関西出店は本当に難しい? 大阪支店長が語る「東京企業でも成功できる理由」 

大阪支店 統括支店長 / 東京本社 管理本部 事業戦略部部長

島田 良志

東京で複数店舗を展開する飲食企業の中には、次の成長エリアとして関西出店を検討する企業も増えています。 
一方で、「関西は東京と勝手が違うのではないか」「これまでの成功モデルが通用しないのではないか」といった不安から、検討はしているが、意思決定に踏み切れていないケースも少なくありません。実際にご相談をいただく中でも、「関西出店は難しいのではないか」という声を多くいただきます。 

しかし、現場の視点で見ると、関西出店は決して特別に難しいものではありません。むしろ、ポイントを押さえて進めることで、東京と同様に再現性を持った出店が可能な市場でもあります。 

そこで今回は、関西エリアで出店支援を行う大阪支店長に、東京企業の関西出店の実態や、成功させるためのポイントについて話を聞きました。 

島田 良志(シマダ リョウジ)

2008年、新卒で入社。東京本社にて飲食店の出店支援を中心とした営業に従事し、その後、非飲食領域のリーシングや店舗開発課の立ち上げを担う。
2017年、大阪支店への赴任と同時に支店長に就任。現在は大阪支店統括支店長を務めるとともに、東京本社 管理本部 事業戦略部部長として事業戦略の推進にも携わる。

関西出店は難しい?東京企業が感じる不安の正体

―関西進出を検討する東京の飲食企業は増えているのでしょうか?また、どのような背景で検討されるケースが多いのでしょうか? 

 特に多いのは、東京である程度多店舗展開が進んできた企業様です。首都圏での出店が一巡し、「次の成長エリアをどこにするか」を検討するタイミングで、関西が具体的な選択肢として挙がってくるケースが増えています。 

背景としては、東京での出店競争が激しくなっていることも大きいと思います。物件の取り合いや賃料の上昇などもあり、同じ条件で出店を続けていく難易度が上がっている。その中で、「別のエリアで成長の余地を探したい」という動きが出てきている印象です。 

関西出店はこれまで一部の大手企業が中心というイメージもありましたが、今では中堅規模の飲食企業にとっても、現実的な成長戦略のひとつになってきていると感じています。 

―関西出店というと、「東京とは勝手が違って難しいのではないか」と不安に感じる企業も多いと思いますが、実際のところはいかがでしょうか?また、そのように感じられる理由はどこにあるとお考えですか? 
 
そのイメージはすごくよくわかります。実際にご相談の中でも、「関西は東京と全然違いますよね?」というお声はよくいただきます。 ただ、現場の感覚でお伝えすると、思われているほど難しいものではない、というのが正直なところです。 

「関西は東京と違う」と言われることは多いのですが、出店の難易度そのものが大きく変わるかというと、決してそうではありません。もちろん、商習慣や物件情報の流れなど、エリア特有の違いはあります。ただ、それも“知らないと難しいが、分かっていれば対応できる”レベルのものです。 

では、なぜ難しく感じられてしまうのかというと、一番大きいのは「情報が見えていないこと」だと思っています。 どのエリアが良いのか、どうやって物件情報が流通しているのか、誰に相談すればいいのか。このあたりが分からない状態だと、どうしても不確実性が高く見えてしまい、ハードルが高く感じられてしまいます。 

逆に言えば、その“見えていない部分”がクリアになれば、関西出店は特別なものではありません。むしろ、東京にはないメリットも見えてくるエリアだと思います。 

関西出店のメリットと成功する企業の共通点 

―関西出店にはどのようなメリットがあるのでしょうか? 

一番わかりやすいのは、やはり「収益構造」の部分だと思います。 

例えば、坪売上は飲食店ではよく見られる指標ですが、新宿や渋谷のような一等地を除くと、東京と大阪で極端な差が出るケースはそこまで多くありません。実際、同じ坪数・同じ業態であれば、売上自体は大きく変わらないこともあります。 

一方でコストに目を向けると、大阪の方が家賃は抑えられる傾向がありますし、東京のように2年ごとの更新料がかからないケースも多いです。 つまり、どういうことかというと、“同じ売上をつくっても、手元に残る利益が変わってくる可能性がある”ということです。 

言い換えると、同じモデルで出店した場合でも、東京よりも利益が出やすい構造になるケースがある。 この点は、関西出店を検討するうえで非常に大きなメリットだと考えています。 


―一方で、同じように関西出店を検討しても、やはりうまくいく企業とそうでない企業に分かれてしまうと思うのですが、その違いはどこにあるのでしょうか? 
 
