居抜き物件入居時の注意点!違法物件にならないために知っておくべきこと【建築基準法と消防法、条例】

店舗の建築基準法と消防法の注意点とは。既存不適格建物と違法建築の注意点、用途変更と確認申請、違法建築の損害賠償責任について、一級建築士が説明します。法改正により200㎡以下の用途変更が確認申請不要になり、用途変更と用途変更確認申請の誤解や、既存不適格建物の改装工事により違法建築物になることがあります。居抜き物件の入居を決める前に確認したいことを、建築基準法と消防法と東京都の条例の観点から、チェックポイント方式でまとめました。

こんにちは。
ひさしぶりの登場「一休まめけんちくし」です。
このところ、ダイエットの成果-15㎏からのリバウンドと戦う日が続いています。
 
さて、今回「けんちく」が専門の私からお届けするのは、店舗開設にかかる「用途変更」と深く関わる【居抜き開店】の注意点のはなしです。

【用途変更 改正】200㎡以下まで確認申請不要に

2019年6月に、建築基準法の改正で用途変更の確認申請が必要な規模が「100㎡を超えるもの」から「200㎡を超えるもの」になったことは、ご存じの方も多いと思います。
 
よく、
「面積が200㎡ないから用途変更がいらないな
という声を耳にします。
これは、「用途変更」「用途変更確認申請」を混同して使っているため、誤解を招きかねない言葉づかいです。
 
そして、そのあと続く話が、
「だから用途変更してもいい」
となっていることが、ときどきあります。
 
・・・私はいろいろなところ、いろいろな人に言っています・・・
これは申請の必要がないだけであり、法は守らなければならないということを。
 
しかし、知ってか知らずか、用途変更確認申請が必要ないことを「どんな変更をしてもいい」と誤解し、建築基準法に不適合な改造をしてしまう、世の中にはそんな状況が多いように思います。
 
実際、これから借りようとする居抜き物件が違法状態へ改造されたものだったという事例も多く、法令無視の危ない状態になっているものが少なくありません。
 

「用途変更」と「用途変更確認申請」の違い

・「用途変更とは」現在の用途から異なる用途へ変更して使用すること、またはその工事
・「用途変更確認申請とは」規模が200㎡以上の変更や、類似しない用途へ変更する場合、必要となる申請
 

【注意!】既存不適格建物の改装工事

「うちは内装工事をプロの工事業者にお任せしてるから安心」と言えればいいのですが、
実際のところ、法令を知らなかったり、法令を無視する工事業者も少なくありません。
ですから建築の専門家に相談することをおすすめします。 
 
昔の法令に基づいて建てられた建物の多くは、既存不適格建物といって違法建築物ではないのですが、ある一定を超える改造をして使用する場合は、現在の法律に適したものにしなければならないのです。
 

既存不適格建物とは

建築基準法は、建築完成時の法令や基準に適合することを要求しています。その後の法令の改正があると、既に建っている建物が新しい基準に合わないことになります。こうした建築物を既存不適格建築物といいます。法が改正された後の建築物は全て既存不適格建築物ということになります。
これは、そのまま使用することはもちろんのこと同じような用途での部分的な変更も違法ではありません。しかし、一定以上の改造を行う場合は、最も新しい法令に適合するようにしなければならなくなります。
 
用途変更をする場合はこういったことにも注意して、「できるできないの判断」とともに、用途変更によって必要となる付加設備や改修内容を調べ、必要な措置があれば是正しなければならないのです。
 

【違法建築物】そもそもなぜ違法な建物が多いのか?

性善説が通用しない業界の現実において、建築行政が、出来上がった建物を放置したり火災や事故があった時だけ対処し、その当事者の責任を追及して済ませている状況が見え隠れします。
一方、消防法や東京都建築安全条例など、事故後に法令改正をして事故の予防に努めている例も認められます。
 

違法建築が多い原因

  • 法律を知らないで改造をしたり違法な使い方をしている
  • 故意に売り上げを伸ばすために改造をしたり違法な使い方をしている
  • 法令を誤解、または法令知識がないまま改造をしている
  • 改造に付随してお金のかかる法定設備を無視している
  • 用途変更の概念を知らないビルオーナーがいる
  • 法の見張り役である行政の監視の目が緩い
  • 多くの建物が検査(検査済証発行)を受けずに利用開始、行政がそれを放置した過去を引きずっている
  • ビルを違法な状態のまま売買したり、法令に関する資料の引き継ぎが不十分な状態のままとなっている

