少額な売掛金の回収手段について【強制執行Ⅱ】動産執行「家財の差し押さえ」

弁護士に頼まずに自分で行う少額訴訟と強制執行について。 少額訴訟で判決を勝ち取ったにも関わらず支払いが滞った際、強制執行(差押え)を行うことができます。差し押さえられる財産は一般的に、不動産(土地・建物)、給与・預貯金、動産(家財など)が対象となります。 申し立て手続きの流れと必要書類、執行までの流れについて説明しましょう。

これまで少額の売掛金、いわゆるツケの回収手段として、弁護士に頼まずに自分で行う少額訴訟と強制執行についてお話してきました。

簡単におさらいしますと、少額訴訟で判決を勝ち取ったにも関わらず支払いが滞った際、訴訟で取得した「債務名義」が相手方にきちんと送られた事を証明する「送達証明書」などをそろえ、強制執行(差押え)を行うことができます。差し押さえられる財産は一般的に、不動産(土地・建物)、給与・預貯金動産(家財など)が対象となります。
 
■詳しくは過去の記事からご確認ください

 
前回は「給料の差し押さえ」と「預金口座の差し押さえ」について説明しましたので、今回は動産執行「家財の差し押さえ」について説明します。
 

1、動産執行「家財・動産の差し押さえ」について

「家財・動産の差し押さえ」は、給料や預金口座の差し押さえとは違い、書類の送付だけでは手続きが完了できません。もちろん、裁判所への申し立て自体は書類で行います。ただ、差し押さえを行うには「実力行使」が必要になるというのが大きく異なる点です。f:id:tentsu_media:20181022114021j:plain
実力行使という意味あいは、裁判所の執行官が執行場所の現場に直接行き、現場に入って差し押さえに適する現物の有無を確認し、差し押さえを行うということです。
 

2、「対象となるもの」について

この「動産執行」で注意しておきたい点は、「執行を禁止されている財産がある」という点です。「支払ってもらえなくて、差し押さえを申し立てるのに、禁止されることが有るの?」と思われるかもしれませんが、それが認められているのです。
 
なぜなら、法律は債務者の権利も保護しなければならないものと考えているからです。払えない人にも基本的な人権や生活をする権利がある訳ですし、それを犯してはならないし、保護されるべきと考えている訳です。ですので、以下の様なものは差し押さえることができないのです。
【差押禁止財産】
  1. 生活に欠くことのできない衣服、家具、家電、台所用品、畳、建具など
  2. 66万円までの金銭
  3. 仕事に必要な器具、備品類

では、どの様な物ならば差し押さえができるのでしょうか。いわゆる贅沢品ぜいたくひんであったり、ひとつでいいものを複数持っている場合が対象です。つまり、「家財・動産の差し押さえ」といっても、実際に家財などを差し押さえることは簡単ではないといえます。
また、自動車を差し押さえたい場合、「自動車執行」という別の手続きになりますので注意してくださいね。
 

3、「申し立て手続きの流れ」について

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申し立て手続きの流れについて説明しましょう。インターネットで検索すると、裁判所のホームページでフォーマットが出ていますので、これを使うと良いかと思います。
裁判所(東京地裁)|書式一覧
※東京地裁の書式が全国一律ではなく、地方裁判所によって若干異なりますが、必要な要件を満たしていれば構わないです。
  
書式を見るとわかりますが、難しいことを書く訳ではありませんので、そのまま記入していただければ構わない内容になっています。(書式の画像をクリックすると拡大表示されます。)
  
(1)動産執行の申立書 (2)当事者目録
債権者と債務者の住所地、申し立ての内容、執行を行う場所、執行に立会うかなどを記載 債権者と債務者の住所地、債務名義を記載
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(3)請求金額計算書 (4)債務者に対する調査票
債務者に請求する内容・金額・掛かった費用などを記載 執行官が行く日程を決めるための、債務者の在宅時間などの情報を記載
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(5)添付必要書類

(1)の申立書に記載されている必要な書類を、漏れがない様に提出します。もっとも、漏れが有れば執行官室から連絡が入りますので、それを後で追納すれば大丈夫です。
【添付書類】
  • 執行分の付与された債務名義
  • 送達証明
  • 資格証明・・・「代表者事項証明書」の事を言い、「現在事項証明書」や「履歴事項証明書」での代用できる場合もあり要確認。
  • 地図