一番大きいのは、“出店の進め方”だと思います。ここで、結果にかなり差が出てきます。 というのも、関西出店でうまくいっている企業様は、物件取得から出店までのプロセスを“戦略として設計できている”ケースが多いんです。 

特に物件取得に関しては、情報のスピードとネットワークが非常に重要になります。関西はクローズドな情報も多いため、「どのように情報にアクセスするか」で、そもそものスタートラインが変わってしまいます。 

一方で、うまくいかないケースを見ると、十分な情報がないまま判断してしまったり、東京と同じ感覚で物件を探してしまったりすることが多い印象です。結果として、本来選ぶべき立地とズレた意思決定になってしまい、結果的に売上に直結してしまうケースもあります。 

また、エリアの見極めも非常に重要です。同じ大阪でも、梅田と難波では人の流れも客層も全く異なります。業態や価格帯といったブランドに対して、「どの立地が適しているのか」を正しく判断できるかどうかは、現地の理解があるかどうかで大きく変わります。 

つまり、“何をやるか”以上に、“どう進めるか”。 極端に言えば、ブランドの良し悪しと同じくらい、進め方が結果を左右すると言っても過言ではありません。 

関西出店を成功させるためのエリア戦略と市場理解

―実際に出店を進める場合、最初のエリア選定はどのように考えるべきでしょうか? 
 

私の経験上、関西に初めて出店されるのであれば、まずは「キタ」か「ミナミ」から検討するのが現実的だと思います。 理由としては、この2エリアが関西の中でも最も人の流れが大きく、売上の再現性を検証しやすく、モデル化しやすいからです。 

キタは梅田エリアで、複数路線が集まるターミナルです。ビジネス層の利用も多く、比較的安定した集客が見込めるのが特徴です。 
一方ミナミは、難波・心斎橋・道頓堀エリアで、観光客や若年層が多く、大阪らしい賑わいがあるエリアです。トレンド性のある業態や、話題性を取りにいくブランドと相性が良い傾向があります。 

このように、同じ大阪でもエリアによって特性が大きく異なるため、自社の業態や価格帯に合ったエリアを選定することが重要になります。 

その上で、キタ・ミナミのいずれかで売上の見込みが立ち、家賃とのバランスが取れるのであれば、関西出店は“チャレンジ”というより、むしろ“堅い選択肢”と言ってもいいと思います。 
極端な話、私自身が出店する立場であれば、関西を選ぶ可能性は十分にあると感じています。 

―東京と比較したときに、関西の市場や商圏にはどのような特徴がありますか? 

大阪は「第二の都市」と言われることもあり、商圏が大きいイメージを持たれる方も多いのですが、実際に出店の目線で見ると、東京と比べるとコンパクトな市場です。 体感としては、山手線の主要ターミナルを一つのエリアに集約したような規模感で、駅前商圏で見ると、その延長線上に収まるイメージですね。 

ただ、これは決してネガティブなことではありません。 むしろ中規模商圏だからこそ、人の流れや商圏構造が読みやすく、集客の設計やマーケティングは東京よりも組み立てやすい側面があります。 言い換えると、「どうすれば勝てるか」が比較的明確になりやすい市場だと思っています。 

一方で、「関西は東京と全く別の市場」と構えてしまう必要はありません。 例えば大阪でも、梅田・難波・心斎橋といったエリアごとに客層や利用シーンは異なりますが、これは東京でも新宿・渋谷・銀座で違いがあるのと同じですよね。 

つまり重要なのは、“関西だから難しい”ということではなく、各エリアの特性を理解したうえで、自社の業態や価格帯に合った立地を選べるかどうかです。 
東京で複数店舗を運営されている企業様であれば、その延長線上の判断で十分に対応できる範囲だと思います。 

関西出店で失敗しないためのポイント 

―実際に関西進出を進める中で、企業様がつまずきやすいポイントはどこにありますか? 

