飲食店の人手不足を解決する方法|6つの原因と採用・定着の具体策を解説
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企業の労働力不足が深刻化していますが、なかでも飲食店に人が集まらないという声が多く聞かれます。
「求人を出しても応募が来ない」「採用してもすぐ辞めてしまう」 こうした人手不足の悩みは、いま多くの飲食店経営者が直面している課題です。
以前に比べると高時給を提示する店も増えていますが、人手不足が解消できるほどの結果には至っていないのが現状です。
ここでは、飲食業界の人手不足についての現状や傾向、人手不足の原因や改善策について解説します。
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目次
飲食業界における人手不足の現状
飲食業界における労働力不足は、全産業の中でも特に深刻な状況にあります。
厚生労働省の「労働経済動向調査(令和6年5月)」を見ても、運輸業、郵便業を超えて欠員率が非常に高く、多くの店舗が慢性的な人員不足に直面していることが分かります。

(資料出所)独立行政法人 労働政策研究・研修機構
かつては学生アルバイトや主婦層が中心となって現場を支えてきましたが、少子高齢化に伴う労働人口の減少により、従来のような採用手法だけでは必要な人数を確保できなくなっています。
現在は、単に求人を出すだけでは応募が集まらず、人手不足を理由に営業時間の短縮や一時休業を余儀なくされる店舗も少なくありません。
業界全体として、限られた人材をいかに確保し、定着させるかが経営上の最優先課題となっています。
飲食店が人手不足になる6つの主な理由

飲食店が人手不足に陥る背景には、業界特有の労働環境や経済的な要因が複雑に絡み合っています。
長時間の拘束や休日確保の難しさといった勤務条件の問題に加え、他業種と比較した際の賃金の低さが、求職者が離れる大きな要因です。
また、接客に伴う精神的ストレスや、人手不足がさらなる負担を呼ぶ悪循環も現場を疲弊させています。
さらに、労働人口の減少による採用競争の激化や、キャリアパスの見えにくさが、若年層の定着を妨げている側面も否定できません。
これらの要因を多角的に把握し、自店舗が抱える課題を明確にすることが、効果的な改善策を講じるための第一歩となります。
理由1:労働条件が厳しい
飲食店において深刻な人手不足が生じる背景には、他業種と比較して労働条件が厳しいという実態があります。
多くの店舗では営業時間が早朝から深夜に及ぶため、必然的に拘束時間が長くなり、心身への負担が大きくなりがちです。
また、土日祝日や年末年始などの世間が休日となる時期にこそ書き入れ時を迎えるため、スタッフは周囲と休みを合わせにくい環境にあります。
シフト制による不規則な勤務形態も、プライベートとの両立を難しくさせる要因です。
さらに、慢性的な人員不足がさらなる業務過多を招き、休憩の取得や有給休暇の消化が困難になる悪循環も見られます。
こうした過酷な勤務環境が求職者に敬遠され、離職を加速させる大きな理由となっています。
人員の離職を防ぐ具体的な方法について、以下の記事で解説しています。
あわせてご覧ください。
理由2:賃金の割安感
他業種と比較して労働環境が厳しい一方で、飲食業界の賃金は決して高い水準にありません。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」を確認しても、「宿泊業,飲食サービス業」が
269.5 千円と最も低くなっています。
この格差が、求職者が飲食店を敬遠する大きな要因となっています。

(資料出所)厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
また、アルバイトなどの非正規雇用はスタッフの入れ替わりが激しく、習熟度が上がる前に離職してしまう傾向があります。
その結果、昇給の機会を逃したまま現場を去る悪循環が続いています。
さらに、個人経営の店舗などは利益率の低さから人件費を抑えざるを得ない事情もあります。
価格競争やデリバリーサービスの普及によって経営環境が厳しさを増すなか、安易な賃金引き上げが難しい点も人手不足に拍車をかけています。
飲食店の給与水準について、以下の記事で解説しています。
世間一般の平均額や競合他社の動向を正しく理解し、自店の給与体系が妥当であるかの検証に役立ててください。
理由3:クレームなどの接客ストレスや人間関係
飲食店がなぜ人手不足に陥るのかを探る上で、見過ごされがちなのが精神的な負担です。
