えられます。
お弁当の見栄え、というものは昔から話題になることはありましたが、不特定多数の人間に見てもらえ、反応を返してもらえるという環境が、キャラ弁の流行に拍車をかけたのかもしれません。
 
ですが、このキャラ弁ブームは思わぬ事態に発展してしまいます。キャラ弁が「いじめ」のきっかけとなる、キャラクターの完成度を高めようとしすぎて栄養素が偏る、衛生上良くない、働きながらキャラ弁を作るのは重労働であるといった意見があがり、キャラ弁を禁止する幼稚園や保育園まで出てきたのです。
キャラ弁が悪いわけではありません。平成も終わるというのに「手をかけたお弁当をつくること=母親の愛情、仕事」であるという価値観がまだ一部残ってしまっているのが原因のような気がします。一番大事なのは、愛情をこめること。そこに、おいしさと笑顔が加わればなお、素敵!お弁当は無理せず、続けられるのが一番です。

平成26年から平成31年(2014-2019)~ファッション化する食~

見栄えを意識する風潮ふうちょうは、キャラ弁だけでとどまりませんでした。むしろ、見た目を意識した食べ物は、平成の終わりに向けて数を増やしていくのです。なぜ、そのような時代に突入したのでしょうか。 
昭和55(1980)年から平成22(2010)年の30年間で料理に関する本の出版数は、31冊から315冊へと増加傾向にあり、平成21(2009)年には、1番多い372冊も出版するにいたりました。
ですが、平成26(2014)年にInstagramが日本で普及をすると、その状況は一変します。平成終わりの10年間は、インスタグラムをはじめとしたSNSの影響力が強まり、いつでも、どこでも、だれもがトレンドを生み出せる時代へと変化していったのです。

■平成26年(2014)■ 
 ・Instagramが日本に上陸
 ・グラノーラブーム
 ・熟成肉流行
■平成27年 (2015)■ 
 ・ココナッツオイル
 ・スキレット、メイソンジャーメニュー流行
 ・ジビエ料理店増加
■平成28年 (2016)■ 
 ・名古屋飯に注目が集まる
 ・グルメバーガーブーム
■平成29年 (2017)■ 
 ・甘酒流行(甘酒の効果効能に興味がある方はこちら。)
 ・ハイカカオチョコレート流行(チョコレートの種別に興味がある方はこちら。)
 ・チーズタッカルビブーム始まる(チーズタッカルビのお店を知りたい方はこちら。)
■平成30年 (2018)■ 
 ・タピオカ再びブームに(タピオカに興味がある方はこちら。)
 ・チーズドック流行
 ・高級パン流行
■平成31年 (2019)予想■ 
 ・環境にやさしいパッケージが主流に・・・?
 ・ラム肉が流行・・・?
 ・プロバイオティクス食品ブーム・・・?
 ・環境にやさしいパッケージやストロー普及・・・?
 

“舌”ではなく、“目”で味わう食文化

「食は“舌”で味わうもの」その考えは、もう古くなりつつあるのかもしれません。誰もが、情報を発信できるようになった今の時代、いかに大衆の目を引く画像と共に宣伝ができるのかが重要になってきています。
料理が運ばれてきたら、食べる前にまず撮影。その行為に賛否両論ありますが、発信者はいかにおいしそうに撮影するか、光の当たり方、背景の映り込み方への工夫に余念がありません。撮影した画像を広くネット上に拡散し、どれだけの「いいね!」を獲得するかが、ステータスと考える人もいます。
また、それは広告費をかけないで宣伝を行える、“口コミ”の進化形ともいえます。
ですが、見た目が美しいものが、おいしそうに見えるのもまた事実。オシャレ度合いも格別です。

キッチンツールと共に広がる健康オシャレ“食”

f:id:tentsu_media:20190315172417j:plain
シリコンスチーマーをはじめ、スキレット、メイソンジャーといった、見栄えの良い料理が手軽に作れるキッチンツールもレシピとともに流行しました。
中でもメイソンジャーは、オシャレ女子達の健康志向の高まりもあいまって、グリーンスムージーや、グラノーラ、サラダと、さまざまな食材の相棒として活躍しました。
 
お肉に関しても、熟成肉・赤身肉といった、脂質が少なく、必須アミノ酸やビタミンが豊富なお肉が好まれるようになります。世の中の健康志向の波を受け、サラダ専門店が登場しはじめたのもこの時期です。
人々は、“食”の向こう側にある、効果・効能を意識するようになり、積極的に生活の中に取り入れました。
スイーツに関しても、健康に効果的な栄養素が豊富に含まれている、ハイカカオチョコレートなどに注目が集まり、各製菓企業がこぞって大人向けの甘くないチョコレートを発売しました。
 
