
飲食店の出店といえば、かつては視認性の良い「1階路面店」が王道とされてきました。しかし現在では、SNSや口コミをきっかけにお店を訪れるお客様が増え、立地に求められる条件は大きく変化しています。実際、空中階にありながら人気を集め、繁盛している店舗も少なくありません。
今回は、韓国料理ブランド「ホンデポチャ」を展開し、空中階での出店も成功させてきた株式会社JDREX 代表取締役 金相勲(キム・サンフン)氏に、その秘訣を伺いました。
目次
韓国の“今”を伝えるお店をつくりたいーホンデポチャ誕生の背景

―― まずは、飲食店を始められたきっかけを教えてください。
開業当時、日本で「韓国料理」といえばケジャンや海鮮鍋のような伝統的な料理が主流でした。食器も1970〜80年代に使われていたようなステンレスのお皿や鉄のお箸が一般的で、もちろんそれも魅力的でしたが、私はもっと“今の韓国”を知ってもらいたいと考えていました。
そこで、チーズを使った料理を取り入れたり、店内をポップで明るい雰囲気にしたりと、韓国で流行しているものをいち早く反映させ、若いお客様に「これが今の韓国なんだ」と感じてもらえるようなお店を作ろうと思いました。
―― 1号店から現在の「ホンデポチャ」と同様の形態だったのでしょうか?
1号店となった新大久保本店を開業した当初は、資金が限られていたため、居抜き物件をほぼそのまま活用する形となりました。内装やメニュー構成などを整えて、現在の『ホンデポチャ』の形になったのは、もう少し後のことです。
それでも、新大久保駅から徒歩すぐ、歌舞伎町エリアにもほど近い便利な立地で、韓国のお客様も日本のお客様も集まりやすい場所でしたので、経営に大きな問題はありませんでした。加えて、1階路面店で視認性が高かったことも、この時の出店成功の大きなポイントでした。
空中階出店の第一歩、渋谷10階での挑戦


―― 1階路面店のメリットを感じつつ、その後は空中階への出店もされていますね。
初めての空中階への出店は、3号店となる渋谷でした。若い方々に来ていただくために、どうしても渋谷にお店を出したかったのですが、物件がなかなか取れなかったんです。国籍のこともあって、競合に負けたり、審査に落ちたりということが続いていました。そんなときに紹介いただいたのが、センター街の10階にある物件でした。
―― 初めての空中階出店、不安はありましたか?
「10階のお店なんて、見つけてもらえるのか?」という不安はもちろんありましたが、現在はSNSでお店を知って来店される方が非常に多く、偶然通りかかって入るよりも、目的を持って訪れるケースの方が多い時代です。であれば、1階でなくてもSNSをうまく活用すれば、集客できる可能性は十分にあると考えました。さらに当時はUber Eatsが流行り始めた時期で、韓国料理とデリバリーの相性の良さも後押しとなり、思い切って出店を決めました。
――オープン後の反応はいかがでしたか
実際にオープンしてみると、有名なインフルエンサーの方が来店してくださり、SNSを通じて一気に認知が広がっていきました。若いお客様を狙って作った「エビチーズフォンデュ」などのメニューが大ヒットし、渋谷の若者向け韓国料理店の“はしり”になれたのではないかと思っています。
知ってもらえば広がる、空中階の可能性
――空中階でお店を運営するうえで、特に意識していることは何ですか?
空中階で成功するためには、まず“見つけてもらう工夫”が欠かせません。スマホ検索でしっかりヒットするように準備すること、そして料理や店内の写真でお店の魅力をきちんと伝えること。この二つが特に重要です。立地が少しわかりづらくても、お客様が『行ってよかった』『また来たい』と感じてくだされば、それがリピートにつながっていきます。


――空中階だからこそのメリットもありますか?
たとえば先程お話しした10階にある渋谷店は、景色が良くて開放感があります。1階だと外からの視線が気になることもありますが、空中階では落ち着いた時間を過ごせるのが魅力です。最近は、むしろ『空中階の方が居心地がいい』とおっしゃるお客様も増えてきました。
――逆に、課題となることはありますか?
もちろんあります。たとえばエレベーター待ちでUber Eatsの配達が遅れてしまったり、ご来店のお客様をお待たせしてしまうこともあります。これは仕方ない部分ではありますね。
――他のエリアでも空中階に出店されているそうですね。工夫されている点はありますか?
特に意識しているのは「地域の見極め」です。私たちの業態の場合、InstagramやTikTokを積極的に使う若い世代が多い地域であれば、空中階でも十分に成り立ちます。一方、赤羽や蒲田のようにお酒中心の街では、韓国料理店は少し厳しいと感じます。空中階出店の成否は、地域の特性とターゲット層がしっかり噛み合うかどうかにかかっています。
全国展開と革新的な韓国業態づくりへの挑戦

―― 今後の展望についてお聞かせください。
現在「ホンデポチャ」はフランチャイズを含めて21店舗を展開しており、来年3月までにさらに4店舗の出店を予定しています。今後5年間で全国100店舗、年商100億円の達成を目標としています。
ただ、単に「ホンデポチャ」を増やすだけではなく、韓国業態の新しいスタイルにも挑戦していきたいと考えています。たとえばロードサイド型の食べ放題や韓国版ファミリーレストラン、定食業態など、これまで日本に存在しなかった韓国料理店の形をつくり出していけたら面白いですね。
TRNさんとのご縁にも感謝しています。中目黒でのリースバックから始まり、本厚木・自由が丘・名古屋大須といった物件をご紹介いただきました。営業の方々もフレンドリーで頼りになり、これからも一緒に面白いことに挑戦していければと思います。
―― 最後に、飲食店オーナーの皆さまへメッセージをお願いします。
私たちは韓国料理というニッチな分野ではありますが、広告やマーケティングを工夫し、お客様にご満足いただける料理とサービスを提供すれば、空中階での出店でも十分に成功できると感じています。もちろん、1階路面店の視認性の高さは大きなメリットになりますが、その分家賃も高く、飲食店の収益構造を考えると固定費が大きな負担になりがちです。必ずしも1階にこだわる必要はありません。時代に合わせて柔軟に挑戦し続けることが大切だと思います。
会社概要
会社名:株式会社JDREX(ジェーディーレックス)
所在地:〒169-0072 東京都新宿区大久保2-2-12 VORT東新宿401号
設立:2017年4月19日
資本金:3000万円
代表取締役:金相勲
従業員数:250名(パートを含む)
主要取引先:サントリーホールディングス株式会社、株式会社𩜙田、サッポロホールディングス株式会社、株式会社プレコフーズ、株式会社徳昇商事、三菱食品株式会社
主要取引銀行:三菱東京UFJ銀行新宿支店、みずほ銀行新宿新都心支店、三井住友銀行高田馬場支店、りそな銀行池袋支店、横浜銀行渋谷支店、城北信用金庫北新宿支店、西武信用金庫北新宿支店
関連会社:株式会社KD Life Japan
公式サイト:株式会社JDREX(ジェーディーレックス) | 日本と韓国の食文化を繋ぐ