お客様からの理不尽なクレーム対応や、カスタマーハラスメントと呼ばれる過剰な要求によるストレスは、スタッフが「辞めたい」と感じる大きな原因となります。
実際に飲食店で働くスタッフを対象としたアンケートのデータでも、接客時のトラブルが仕事に対する不満の上位に挙げられています。
さらに、少人数でシフトを回すことが多い店舗では、従業員同士の人間関係が悪化すると逃げ場がなくなり、離職に直結しやすいという特徴もあります。
人手が足りずお店が回らない状況が続けば、余裕のない対応が再びクレームを招き、現場の負担がますます増加してしまう悪循環に陥ります。
理由4:経験に見合わない責任へのプレッシャー
人手が足りない現場では、経験の浅いパートやバイトに対して、ベテランスタッフと同じレベルの業務や責任を求めてしまうケースが頻繁に見られます。
業務に慣れていないにもかかわらず、一人で重い責任を伴うポジションを任されると、スタッフは強いプレッシャーを感じてしまうことが少なくありません。
自分の能力や経験値に見合わない責任を押しつけられることによる心理的な負担は大きく、「もう辞めたい」と退職を決意させる深刻な原因となります。
なぜ人が定着しないのかを考える際は、スタッフのスキルに合った適切な業務配分ができているかを見直す必要があると言えるでしょう。
理由5:長期雇用や将来性に期待しづらい
非正規雇用が中心の職場では、将来的なキャリアプランを描きにくいことも離職を招く大きな要因です。
正社員登用の仕組みが用意されていなかったり、何年勤めても役割がずっと変わらなかったりすると、スタッフは「このままここで働き続けてもメリットがない」と感じてしまいます。
優秀な人材に長く残ってもらうためには、日々の業務をこなすだけでなく、頑張り次第で責任あるポジションを任されるといった明確な道筋が必要です。
将来への不安を取り除き、長期的なビジョンを持てる職場環境を提示することが求められます。
このような課題を解決するための「人材戦略」について、以下の記事でまとめています。
ぜひ参考にしてください。
理由6:売り手市場による採用競争の激化
少子高齢化による労働人口の減少に伴い、有効求人倍率が高止まりする売り手市場が続いていることも大きな原因の一つです。
飲食業界は土日勤務や長時間の立ち仕事など、肉体的にも負担が大きいイメージを持たれやすい傾向があります。
そのため、より好条件で働きやすい他業界へ求職者が流出してしまいがちです。
求人を出しても思うように採用が進まず、他業種との人材獲得競争に勝てないことが、慢性的な欠員状態を生み出していると言えるでしょう。
飲食店の人手不足を解消するための対策9選

飲食店が抱える人手不足を解消するためには、新しい人材を確保する採用活動と、現在働いているスタッフに長く勤めてもらうための定着支援の両面からアプローチすることが不可欠です。
昨今の労働市場は、求職者が有利な売り手市場が続いており、従来のような求人広告を出すだけの手法では十分な人員を確保できません。
そのため、現場の業務負担を軽減するITツールの導入や、多様なライフスタイルに合わせた柔軟な働き方の提示など、時代に即した多角的な戦略が求められます。
ここでは、職場環境の改善から採用手法の見直しまで、具体的な対策について詳しく解説します。
自店舗の状況に合わせて、取り入れやすいものから実践してください。
対策1:定着率向上を意識する
採用難が続く現状では、新しい人材を探すのと並行して、今いるスタッフに長く働いてもらうための定着率向上に注力することが欠かせません。
まずは自店の給与水準が地域の相場に見合っているかを確認し、必要に応じて時給の引き上げや手当の充実を検討しましょう。
金銭面以外では、スタッフの貢献を正当に評価するインセンティブ制度の導入や、福利厚生の拡充もモチベーション維持に有効です。
また、個々のライフスタイルに寄り添った柔軟なシフト提示を行うなど、働きやすさを実感できる環境を整えることで、店舗への信頼感が高まります。
日頃から店主やマネージャーがスタッフとこまめにコミュニケーションを取り、意見を言いやすい雰囲気を作ることも重要です。
心理的な安全性が確保された居心地の良い職場を構築できれば、離職を防ぐだけでなく、スタッフが自発的に店舗運営へ協力してくれる好循環が生まれるでしょう。
福利厚生の具体例について、以下の記事で紹介しています。
あわせてご覧ください。
対策2:シフト管理の最適化
従業員のライフスタイルに寄り添った柔軟な働き方を提供することは、離職を防ぎ、新たな人材を確保するために極めて重要です。
まずは、スタッフの個人的な事情を丁寧に汲み取り、早めにシフトを確定させることで、プライベートの予定を立てやすい環境を整えましょう。