そして、第三次タピオカブームが訪れます。
平成4(1992)年に一大旋風せんぷうを起したタピオカですが、平成30(2018)年にブーム再来。ドリンクにも関わらずお腹が満たされる点、オシャレなパッケージと台湾自体の人気もあって、最近はどの店舗も並ばないと購入できないほどです。

ただ、流行しているものの特徴として、“健康志向に基づいている”もしくは、“画像化した時に見栄えが良いもの”だといえます。

平成の終わりにかけて注目すべき“食”

f:id:tentsu_media:20190318174650j:plain
 
平成最後の年、平成31(2019)年。タピオカやチーズタッカルビのブームは昨年から続いています。
それに加え、次に流行するものとして、プロバイオティクス食品が注目されています。
プロバイオティクスとは、腸内フローラのバランスを改善し、カラダによい作用をもたらす生きた微生物のことで、身近なものでいえば、乳酸菌やビフィズス菌のことをいいます。
海外ではすでに、従来のサプリメント型に加え、飲料や軽食など商品形態が多様化しており、美容や健康維持を目的として日常に取り入れられているのです。健康意識が高まっている日本ですから、今後積極的に取り入れていく人が増加していくこともおおいに考えられます。

そして、引き続き人気な、お肉。今年は“羊肉”がくるのではないかと予想されています。平成17(2005)年にもあったジンギスカンブームで注目された羊肉ですが、平成29(2017)年には当時の輸入額を上回りました。
独特な臭いがあるとして、敬遠されがちでしたが、最近では冷凍でもおいしさを保つ技術が発達したため、家庭の食卓にならぶ機会も増えました。それと同じ理由で、カンガルー肉にも注目が集まっています。太りたくはないけれど、お肉を罪悪感なく食べたいという思いが反映されているように感じます。 

f:id:tentsu_media:20190318175116j:plain 
 
ここ数年で、自分が子供時代に慣れ親しんだスナック菓子が、販売エリアを縮小したり、販売中止になったりしています。
原因は、スマートフォンの普及による、指が汚れる“食”離れ。この事象は、食文化を変えるほどまでに我々の生活がスマートフォン中心になっている、という事実を改めて思い知らせるものとなりました。
 
最近では、指を汚さないためにスナック菓子専用箸(専用トング)まで販売されているそうです。時代の節目、文化の変換期には、ビジネスチャンスが潜んでいるともいえます。
 
また、“料理”“食”を題材にした番組やドラマは、いつの時代にもありましたが、今年の春からも“食卓”を題材にしたドラマが始まるようです。平成19(2007)年に青年マンガ誌『モーニング』(講談社)で連載が始まった『きのう何食べた?』(よしながふみ著)。
これまた最近ドラマで取り上げられることが増えた、ゲイのカップルが共同生活を営む中で、“食”が重要な役割を果たしながらストーリーは進んでいきます。家庭の食卓の楽しみかた、おいしさを分かち合える相手がいる幸せ、食卓が結ぶ絆、きっと毎週おいしそうな料理が登場し、視覚的にも視聴者を楽しませてくれることでしょう。今から期待が高まります。
 

まとめ

f:id:tentsu_media:20190318175833j:plain
豪華な食が好まれた時代、手軽さが求められた時代、見栄えが重要視された時代、そして、健康への影響力が注目されている時代。
健康でいるための手段として、海外ではプロテインやサプリメントが主流になっていますが、効率を考え、いずれ調理する時間や手間の必要がない、錠剤や粉末といったものが“食”に成り代わる日が来るのでしょうか?

友達と泥だらけになって遊んだ帰り道、家々から漂う食卓の香りに早まる足。部活でへとへとになった後、食べるからあげの肉汁で満たされる胃袋。目覚めと共に聞こえるまな板をたたく包丁の音に幸せを感じ、梅干を目にして唾液を口内に広がせた経験がある人は、少なくないはずです。

個人的な意見を述べさせていただくならば、“食”に対して五感で味わうということをやめたくはありません。栄養素を補給するためにする行為ではなく、“食”には平成という時代が終わり、新たな時代になったとしても、幸せや楽しみや活力を生み出す存在として在り続けて欲しいものです。
 
今回平成を振り返りながら、“食文化”“メディア”について考えてきましたが、この2つは切っても切れない関係であり、相互に影響を及ぼしてきました。私達「店通-TENTSU-」も今後とも、“食”の魅力を発信し続けていけるメディアありたいと思います。
 
 

こんな記事も読まれています

この記事をご覧になられた方々に、こんな記事も読まれています。
まだお読みでない方は、是非お読みください。 
www.tenpo.biz 
 


 
 
【参考文献】
『平成食文化史年表』株式会社筑波書房
『平成の家族と食』株式会社晶文社
『昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年』株式会社筑摩書房
『お料理番組と主婦 葛藤の歴史 きょうも料理』株式会社原書房

Ms.小わっぱ

f:id:tentsu_media:20190313132328j:plain