飲食店の離職率が高い理由とは?新卒・アルバイトの定着率を上げる方法を紹介

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飲食店の離職率は他の産業に比べて高い傾向にあり、多くの経営者や店舗責任者がスタッフの定着に悩んでいます。
特に新卒社員やアルバイトの早期離職は、採用コストの増大やサービスの質の低下に直結する深刻な問題です。

この記事では、飲食店の離職率の現状をデータに基づいて解説し、離職の主な理由を深掘りします。
さらに、労働環境の改善やITツールの活用といった具体的な離職率改善策、求職者が働きやすい職場を見分けるポイントまで網羅的に紹介します。

目次

飲食店の離職率はどれくらい?データで見る業界の現状

飲食店の離職率を客観的に把握するためには、公的なデータを確認することが重要です。

厚生労働省が定期的に公表している雇用動向調査結果は、飲食業を含む各産業の離職状況を知るための信頼できる情報源となります。
これらのデータを見ると、飲食店の離職率は他の産業と比較して高い水準にあり、特に若手人材の定着が大きな課題であることがわかります。

自店の状況を正確に把握し、効果的な対策を講じるための第一歩として、まずは業界全体の現状を理解しましょう。

他の産業より高い?宿泊業・飲食サービス業の離職率

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査結果の概要」によると、2024年(令和6年)における「宿泊業、飲食サービス業」の離職率は25.1%となりました。
前年の26.6%からは低下したものの、依然として全産業の平均値である14.2%を大きく上回る高い水準にあります。

この数値は、全16の主要産業区分の中で「生活関連サービス業、娯楽業」に次いで2番目に高い離職率です。
産業全体と比較しても、飲食業界は人の入れ替わりが非常に激しい職種であることがデータから裏付けられています。

慢性的な人手不足が続く中で、他業界よりも離職のリスクが高い構造的な課題を抱えている現状を正しく認識し、早期に対策を講じることが重要です。

新卒社員は3年以内に半数が辞める?学歴別の定着状況

飲食業界における新卒社員の定着は特に深刻な課題です。

厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」のデータを見ると、
「宿泊業、飲食サービス業」における就職後3年以内の離職率は、大学卒業者で55.4%、高校卒業者では64.7%にものぼります。

これは、新卒で入社した社員の半数以上が3年以内に職場を去っていることを意味し、全産業の平均値(大卒33.8%、高卒37.9%)と比較しても極めて高い水準です。

(資料出所)厚生労働省職業安定局集計

正しく把握!離職率の計算方法

自店の離職率を正確に把握することは、課題解決の第一歩です。
離職率は、特定の期間を設定し、その期間内の離職者数を期間開始時点の在籍社員数で割ることで算出されます。
計算式は以下の通りです。

離職率(%)の計算式
【期間中の離職者数(人)÷期間開始日の在籍従業員数(人)×100】

例えば、年の初めに従業員が30人在籍しており、1年間で6人が離職した場合、その年の離職率は「6人÷30人×100=20%」となります。
この数値を業界平均と比較することで、自店の状況を客観的に評価することができます。

なぜ飲食店のスタッフは辞めてしまうのか?主な離職理由5選

飲食店の高い離職率の背景には、業界特有の複合的な理由が存在します。
労働時間の長さや給与水準といった待遇面の問題だけでなく、身体的な負担や職場の人間関係、将来のキャリアに対する不安など、スタッフが抱える悩みは多岐にわたります。
これらの離職理由を深く理解することが、効果的な定着率向上策を講じるための鍵となります。

ここでは、多くの飲食店で共通して見られる主な5つの離職理由を具体的に解説します。

理由1:長時間労働や不規則なシフトなどの厳しい労働条件

飲食店の離職理由として最も多く挙げられるのが、厳しい労働条件です。

ランチとディナーの間の休憩時間が長い「中抜けシフト」は拘束時間を長くし、生活リズムを不規則にします。
また、土日祝日や連休が最も忙しい時期となるため、家族や友人との時間を確保しにくい点も大きな理由となっています。

このようなプライベートとの両立の難しさが、特に若手従業員の離職を引き起こす一因となっているのです。
ワークライフバランスを重視する現代において、避けて通れない問題と言えるでしょう。

理由2:仕事量に見合わないと感じる低い給与水準

給与水準の低さも、離職につながる重要な要因の一つです。

厚生労働省の調査では、「宿泊業、飲食サービス業」の初任給が他産業と比較して低い水準にあることが示されています。
立ち仕事や長時間労働といった身体的・精神的な負担が大きい業務内容に対して、給与が見合わないと感じる従業員は少なくありません。