あわせて、短時間勤務や特定の曜日限定のシフトなど、多様な働き方を受け入れる体制を構築することも有効です。
育児や学業、副業など、個々の生活環境に合わせた柔軟な調整を行うことで、スタッフの満足度が向上し、長期的な定着につながります。
また、時間帯ごとの来客予測に基づき、過剰な人員配置や極端な人手不足が生じないよう最適化を図ることも欠かせません。
適正な人数で業務を回せる仕組みを作ることは、現場の過度な負担を軽減し、結果として店舗全体の運営効率を高めることにも直結します。
しかしながら、シフト管理は非常に複雑で時間を要する業務です。
この手間を削減してくれる管理システムについて、以下の記事で紹介しています。
ぜひ参考にしてください。
対策3:トレーニングの提供とスキル向上のサポート
マニュアルの作成と実務トレーニングを組み合わせ、新人が早期に仕事に馴染める体制を整えることも大切です。
現場の忙しさを理由に教育を各個人へ丸投げするのではなく、店舗としてスキル向上を支援する機会を明確に設けるようにしましょう。
具体的なサポートとして、接客や調理の基礎を学ぶ時間を勤務時間内に確保することが効果的です。
着実に成長できる環境があることを求人時や面談でアピールできれば、自身のスキルアップを望む意欲的な人材の獲得につながります。
丁寧な育成体制はスタッフの自信を育み、過度なプレッシャーによる早期離職を防ぐ土台となります。
ケアの行き届いた職場であることを示すことで、従業員のエンゲージメントが高まり、長期的な定着が期待できます。
新人教育についてお困りの方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
対策4:IT機器の活用
従業員の業務負担を軽減し、少ない人数でも円滑に店舗を運営するために、IT機器やデジタルツールの導入を検討しましょう。
モバイルオーダーやセルフオーダーシステムを導入すれば、スタッフが注文を取る手間が省けるだけでなく、聞き間違いによるトラブルも防げます。
また、自動精算機やキャッシュレス決済を連携させたPOSレジを活用することで、会計業務の大幅な時短が可能になります。
こうしたテクノロジーを積極的に取り入れることで、単純作業に割く時間を削減し、接客や調理といった本来注力すべき業務に人員を集中させることができます。
デジタルツール導入による効率化は、現場の疲弊を防ぎ、安定した店舗運営を維持するための強力な手段となります。
デジタル化=DX(デジタルトランスフォーメーション)については、以下の記事で詳しく解説しています。
対策5:ワークフローと作業導線の見直し
効率的な店舗運営を実現するためには、現場の無駄を削ぎ落とすワークフローの最適化が欠かせません。
まずはスタッフ一人ひとりの動きを詳細に分析し、調理から配膳、会計に至るまでの動線に交差や停滞がないかを確認します。
実務上の細かな不便さは、日々現場に立つ従業員が最も理解しているため、彼らの意見を積極的に吸い上げることが改善の近道です。
例えば、頻繁に使う備品の配置場所を変更するだけでも、歩行距離が短縮され、ピーク時の肉体的疲労を軽減できます。
什器のレイアウト変更といったハード面の見直しも検討し、誰が動いても最短距離で作業が完結する環境を整えましょう。
こうした小さな積み重ねが、限られた人数で店を回すための強固な土台となります。
対策6:求人方法を見直す
求人に対する応募を増やすためには、より多くの求職者と接点を持つことが重要です。
ハローワークや紙媒体のチラシ、オンラインの求人ポータルといった従来の手法に加え、ソーシャルメディアでの発信や人材紹介サービスの利用など、これまで活用していなかったチャネルを積極的に取り入れましょう。
また、既存スタッフの紹介によるリファラル採用は、自店の雰囲気を理解した人材が集まりやすく、ミスマッチを防ぐ効果も期待できます。
一つの方法に固執せず、複数の媒体を組み合わせることで、これまでリーチできなかった層へのアプローチが可能になり、有能な人材を確保できる可能性が高まります。
「採用単価をなるべく抑えたい」という方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
対策7:明確な評価基準を定める
スタッフのモチベーションを高く保ち、長期的な定着を促す解決策として、明確な評価制度を導入することも重要です。
「どのようなスキルを身につければ評価されるのか」「何を基準に時給や役職が上がるのか」が不透明なままだと、スタッフはやりがいを見失い、将来に不安を感じてしまいます。
そのため、昇給や昇格の基準を具体的な言葉で明確化し、従業員の頑張りが目に見える形で正当に還元される仕組みを作ることが求められます。
