【ハラール特集・前編】ハラール認証とは?ハラールの意味、きちんと理解できていますか?

そもそも「ハラール」とは何なのか。 ハラル、ハラーム、シュブハとはどういう意味なのか。 飲食業界で話題になっている「ハラール認証」とはどういったものなのでしょう? 集客や売上に影響はあるのか? どのくらいの費用がかかるのか? 日本で活躍しているムスリムのオーナーシェフへ伺いました。

f:id:tentsu_media:20180219163553j:plain
こんにちは。マイ・サイ・パクチーです。
インバウンド効果やSNSの普及により、「ハラール」もしくは「ハラル」という言葉をよく耳にするようになりました。特に飲食店を経営されている方であれば、「ハラール認証」について一度は意識したことがあるのではないかと思います。
 
そんな「ハラール」についての理解を深めるために、日本の飲食店で活躍しているムスリム(イスラム教徒)のオーナーシェフのもとへインタビューに伺いました。
 
そもそも「ハラール」とは何なのか。日本でムスリムとして生活することの苦労や、ハラルフードについてのことなど、こちらも予想していなかった回答をたくさんいただきました。今回はその内容を前後編の2回に分けて、お伝えしたいと思います。
 

f:id:tentsu_media:20180219171110j:plain

インタビューにご協力いただいた方
ムジャヘッド・ジャハンギールMDさん

1985年にバングラディッシュより来日。現在、東京都練馬区にてイタリアンレストラン「江古田のまちのレストラン プランポーネ」のオーナーシェフとして活躍されています。来日して日本語学校を卒業し、東京でイタリアンやフレンチ、ファミレスなど、さまざまな飲食企業で勤務をしました。17年間勤めたイタリアンでの経験を活かして、日本の子供たちが元気に育つように、安全でおいしい料理を提供しています。

 

「ハラール」とはどういう意味なのか?

まず始めに、「ハラール」の持つ意味について教えていただけますか?

「ハラール」とは、食べ物のことだけを指すのではなく、ムスリムが生活全体のなかで「許されているもの・こと」を指します。逆に「禁止されていること」を「ハラーム」と言います。
 
ムスリムにとってハラームの食べ物は、「おいしくないもの」という意味ではなく、見たくもない、触りたくもないものなんです。全人類のために神様が食べることを許しているのがハラールであり、食べてはいけないものがハラーム、そしてできれば避けるべきもの・シュブハ、という3つの種類に分けられます。
 

禁止とされている「ハラーム」にはどんなものがあるのでしょう?

「ハラーム」とは、行いや考え、食べるものとして禁忌とされているもの・ことです。
食べてはいけないものとしては、主に以下のようなものが挙げられます。
・豚肉と豚が由来のもの
・血(血液)
・死肉(イスラムの教えにしたがって処理されていない肉)
・アルコール入り飲料
また、豚肉に触れた器具を使って作られたものや、豚肉が置かれた皿に盛られた食べ物、ゼラチンやラード、ポークエキスなどの、豚由来の食べ物ももちろん食べることができません。
f:id:tentsu_media:20180307130346j:plain
ただし、ムスリムの中でも宗派や個人によって守っている範囲が違います。例えばアルコール飲料を飲むことはNGでも、調理工程で肉や魚の臭みを消すために使用したり、発酵の際に発生するアルコール分はOKとしている人もいます。
 

日本では、ハラールに関してあまり理解していない人の方が多いのではないでしょうか。日本に来た際は苦労されたのでは?

僕が日本で働き始めた当初(1985年頃)はハラールの認識は全く広がっていませんでした。何も知らない職場の上司に「おいしいトンカツ屋があるからおごってやるよ」と、連れていかれて困ったこともあります。そのように、自分のようなムスリムが日本の食事情で苦労しているのはずっと知っていました。
 
そんな背景から、ハラールの認識を広めたい・もしくは同じことで困っているムスリムの人たちを助けたいという気持ちもあり、自分で飲食店を開業することになったのです。
 

「ハラール認証」とは、どんな時に必要なものなのか。ハラルフードを提供する際、必ず取らなきゃいけないもの?

f:id:tentsu_media:20180307162002p:plain
 

では、ここ数年飲食業界で話題になっている「ハラール認証」とはどういったものなのでしょう?