「頑張っても報われない」という感覚はモチベーションの低下に直結し、より良い待遇を求めて他業界へ転職する大きな動機となってしまいます。

理由3:立ち仕事による腰痛などの身体への大きな負担

飲食店での業務は、身体への負担が非常に大きいことも特徴です。

長時間の立ち仕事は足腰に大きな負担をかけ、腰痛や足のむくみを引き起こしやすくなります。
また、厨房では重い鍋や食材を運ぶ作業が頻繁に発生し、火傷や切り傷のリスクも伴います。
特に人手不足の店舗では、一人ひとりの業務量が増え、十分な休憩を取れないことも少なくありません。

こうした身体的な負担の蓄積が、正社員やバイトを問わず、健康上の理由で離職を選択させる一因となっています。

理由4:上司や同僚との連携不足からくる人間関係の悩み

限られたスペースで多忙な業務をこなす飲食店では、スタッフ間の円滑なコミュニケーションが不可欠です。

しかし、実際には忙しさから情報共有が不足したり、指示が一方的になったりすることが少なくありません。
特に、店長や上司からの高圧的な態度、同僚との連携不足は、従業員にとって大きな精神的ストレスとなります。

このような人間関係の悩みを誰にも相談できずに抱え込み、職場の居心地の悪さから退職を決意するケースは後を絶ちません。

理由5:スキルアップが望めないキャリアパスへの不安

日々の業務に追われる中で、自身の将来像を描けなくなることも離職の大きな理由です。

「このまま今の仕事を続けても、スキルアップできるのだろうか」「店長以上のキャリアはあるのだろうか」といったキャリアパスへの不安は、特に向上心のある正社員にとって深刻な問題です。
昇進の機会が限られていたり、明確な育成プランがなかったりすると、従業員は自身の成長に行き詰まりを感じます。
その結果、より良いキャリアを求めて、他業種や将来性のある企業への転職を考えるようになってしまうのです。

飲食店の離職率が高いことで生じる3つの経営リスク

高い離職率は、単に人手が足りなくなるという問題にとどまりません。
採用や教育にかかるコストの増大、既存スタッフの負担増によるサービス品質の低下、そして職場の士気低下がさらなる離職を招くという負のスパイラルに陥る危険性があります。

これらのリスクは相互に関連し合っており、放置すれば店舗の収益性を悪化させ、最悪の場合、閉店に追い込まれる可能性も否定できません。
経営者は、離職がもたらすこれらの影響を正しく認識しておく必要があります。

リスク1:採用・教育コストの増加で利益が圧迫される

スタッフが一人辞めるたびに、新たな人材を確保するためのコストが発生します。

求人広告の掲載費用や人材紹介会社への手数料といった直接的な採用コストに加え、新人が業務に慣れるまでの教育コストも必要になってきます。
教育担当のスタッフが時間を割くことによる人件費や、新人が一人前になるまでの生産性の低下は、目に見えにくいですが大きな損失です。

離職が頻繁に起これば、これらのコストが継続的に発生し、店舗の利益を直接的に圧迫する大きな要因となるのです。

リスク2:スタッフの負担が増えサービスの質が低下する

スタッフが欠けると、その業務は残されたメンバーで分担しなくてはなりません。
結果として、一人ひとりの業務量が増加し、時間的・精神的な余裕が失われます

疲弊したスタッフは、お客様への細やかな配慮を欠いてしまったり、オーダーミスや提供遅れといった事態を招きやすくなったりします。
このようなサービス品質の低下は、顧客満足度の低下に直結し、リピーターの減少や店舗の評判悪化という形で、売上に直接的なダメージを与えます。

リスク3:職場の士気が下がりさらなる離職を招く悪循環に陥る

同僚が次々と辞めていく職場環境は、残されたスタッフのモチベーションに深刻な影響を与えます。

「なぜ自分だけが残っているのか」「この店に将来性はあるのか」といった不安や不満が募り、職場の雰囲気は悪化していきます。
このような状況は、新たな離職者を生む大きな要因となり、人手不足がさらなる人手不足を呼ぶという悪循環に陥ってしまうのです。

この負のスパイラルを断ち切らなければ、組織としての活力が失われ、安定した店舗運営は極めて困難になるでしょう。

【実践】飲食店の離職率を改善する具体的な方法4選

飲食店の高い離職率は、放置すれば経営を揺るがすリスクとなりますが、具体的な対策を講じることで改善は可能です。
定着率が低いと感じている店舗こそ、課題から目をそらさず、従業員が働きやすい環境づくりを心がけてください。

