急増する留学生~外国人の正社員雇用における注意点とは~

飲食店が外国人を正社員雇用しようとしても、入国管理局は簡単には認めてくれません。 ホール接客や調理補助など「単純労働」に対しては、外国人の就労が認められていないためです。 外国人転職者にも注意が必要です。 就労ビザ(在留資格)が残っていても、転職時にはリセットされます。 認可のポイントを見てみましょう。

「人口減少と人材不足」。外食を取り巻く環境はますます厳しくなっています。平日のランチタイムには、店舗を切り盛りする外国人スタッフの姿も多く見られます。
 
人材不足の課題のみならず、国際化社会への対応に追われ、外国人の正社員雇用を検討している経営者や店舗責任者が多くいらっしゃいます。
 
今回は日本における正社員候補の外国人留学生数や、採用活動を行う上での注意点についてお話します。まずは現在の外国人留学生数を見てみましょう。

外国人留学生は、年々増加中!

下記のデータは、平成28年5月1日現在、日本で勉強する外国人留学生数です。
 

全体:239,287人 【前年比30,908人増(14.8%up)】
中国:98,483人【前年比4,372人増】
ベトナム:53,807人【前年比14,925人増】
出典:平成28年度外国人留学生在籍状況調査結果-JASSO

 
この数字は学校に籍を置く留学生に限ったもので、「家族滞在」や「配偶者」等の在留資格も含めると、相当数の外国人が日本にいることが想像できます。
 
対前年比の増加数が留学生全体で約3万人であるのに対し、ベトナム人の対前年比は約1万5千人増です。新たに来日する留学生の2人に1人はベトナム人ということが分かります。
 
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しかし、爆発的な増加は不都合なゆがみを作り、反感・反発を招きかねません。法務省入国管理局は、不法行為の検挙/摘発数の増加を背景に、ベトナムなど一部の国に対して、在留資格やビザの審査厳格化しました。


正社員雇用の課題は「ビザ・在留資格」の取得

外国人を正社員雇用するにあたっては『ビザ・在留資格』を取得できるかがカギです。
 
一般の飲食店が外国人留学生を正社員雇用しようとしても、入国管理局は簡単には認めてくれません。飲食店のホール接客や調理補助、工場でのライン製造など、いわゆる「単純労働」に対しては、外国人の就労が認められていないためです。*1それは、ビザの審査をあえて複雑化させることで、あらゆる危険を回避する役割も担っています。
 

専門的知識をともなう様な業務はOK。単純労働は認められない?

  
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とある飲食事業者の事例では、「店舗に在籍する留学生アルバイトへの指導もかねた通訳と、来店する外国人観光客への通訳業務」としてビザの申請が出されましたが、認可されませんでした。その理由は以下の通りです。
 
1.アルバイトとして採用できる留学生なら、それなりに日本語能力を備えているだろう。
2.外国人客への通訳も、どの程度の来店頻度か確約がしづらく、通訳が必要ない状況が多い。

 
申請された通訳業務のみでは、社員1名が専従する程の業務ボリュームがあるとは考えづらく、結果的に通常のホール接客に従事する状況が大半である。つまり、単純労働とみなされ不認可となったのです。
 
ただし、すべてが不許可になる訳ではなく、海外の現地食材を仕入れるための貿易担当者など、一定の専門的知識・スキルを持ち、それに従事する外国人に関してはこれに限りません。専門学校を卒業した留学生を正社員採用し、許可されたケースもありますので、申請を委託する行政書士との綿密な打ち合わせができるかが認可のポイントです。
 

在留資格は会社の業務ごとに申請する

 
新卒採用のみならず、転職者の採用にも注意が必要です。他社で在留資格の認可がおりた外国人が面接に訪れたとしても安心はできません。就労ビザ(在留資格)とは、「●●会社の▲▲業務に従事する場合に限って認める」という趣旨のものです。たとえ5年の在留資格が残っている在留カードを所持していても、転職時にはリセットされます。
 
その際、入国管理局に転職の事実を報告し「就労資格証明書」を提出します。提出を怠ると、5年後の資格更新時に申請業務を一から行う必要があります。不許可になってしまえば、せっかく育てた人材を退職させざるを得ません。
 

転職者の面接で気を付けるべきこと

転職者の面接で気を付けるべきは、その人が前職で「どんな業務に対して」ビザを認可されているのか?その人の学歴は、自社で担当させる予定の業務と合致しているか?といった点です。前職業務が自社業務と類似しているなら、「就労資格証明」の発行もスムーズかもしれません。
 
もし違った業務を担わせたいなら、当人に過去の卒業証明書や成績証明書を提出を求め、自社の業務にふさわしい学歴(経営管理や通訳の授業などの受講歴)があるのか確かめる必要があります。
 
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入国管理局の審査基準は毎年見直されていて、最新情報を把握するのには時間や手間がかかります。しかし、発展途上国出身の人材は、日本に住み続けること(ビザをもらう)を目的としており、企業が正社員雇用してビザを手配した後に、すぐ退職するという痛ましい事例も数多く報告されています。
 
人材紹介会社には、就労ビザを取得して3ヶ月程度にも関わらず、転職したいと申し出る人が毎日やってきます。彼らはビザ申請費用を企業に出してもらっているケースが圧倒的に多いです。 
 

まとめ

 
《新たに外国人雇用をする際の注意点》
・接客、調理補助などの単純労働では、ビザの認可がおりない可能性が多い
・専門的知識・スキルをともなう業務は認可がおりやすい
・ビザの申請を委託する行政書士との綿密な打ち合わせができるかが認可のポイント
 
《転職による外国人雇用をする際の注意点》
・在留資格(ビザ)は転職時にリセットされる(業務に対して認可がおりるため)
・転職での採用は「就労資格証明書」の提出を忘れないように
・前職の業務を把握することで、自社業務との類似性を確認する
・審査基準は毎年見直されている。最新情報の把握が重要
 
人手不足解消の一手として外国人を正社員雇用することには数多くのメリットがあります。ノウハウを積んで良好な採用環境を実現した企業も多く見られます。しかし、多くの飲食店にとっては、日々変化する入国管理局の審査基準の把握や、ビザ取得が可能かという観点からみた求人応募者の振るい分け等、多くの知識と経験が求められます。
  
外部の人材会社に委託するなり、外国人を得意とする行政書士事務所と連携するなど、国際化社会への対応や準備が求められます。この記事が、先の雇用市場を見据えた人材戦略の参考になれば幸いです。
 

 
(記事寄稿:外国人留学生就労支援 株式会社グローアップ

コブラ

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*1:飲食店における単純労働が全てに該当するわけではございません。例外もございます。