ハラール認証とは、お店で提供しているものがハラールである・安全であると保証する制度のことです。認証の範囲は、食以外でも医薬品や衣類など、ムスリムが生活の中で消費・利用するものすべてにおよびます。
 
認証機関に認められた店舗には、ハラール認証のマーク(ハラルマーク)が与えられます。国や宗派によっても対応している機関が違うため、世界共通の認証機関は存在しません。そのため、自分の店舗(会社)で作っているものをどの国に向けて展開するのかによって、認証に適している機関がどこなのかを調べる必要があります。
  
宗教法人の認証機関もあれば、NPO法人(非営利団体)のような機関でも実施しています。宗教法人は認証を行うことがメインではなく、宗教活動の一環としておこなっているため、そんなに数は多くありません。NPO法人のような団体では、“ムフティ”と呼ばれるハラールやイスラムに精通している学者が、イスラムにのっとっているのかを判断していきます。
 
このように、現状としてハラール認証機関が乱立している状態のため、認証を考えている人を迷わせてしまう一つの原因となっています。何かしらの一律した基準を作っていくことも、今後の課題かもしれませんね。
 

ムジャヘッドさんは、ハラール認証はどういった場合に必要だと考えますか?

ハラール認証の取得を推奨するのは、特に非ムスリムがハラルフードを提供する場合です。
日本人がハラルフードを作っても、認証がないと不安になる人もいますし、提供していること自体にもなかなか気付いてもらえません。でも、よく勘違いしている人が多いのですが、ハラール認証を取っていないからといって、ハラルフードを提供してはいけないわけではありません。
 

ちなみにムジャヘッドさんは、ハラール認証を取得しているのですか?

過去に取ったことはありますが、今は更新していません。
僕は6年前から自分のお店を経営しているのですが、もちろん開業当初からハラールの料理を出していました。ハラール認証を取ったのは3年前。ムスリムの友人から、「君がハラール料理を提供していることを知らない人に分かりやすいように、ハラール認証を取っておけば?」と勧められ、取ることにしたのです。
 
でも認証を持ち続けるためには毎年認証を更新する必要があります。すでに当たり前のようにハラールを提供してきた僕にとっては、今も昔も同じように提供をしているのに、わざわざお金をかけて更新をする必要があるのかなと考えました。最終的には認証を取る前も取った後もやっていることは同じでした。ですので、「認証をもらうだけの行為」は、あまり関係ないことだと思って更新はしませんでした。
 
そして何より「長くハラールを提供しているムジャヘッドさんでも、日本ではハラール認証を持たないといけないんだ。」と思われてしまうのが、あまり良いことではないと考えたためです。先ほどもお話ししましたが、認証を取得しないとハラルフードを提供してはいけないわけではありません。
 
例えば、ハラルフードを提供しているけど、認証は取得していないお店があったとします。そのお店が「ムスリムの方向けにハラルフードをご用意しています」と看板を出すことも、何も問題はないわけですからね。
プランポーネ店内。礼拝のスペースも完備。ハラール認定マーク付きの食品
ムジャヘッドさんの経営するハラール対応のお店:プランポーネ。礼拝用のスペースも完備しています。
 

ハラール認証を取得して、集客や売上に影響はありましたか?

僕のところはハラール認証を取得したからといって、大きく何かが変わったということはありませんでした。理由はこのお店に来てくれるお客様は99%が日本人だから。彼らはおいしいから食べにきてくれているので、ハラルフードであることは全く関係ないのです。
 
もちろんムスリムの人たちも来客されますが、観光客の方々は僕のお店をインターネット(Facebook)で見て知っているので、ハラール認証がなくてもお店に来てくれます。これが日本人のシェフや飲食企業だったら、また状況は違うと思いますが。
 

ハラール認証を取るにはどのくらいの費用がかかるのですか?

どの認証機関に依頼するかで金額は変わってきます。ハラールについて何も知らない人が1から勉強をして認証を取ろうとすると、数十万円、多いところでは百万円を超える金額がかかることもありますね。
 
なぜそんなに高額なお金がかかるのかというと、ムスリムの考え方やプロセスを勉強させて、調理の仕方を1から教わる必要がでてくるためではないかと思います。ハラール認証は、“ハラルフードの作り方を学び、ハラルフードを提供する”という位置づけが一番正しいかもしれません。
 

 
ハラールの持つ意味と、ハラール認証についての理解が深まったところで、次回はムジャヘッドさんのハラール認証に対する意見を率直におうかがいしました。
www.tenpo.biz


マイ・サイ・パクチー


f:id:tentsu_media:20180219163553j:plain