労働環境の見直しや公平な評価制度の導入、採用段階での工夫、そしてITツールの活用など、実践可能な方法は多岐にわたります。
ここでは、離職率を低下させるための具体的な4つの方法を紹介していきます。

方法1:労働環境の見直による従業員の負担軽減

従業員の定着率を高める上で最も基本的な対策は、労働環境の改善です。

長時間労働や休日不足が常態化している場合、まずは勤務時間やシフト管理の見直しから着手しましょう。
主に、従業員の身体的・精神的負担を軽減する以下のような取り組みが挙げられます。

・適切な休憩時間の確保
・週休2日制の導入検討
・有給休暇の取得促進 など


給与水準が低い場合でも、働きやすさを向上させることは、従業員の満足度を高め、離職率の低下につながります。

方法2:「頑張り」が報われる公平な評価制度や福利厚生の整備

従業員のモチベーションを維持するためには、努力や成果が正当に評価され、待遇に反映される仕組み作りが必要不可欠です。

スキル習得や顧客からの評価、売上への貢献度などを可視化し、それに基づいて昇給や昇進が決まる公平な評価制度を構築しましょう。
評価基準を明確にすることで、従業員は目標を持って業務に取り組むことができます。
また、食事補助や住宅手当といった福利厚生を充実させることも、特に生活の安定を求める正社員の定着に有効な手段です。

方法3:採用時のミスマッチ回避で早期離職を防止

入社後の「こんなはずではなかった」というギャップは、早期離職につながる大きな原因の一つです。

これを防ぐためには、採用段階での正直な情報提供が不可欠です。
求人情報には、仕事の魅力だけでなく、厳しさや大変な面も具体的に記載しましょう。

面接では、応募者の価値観やキャリアプランを丁寧にヒアリングし、自店の理念や働き方と合致するかを慎重に見極めることが重要です。
特に新卒採用においては、このプロセスを丁寧に行うことが定着率向上の鍵となります。

方法4:モバイルオーダーなどのITツール導入による業務効率化

ITツールの導入は、スタッフの業務負担を軽減し、労働環境を改善する上で非常に効果的です。

例えば、お客様自身のスマートフォンで注文できるモバイルオーダーシステムは、ホールスタッフの注文受付業務を大幅に軽減します。
また、勤怠管理システムや予約管理システムを導入すれば、シフト作成や予約対応といった管理業務が効率化され、店長や社員はより重要な業務に集中できるでしょう。

業務の無駄をなくすことが、働きやすさの向上に直結するのです。

【従業員別】新卒・アルバイトの定着率を上げるアプローチ

飲食店のスタッフは、新卒の正社員から学生アルバイト、主婦パートまで多様な人材で構成されており、それぞれの立場やライフステージによって、仕事に求めるものや抱える悩みは異なります。
したがって、離職率を改善するためには、全員に同じ対策を施すのではなく、従業員の属性に合わせたきめ細やかなアプローチが不可欠と言えます。

ここでは特に定着が課題となりやすい新卒社員と、店舗運営の要であるアルバイトスタッフに焦点を当てた育成・定着方法について解説します。

新卒社員:相談しやすいメンター制度や研修を充実させる

社会人経験が浅い新卒社員は、業務上のスキル不足や職場への適応に不安を感じやすい傾向があります。
そのため、技術的な指導だけでなく、精神的なサポート体制を整えることが重要です。

年齢の近い先輩社員を教育係兼相談役とする「メンター制度」の導入は、新卒社員が悩みを気軽に打ち明けられる環境作りにつながります。
また、入社後の研修を体系的に行い、スキルアップの道筋を明確にすることも、社員の安心感と成長意欲を高め、定着率向上に効果的です。

アルバイトスタッフ:柔軟なシフト調整や昇給制度で応える

アルバイトスタッフの多くは、学業や家庭との両立を重視しています。
そのため、テスト期間や家庭の事情などを考慮した柔軟なシフト調整対応が働きやすさに直結し、定着率を高める上で非常に大切です。
また、単なる労働力としてではなく、店舗の一員として尊重する姿勢も忘れてはなりません。

仕事の習熟度や貢献度に応じて昇給する仕組みを設けたり、日々の頑張りに対して感謝を伝えたりすることで、バイトスタッフのモチベーションは向上し、長期的な活躍が期待できます。