一番大きいのは、やはり管理体制の部分ですね。 東京中心で展開してきた企業様が関西に進出すると、物理的な距離が生まれることで、現場との連携が取りづらくなり、マネジメントが不安定になるケースはこれまで多く見てきました。 

特に、出店初期の段階で現地とのコミュニケーション設計が曖昧なままだと、オペレーションのズレや判断の遅れが積み重なってしまい、結果的に店舗運営に影響が出てしまうこともあります。 

ただ、この点に関しては、ここ数年で状況が大きく変わっています。 コロナ禍を経てリモートワークが一般化し、遠隔でのマネジメントを前提としたツールや仕組みがかなり整ってきました。 

そのため現在は、「距離があるから難しい」というよりも、最初にどれだけ管理体制を設計できているかが重要になっています。 
例えば、誰がどのタイミングで意思決定をするのか、現場との情報共有をどのように行うのか、といった部分をあらかじめ整理しておくだけでも、運営の安定度は大きく変わります。 

しっかりと体制を整えさえすれば、関西だから特別に難しいということはなく、遠隔でも十分にマネジメントは可能だと感じています。 

―「東京のブランドは関西では通用しないのでは」という声もありますが、その点はいかがでしょうか? 

そういった声はよく聞きますが、結論から言うと、そのようなことはありません。 関西だから東京のブランドが評価されない、ということはなく、あくまで“良いお店はしっかり評価される”という点は、東京と変わらないと感じています。 

実際に、関西でも支持されているブランドを見ていくと、特別に関西向けに大きく変えているというよりも、自分たちの強みやコンセプトをきちんと伝えられているかどうかが結果を分けているケースが多いです。 

重要なのは、そのブランドが持っている価値を、どのエリアで、どのターゲットに、どう届けるかをしっかり設計することです。 
どの立地であれば自分たちを求めている層がいるのかを見極め、適切に打ち出すことができれば、関西でも十分に評価されると考えています。 

つまり、関西だから特別に難しいというよりも、マーケティングと出店戦略をきちんと組み立てられているかどうかがポイントですね。 

TRNのサポート体制 

―そうした関西出店において、弊社はどのようなサポートができるのでしょうか? 

当社は大阪に10年以上拠点を構えており、関西の物件情報やマーケットに関する知見を蓄積してきました。 
ただ、それ以上に大きいのは、関東と関西の両方を横断して支援できる点だと思っています。 

実は、店舗不動産の領域でこの両エリアをまたいで支援できる会社はそれほど多くありません。 
そのため、「関西の物件は紹介できるが、東京での実績やブランド理解までは踏まえられない」、あるいはその逆、といったケースが多いのが実情です。 

その点、当社では東京での出店実績やブランドの特性を踏まえたうえで、 「その業態であれば関西ではどのエリアが合うのか」「どのような立地・条件であれば再現性が高いのか」といったところまで具体的に落とし込んでご提案することができます。 

また現在は、不動産のご紹介だけでなく、マーケティングや人材といった領域も含めてご相談をいただくケースが増えています。 「物件を決めて終わり」ではなく、出店後の運営も見据えたトータルでの支援ができる点が、当社の強みだと考えています。 

―ありがとうございます。では最後に、関西出店を検討している企業様へメッセージをお願いします。 

関西出店に対してハードルの高さを感じている企業様も多いと思いますが、実際には、正しい情報をもとに進めていけば決して特別に難しいものではありません。 
むしろ、今回お話ししてきたように、きちんと設計すれば、東京と同じように再現性を持って展開できる市場だと考えています。 

そして、関西での出店・運営のノウハウが確立できれば、それはそのまま、他エリアへの展開にも応用できます。 
将来的に福岡や名古屋、札幌、仙台といった地方都市へ広げていくうえでも、関西は非常に良い“最初の一歩”になるはずです。 

「なんとなく難しそうだから」と検討を止めてしまうのではなく、まずは一度、具体的な情報をもとに“自社で成立する可能性”を見ていただきたいですね。 

当社としても、関西出店を検討されている企業様にとって、最初に相談していただけるパートナーでありたいと考えています。 
まだ具体的に決まっていない段階でも構いませんので、まずは情報収集の一環として、お気軽にご相談いただければと思います。