 
実際のところ、既に建っている建物に対しての指導も重要な筈であり、行政は新築建物と同等にもれなく指導すれば違法使用の横行は減るのではないでしょうか。
 

違法建築の損害賠償責任

民法では、建築物に欠陥があって人に損害を生じさせた場合には所有者が、建築物の管理不十分で人に損害を生じさせた場合には管理者が損害賠償責任を負います。
そして民事上「過失」とは、人が死傷するということを予測できていながら、その回避をしなかった場合などとされます。
営業開始後、事故によって店舗オーナー、建物所有者、建物管理者が損害賠償責任を負うようなことを避けるためにも、違法建築物にならないよう注意したいものです。

既存不適格建築物をそのまま使用する場合、建物を違法使用したことにならないので罪になりませんが、改造し、当初建築した確認申請内容と異なるものにした場合は、現行法に照らして合法なものにしないと違法使用で罪になります
安全上不備な改造をした建物で人身事故が起きた場合は「過失」とされますので、みなさん注意しましょう。
 

居抜き物件の入居を決める前に確認したいこと・・・

入居前または、新たに出店する場合、特に「居抜き利用」をする場合、注意しなければならない建築基準法と消防法と東京都の条例をチェックポイント方式でまとめましたので、入居を決める際に確認してみてください。
■建築基準法 
最終の確認申請の内容に沿って内装、設備の計画がされているか [検査済証・確認済証の確認など]
用途変更確認申請が必要かどうか確かめているか [申請が必要な用途か、対象規模か]
3階以上に新たに飲食店舗を設ける場合、建物が耐火建築物であることを確認しているか
防火区画の変更はないか [区画変更が妥当か、防火区画の防火性能が満たされているか、孔を開けていないか]
構造上重要な壁を撤去したりはりを貫通したりしていないか [強度不足を招かないか]
客席部から階段、避難バルコニーへの避難経路は鍵なしで確保されているか
排煙窓が区画ごとに確保されているか、機能しているか [自然排煙の窓を設けない場合は、国交省告示の緩和の適用ができる状態か、内装の不燃材、垂れ壁などの措置が妥当か]
地下の居室は自然排煙が取れているか [内装の不燃化による緩和規定がないため]
自然排煙の窓まで、障害となる壁や垂れ壁などがないか、またはふさいでいないか
排煙オペレーターは適正な位置にあるか(高さの決まりがある)
重量物を新たに置く場合の検討がされているか
屋外避難階段から2m以内に新たな開口を開けたり、ダクトを設けたりしていないか
延焼の恐れのある範囲の開口部は適正な防火設備(網入りガラスなど)になっているか
非常用照明は区画ごとに適正配置されているか、照度測定記録はあるか
内装制限の必要な内容に合致しているか
火気使用室の換気計算はしているか
行政に対し必要な定期調査報告はされているか
■消防法
自動火災報知機の感知器は区画ごとに適正配置されているか
避難誘導灯は適正な位置にあるか
避難器具の使用に支障がないか
窓ガラスを新たに無窓階になる状態にしていないか
消防署に対する必要な届出がされているか
■東京都建築安全条例
3階以上に飲食店舗を新たに計画する場合で、屋内階段しかない場合、バルコニーはあるか(屋内階段が2つある場合を除く)
■東京都福祉のまちづくり条例
建物の飲食用途の合計が200㎡になると「だれでもトイレ」(多機能トイレ)が必要になるが、大丈夫か

 

さいごに・・・

飲食業の出退店を取り扱う会社では、入居している建物と使用状態に関して、コンプライアンスの順守が信用につながる重要な鍵です。
建築基準法や消防法などさまざまな法令に準拠して、お客様が利用されるお店の空間を安全、快適なものにしてこそ会社のアイデンティティーが保たれます。
 
平成13年の新宿明星56ビル火災ではビルオーナーなどが法的責任を問われたことを忘れてはなりません。一方、「京アニ放火火災事件」では、上階に延焼しやすい建物であったとしても違法性のない建物であったために建物の所有者、管理者が責任を問われませんでした。
 
とはいっても、設計者は法律以上の安全性を追求する使命を担っていることは言うまでもありません。
 

一休まめけんちくし

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