【求職者向け】離職率が高い「働きにくい飲食店」の見分け方

飲食業界への就職や転職を考える際、多くの求職者が懸念するのは「働き続けられる環境かどうか」という点です。

業界全体として離職率が高い傾向がある中で、従業員を大切にし、長く働ける「優良企業」も確実に存在します。
働きにくい職場には共通する特徴があり、それらを事前に見抜くことができれば、入社後のミスマッチを回避できます。

ここでは、求人情報や面接の段階で、離職率が高い可能性のある飲食店を見分けるための具体的なチェックポイントを紹介します。

求人情報でチェックすべき労働条件や休日に関する項目

求人情報を確認する際は、給与額の高さだけでなく、詳細な労働条件を必ずチェックしてください。
特に「みなし残業代」の記載がある場合は、何時間分の手当が固定給に含まれているのか、超過分が別途支給されるのかを確認することが肝心です。
基本給が極端に低く設定されていないか、手当の内訳をしっかり把握することも、入社後のギャップを防ぐことにつながります。

また、年間休日の日数も重要な指標です。
飲食業界では年間休日が105日を下回るケースも見られますが、ワークライフバランスを重視するなら、この数値を基準に比較検討しましょう。
「完全週休2日制」と「週休2日制」では休日の合計数が大きく異なるため、言葉の定義を正しく理解しておくことも重要です。
前者は毎週必ず2日間の休みがありますが、後者は月に1回以上週休2日の週がある、という意味に過ぎません。

これらの項目を比較検討することで、企業の労働環境に対する姿勢をある程度推測でき、バイト探しにも役立つでしょう。

面接時に確認したい教育体制や職場の雰囲気に関する質問例

面接は、求職者が企業を評価する絶好の機会でもあります。
受け身にならず、積極的に質問することで、求人情報だけでは分からない職場の実態を知ることができます。
例えば、

「入社後の研修はどのように行われますか」
「スタッフの1日の仕事の流れを教えてください」


といった質問は、教育体制や業務の具体像を把握するのに役立ちます。
また、店長やスタッフの人物像についても尋ねることで、職場の雰囲気や人間関係を探る手がかりを得られるでしょう。

飲食店の離職率に関するよくある質問

ここでは、飲食業の離職率に関して、経営者や求職者から多く寄せられる質問について回答します。

離職率の具体的な計算方法や、小規模な店舗でも実践可能な対策、さらには離職率改善に成功した企業の事例など、より実践的な情報を提供します。
これらのQ&Aを通じて、飲食店の離職問題に関する理解をさらに深め、自店の課題解決や職場選びの参考にしてください。

Q. 個人経営の小さな飲食店でもできる離職対策はありますか?

A. はい、大規模な制度変更が難しくても、すぐに着手できることは多くあります。
まずはオーナーや店長がスタッフ一人ひとりと向き合い、日々の頑張りを認め、感謝の言葉を伝えることから始めましょう。

定着率が低いと感じたら、まかないの内容を充実させたり、少額でも昇給したりするなど、小さなことから労働環境の改善を図ることが大切です。

Q. 離職率改善に成功した企業の具体的な事例が知りたい

A. あるレストランチェーンでは、勤怠管理システムを導入し、労働時間を正確に把握することでサービス残業を撲滅しました。
また、従業員同士が感謝を伝え合う「サンクスカード」制度を取り入れ、風通しの良い職場環境を醸成した結果、離職率が大幅に低下しました。

業務効率化とコミュニケーション活性化が成功の鍵となった好例です。

まとめ

飲食業の離職率の高さは、長時間労働や低い給与水準、人間関係の悩みなど、複数の要因が複雑に絡み合って生じています。
この問題は、採用・教育コストの増大やサービス品質の低下といった経営リスクに直結するため、決して軽視できません。

しかし、労働環境の改善や公平な評価制度の導入、ITツールの活用、従業員との丁寧なコミュニケーションといった対策を地道に行うことで、状況は改善できます。

従業員がやりがいを持って長く働ける職場環境を整え、飲食店の持続的な成長につなげてください。

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店舗流通ネットグループ

著者:店舗流通ネット株式会社
編集チーム

「明日の街、もっと楽しく」をスローガンに、創業から25年、飲食店支援のスペシャリストとして4,000件を超える課題解決をサポートしてきました。
この長年の経験と知見を、悩めるオーナー様や未来の開業者様へ届けるべく、編集チームが執筆・解説します。