(6)裁判所への申し立て

上記の書類を作成し裁判所へ申し立てを行いますが、この申し立ては実際に「執行を行う場所」の住所地を管轄する地方裁判所(執行官室)で行います。どの住所地が、どこの裁判所の管轄になるかにつきましては、裁判所のウェブサイトでご確認ください。
 

4、「費用」について

もちろん、何でもただではやってもらえません。今回は、収入印紙だけという事ではなく、お金を振り込む必要があります。   

(1)予納金

前回お話をしました「給料」「銀行口座」の執行の場合ですと必要な費用を印紙で納めましたが、今回の動産執行の場合では申し立てた後に予納金を納めます。
予納する金額は決まっているものではなく、差し押さえを行う債権額などにより必要とされる金額をその都度決められます。
一般的には、「3万円~4万円」程度が多いです。 
 

(2)開錠費用

この申し立ては、「家財・動産の差し押さえ」(動産執行)ですので、事前の通告をすることなく、突然訪問し差し押さえを行うので、訪問したその時間に債務者が在宅する、もしくは家族などが在宅するとは限りません。そうなると、せっかく費用と時間を掛けても無駄になってしまいます。また、居留守を使われ何もなかった事になってしまっては、執行のために訪問する意義が問われることになってしまいます。
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そこで裁判所の権限で、鍵を強制的に開けて執行を行うことができます。もちろん、執行官が開錠する技術を有する訳ではありませんので、開錠業者に同行してもらい開錠を行ってもらいます。開錠の費用は一般的には「8,000円~30,000円」程度かかります。
 
予納金は、執行官の費用・開錠費用を含めた金額を指定してくることが多いので、最終的に余った分は、後日、返却を受けます。
 

5、「日程の打ち合わせ」

申し立てを提出し予納金を納めますと、裁判所の執行官から連絡が入りますので、動産執行を行う日時を決めます。
 
執行を行う際に債権者が現場に立ち会うこともできます(申立書にその旨の申し出が必要)。立ち会わなくても構いませんが、日ごろ接触が取れない債務者と会えたり、債務者本人でなくても家族と話ができる機会にもなるので、立ち会いに同席することをお勧めします。
債権者は玄関から先には入れませんので玄関先で待っていることになりますが、債務者などが在宅の場合には、執行官が債権者と話をするように促してくれたりするケースもあります。 
 
実際、私も債権者として現場に立ち会い、執行官が話し合いをする様に促してくれて、玄関先でしばらく話をしたことが何回もあります。正直、ありがたく感じました。
 

6、「執行不能」

動産執行を申し立てる際に、申し立てを行う趣旨を聞かれることがあります。これは、動産執行を行っても、ほとんどの場合、差し押さえを行うべきものはない「執行不能」で終わることになるからです。もちろん、差し押さえの対象となる家財などが有れば、差し押さえを行うことができますが、それを売却して費用を賄えるかということが問題なのです。したがって、動産執行の申し立てを行うかどうかは、掛かる費用と結果を検討した上で決める必要があります。
 
ちなみに私の場合、動産執行の目的は、実際に差し押さえを行って現物を差し押さえることよりも、債務者に直接会って話をすることを重要視しています。
なぜなら、居留守が通らないからです。居留守を使っても、開錠して家の中に入る訳ですからね。実際、執行官が呼び鈴を鳴らしても、大きな声で呼んでも応答がなかったため、開錠業者に玄関のカギを開けてもらって家の中に入ったら、本人やその家族が在宅していたというケースもありました。これはびっくりしました!
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家財の差し押さえ「動産執行」をするほどですから、それまでに話し合いを試みても接触が取れなかった相手でしょう。そんな相手と直接話をする場ができるということは、具体的にお金を回収するチャンスになる訳です。よく話をして、入金をしてもらえない理由についてヒアリングを行い、今後どうするのか明確にすることが重要です。
 
飲食店での売掛金の回収ですと、多くても数十万円くらいの金額でしょうが、何百万円という金額になると、不動産の競売申立という方法もあることをお伝えしておきます。
 
せっかく、時間とお金を掛けている訳ですから、何とか回収したいですからね。「ぜひ、どうしてもやりたい」という方は、がんばってやってみてください。
「グッドラック!!」

パツラ

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