「うちの店は大丈夫」それ本当ですか? 閉店を経験したオーナーの【退店レジュメ vol.07】-ロコズキッチンの東日本大震災-

【第7話 ロコズの東日本大震災】 暖かな陽気、ランチタイムもひと段落。  地面からズンという衝撃! すぐに地震だと分かりました。 ビルは外壁塗装工事の足場が崩れんばかりの勢い。 やっと地震が収まり、窓の外を眺めてみると、今まで見たことも無い数の人が隣りの公園に避難していました。 

店通-TENTSU-をご覧の皆さん、こんにちは。浅野です。【退店レジュメ】は、私の飲食店経営の実体験に基づき、店舗のオープンから退店までを記したコラムです。バックナンバーはこちらから↓
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最初はのり気ではなかったロコズでの貸切パーティも、一般のお客様からのパーティ予約を受けはじめ、『これから』が見えてきたちょうどその頃。今回はロコズキッチンに起きた『東日本大震災』当日のお話しです。
 

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穏やかな営業日

2011年3月11日(金)、暖かな陽気でした。私はいつも通りに店をオープン。大学は春休みで、ロコズがある立教大学界隈はヒト気もなく周辺の飲食店の店内もお客様はまばらでした。
 
「今日は穏やかな1日になりそうだな」
 
ランチタイムもひと段落。この日は「オープンから気になっていたけど、なかなか来れなくて…でも卒業前にやっと来れました!」という立教女子が遊びに来てくれました。嬉しくてついつい話が弾んでいた穏やかな午後…。そんな時に突然やってきました。
 
地面からズンという衝撃!
すぐに地震だと分かりました。でも、突き上げてくる衝撃がこれまで経験したことない位強い。これはもしかしたらデカイのが来たかも⁉︎棚に重ねてある食器もガタガタ揺れ始めグラスも倒れた。今までこんなに揺れは経験したことがありません。
 
ロコズが入っていたビルは外壁塗装工事の最中で、ビルの上まで作業用の足場が組まれていました。足場もガッシャンガッシャンと凄まじい音を立てて、崩れんばかりの勢い。他の店のオーナーやお客様、周辺を歩いていた通行人、皆が右往左往して大騒ぎ。悲鳴も聞こえてきました。
 
ロコズの店内に居た嫁さんとお客様の立教女子も驚いて店外に出ようとしました。しかし、すかさず「このビルは古いけど頑丈だから大丈夫。外の方が危ない。」と店内に留まってもらいました。
 
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どの位揺れていたのか記憶はありません…が、やっと地震が収まりました。幸い店内はグラスが数個割れた位で被害はなし。お客様も我々も全員無事です。ホッと安堵のため息をつき窓の外を眺めてみると、今まで見たことも無い数の人が隣りの公園に避難していました。
 
多分500人以上居ました。少しすると、今度は近隣店舗のオーナー達が店を閉めて帰り出す姿が見えました。こんな地震の後に店を開けていても商売にならないだろうと判断したのでしょうか。確かに営業している場合ではなさそうです。この頃、まだそれほど危機感はありませんでしたが、非常事態だということはわかりました。
 
周りの様子を見て「うちも帰ろう」と判断し、クローズ作業を開始しました。すると駅構内にある飲食店の知人が来店。「あれっ!店はどうしたんですか?」と聞くと、電車が全て不通になり駅も閉鎖したそうです。店舗もやむなく閉店を余儀無くされたとのこと。
 
全ての人が駅から退場させられ、街中に人が溢れました。どうやら公園の周辺だけでなく、街全体がこんな感じのよう。「何それ!それじゃウチらも家に帰れないじゃん!」当時の自宅はさいたま市にあり、池袋まで毎日電車通勤をしていました。これでは自宅に帰れないので嫁さんの実家に連絡し、車で迎えに来てもらうことに。
 
 

予想外の来客、予想外の需要

「帰れないのであればロコズは開けておこう。」そんな軽い気持ちで営業を続行していると、予想に反してポツリポツリとお客様が来店し始めました。
 
「地震大丈夫でしたか?」と尋ねると、「周辺の店はみんな臨時休業、鉄道も動かない。避難場所もない。ひと息つく所を探していたらここが開いててさ!助かった。」と言われました。
 

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その後もお客様が続々来店し、いつの間にか店内は大混雑に。夕方になってもお客様は来店し店内は常に満席。店内に急遽席を増やして対応しましたが、外は相変わらず行き場の無い人たちで溢れていました。また、外が冷えて来たので暖を取るため飲食利用しない方も店内へ誘導しました。携帯も繋がりづらく店の固定電話も解放することに。
 
21:00位だったと思います。立教大学が施設を大規模避難所として開放しました。その連絡は店内にも伝わっていき、皆さん移動され、店内はノーゲストに。その様子を見て、私たちもようやくクローズ作業を再開しました。
 
落ち着いたと思ったら、店の外から「あさの〜」とどこかで聞いたことのある声。声の主は、以前勤務しており、今もお世話になっている会社のAさんでした。電車が止まっていたため渋谷から池袋まで歩いて来たらしく、やっとの思いでロコズにたどり着いたとのことでした。ちょうどその頃、実家の両親も車で到着。
 
みんなクタクタでした。余っていた食材で賄いを作り、振る舞いました。その後、Aさんを車で自宅まで送り、私たちも無事家路へと着くことができました。今まで感じたことがない地震でしたが、これ程までの大震災だったとは…。深夜自宅に帰宅しテレビを見てはじめて「事の大きさ」を知りました。
 
 

震災が起きた時、ロコズが出来たこと

突然の災害。非常時にお店を開けておこう、と判断するオーナーさんは少ないと思います。二次災害も大変危険ですから、火の元には充分注意が必要ですし。何より身の回りの家族・友人のことが心配です。私も「早く家に帰りたい」という気持ちでした。
 
でも、こんな時こそ、ひと息つける場所が必要なんだと、お客様からの一言を受け、気付くことができました。携帯電話も繋がらず、帰る場所にも辿り着けない人にとって、あの日のロコズは止まり木の役割を果たせたみたいです。
 
「何かしなくちゃ」と判断して的確に行動するのは、とても難しいことだと思いますが、身動きが取れなくなった時、「いつもと同じ」を続けることが誰かの助けになるのなら、やってみてもいいのかな、と思えました。
 
もちろん自分と身近な人の安否が第一優先です。実際私も「帰れないから開けていた」のです。でもロコズの味でほっと気を緩めてもらえた状況を振り返ると、飲食店経営者にとって何よりもうれしい出来事だったのは間違いありません。
 

浅野

 
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