また、定期的な面談を実施してスタッフの意見に耳を傾け、日々の貢献をしっかりと認める姿勢を見せることも、職場の信頼関係を築く上で欠かせない要素と言えます。
以下の記事では、スタッフの誰もが納得できる人事評価制度の作り方を解説しています。
現場の負担を抑えつつ、人材育成と業績向上を両立させるための実践的なガイドとしてご活用ください。
対策8:補助金や助成金の利用を検討する
人手不足対策としてセルフオーダーシステムなどのITツールを導入したくても、初期費用がネックとなり踏み切れない個人経営の店舗やレストランも多いでしょう。
そのような場合は、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金などの公的な支援制度を利用することをおすすめします。
国や自治体の制度をうまく活用すれば、資金面の負担を大幅に抑えながら店舗のデジタル化や業務効率化を進めることが可能です。
深刻な人材不足によって急な休業を余儀なくされたり、最悪の場合「閉店」の張り紙を出すような事態を防ぎ、営業ができないという状況を打開するための有効な選択肢となります。
対策9:店舗運営への参加でやりがいを創出する
日々の定型業務をこなすだけでなく、店舗運営の一部にスタッフを巻き込むことも定着率を高める有効な解決策となります。
例えば、新メニューのアイデア出しに参加してもらったり、お店のSNSアカウントの更新や季節イベントの企画などを任せたりしてみましょう。
「自分たちでこのお店を作り上げている」という実感が湧くことで、仕事に対するモチベーションや店舗への愛着が大きく向上します。
経営者と同じ視点を持つきっかけにもなり、指示待ちではない自発的で積極的な働き方が期待できるようになります。
飲食店の人手不足に関するよくある質問
ここでは、飲食業界全体が抱える人手不足という深刻な問題について、経営者や採用担当者からよく寄せられる疑問に回答します。
自店の現状と照らし合わせながら、課題を乗り越えるためのヒントにしてください。
Q. お店が回らない状態を緊急で抜け出す解決策はありますか?
A. 忙しすぎてお店が全く回らない状況に陥った場合は、一時的に営業時間や定休日を見直したり、提供に時間のかかるメニューを絞ったりする勇気ある決断が必要です。
まずは現場の混乱を落ち着かせることが最優先となります。
そのうえで、お客様自身で注文を行うモバイルオーダーや、自動で売上管理ができるPOSレジなどのITツールを急ぎ導入しましょう。
業務の自動化を進めることで、少ない人数でもスムーズに営業できる仕組みを構築し、根本的な解決を目指すことが大切です。
Q. 資金力のない個人店でもできる対策はありますか?
A. 小規模な個人経営の店舗であれば、まずは費用をかけずにできる対策から始めましょう。
スタッフの頑張りをこまめに褒めたり、労いの言葉をかけたりするなど、風通しの良いコミュニケーションを意識するだけでも職場の雰囲気は大きく改善します。
また、資金面に不安がある場合でも、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金などの公的な支援制度を活用するのがおすすめです。
国や自治体の制度をうまく利用すれば、コスト負担を大幅に抑えながら最新のシステムを導入することが可能になります。
Q. 求人に応募が来ない状況を打開する方法は?
A. まずは近隣エリアにある競合店の求人情報を確認し、自店の時給や待遇が劣っていないか客観的に比較してみましょう。
当然ですが、周辺の相場よりも労働条件が悪いと、求職者から選ばれにくくなります。
また、「ランチタイムの2時間だけ」、「開店前の仕込み作業のみ」というように、業務を細かく切り分けて募集することも有効です。
働き方の選択肢を広げることで、長時間のシフトに入れない主婦層や学生など、これまで取りこぼしていた層からの応募を獲得しやすくなります。
まとめ
飲食店が直面している人手不足の課題は、単一の理由ではなく、労働条件や採用競争の激化など複数の要因が複雑に絡み合っています。
この深刻な状況を打破するためには、現状を正確に把握した上で、自店に適した改善策を戦略的に講じることが大切です。
まずは給与やシフト体制といった基本的な労働環境を見直し、既存スタッフが安心して長く働ける土台を築くことを心掛けましょう。
あわせて、IT機器の導入による業務効率化や、人事評価制度の導入など、新しい手法を積極的に取り入れる姿勢も求められます。
現場の負担を軽減し、働きがいのある職場環境を整えることが、安定した店舗経営を実現するための近道となります。
