土壌汚染とは?わかりやすい!土壌汚染対策法と汚染土壌処理方法|バイオ浄化技術

土壌汚染対策法と汚染土壌の処理方法とは。バイオ浄化技術により土そのものを蘇らせる土壌汚染処理方法「バイオレメディエーション」について、土壌環境リスク管理者・CASBEE不動産環境評価員の有資格者がわかりやすく紹介します。汚染された土壌の浄化方法汚染土の処理方法「堀削除去」と、環境省が推奨する安全で広大な土壌にも有効なバイオ浄化技術と、店舗流通ネットのコンストラクション・マネジメント部(CM部)の取組みについて紹介します。

皆さんは日頃食品を買い求める際に、生産地が国産であるかないか、野菜類が有機栽培や無農薬野菜(最近はJAS規格の特別栽培と表示)であるかそれ以外であるないかなど、結構表示シールを意識していませんか?
これは昨今の国民全体の健康志向と、環境問題に向ける関心の度合いが大きく影響しているからに他なりません。そこでこれらの背景にある一つの重要な社会問題を、私たちは関心をもって見守っていく必要が出てきます。
 
その問題とは、『汚染土壌問題』です。国は土壌汚染による国民の健康被害の防止を目的として、2003年2月に「土壌汚染対策法(通称:土対法)」を施行しました。

私たち店舗流通ネットの飲食店関連事業も、食の安全を守ることと密に関わっています。そこで今回は、土壌汚染はなぜ起こるのか?汚染された土壌の処理と、最近注目の処理方法をご紹介します。

■ライター紹介
「土壌環境リスク管理者」「CASBEE不動産環境評価員」の資格を持つ。大手ディベロッパー在職時に、事業計画段階の土壌環境アセスメント対応において行政折衝を担う。現在は、店舗流通ネットにて自社飲食ビル建設のための開発用地の仕入れを担当。

土壌汚染問題とは?

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土壌汚染とは、どのような状態を言うのでしょうか。東京都環境局では、以下のように定義されています。

土壌汚染とは、一般的に薬品や排水の漏えい等の人為的原因により有害物質が土壌中に蓄積され、その濃度が法や条例で定められた基準値を超えている状態を指しますが、土壌の成り立ち等の自然的原因も含め、土壌中の有害物質の濃度が基準値を超えている状態全般を指すこともあります。
 
東京都環境局-中小事業者のための土壌汚染対策ガイドライン

 
つまり、人の活動にともなって発生したり、自然の状態で汚染されていたりするものが土壌汚染といえます。汚染された土壌の有害物質は、移動しづらく、土の中に長期間とどまりやすいことが特徴です。また、目で見ることもできません。
 
国は、土壌汚染の原因物質となる“特定有害物質”を26品目指定しており、それぞれ土壌に溶出される量の基準、一部品目によっては含有量の基準まで厳しく規定されています。興味のある方は、環境省の特定有害物質及び指定区域の指定基準から一覧がご覧いただけます。
 

汚染された土壌は何を引き起こす?

汚れた土壌からは、安全な野菜や果物、米などの食材は育ちません。また、有害物質を含む食品を摂取してしまった場合には、人体に悪影響を及ぼす危険性があります。
 
近年の甚大な土壌汚染は、2011年3月11日の東日本大地震により土壌に沈着してしまった放射能汚染。東北地方の農耕地はこれにより大打撃を受け、さらに国内外までに及んだ忌わしい風評被害についても、未だに完全には払拭しきれていないのが現状です。
 
農家はこの9年間で高濃度セシウムの沈着との闘いを強いられ、健全土と汚染土の交換をし続けてきた結果、ようやく最近“新しい土壌”で育った生産品が市場に流通するようになりました。
 
国の基準値を超えるセシウムが検出される限り、土そのものを“置換”するタフな作業を続けていくしか完全な復興への道筋は開けていけないのが現実です。
 

汚染された土壌を見つけたら?

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では、調査により土壌が汚染されていることが判明した場合はどうすればよいのでしょうか。
汚染された土壌の区域は、土壌汚染対策法により「指定区域」として台帳で公開されるようになりました。土壌汚染が判明した場合、速やかに行政へ報告しましょう。
 
汚染された土壌の対処方法については、二通りあります。
1.土壌内に汚染物質があったとしても、その影響を受けないように「封じ込め」「遮断」などの対応を取り、管理を続ける
 
2.汚染された土地を浄化し、汚染物質を取り除く
 
浄化が完了すればその後の土地は自由に利用できますが、1の対策を取ったならば、その後の土地の管理は土地の所有者の責任となります。以下では、浄化の方法を2つご紹介します。

汚染された土壌の浄化方法

ディベロッパーによる再開発でも、汚染された土壌に直面すると、その浄化コストは事業費をひっ迫させる要因となります。不動産取引においても、『土壌汚染リスク』は重要な環境リスクといえるのです。
それでは、汚染された土壌の浄化方法を見ていきましょう。
 

汚染土の処理方法「堀削除去」

再開発のほとんどは、事業スケジュールを遅らせることができないために、汚染土そのものを掘削し、スッポリ場外へ運び出す「掘削除去」という手段をとります。運び出した汚染土は、場外で処理を行います。
 
この処理方法は開発上、オンスケジュールで進められますが、処理費用は健全土における基礎工事などの土壌処分費に比べ6~7倍(汚染が重篤な場合は10倍に相当するケースもある)という想像を超える割高なコストがかかってきます。
土壌汚染の掘削除去
 

◆土壌汚染事例~掘り出された汚染土はどこへ行く?~

除去された汚染土の処理方法について、銀座地区の再開発の事例を見てみましょう。江戸時代、銀座の東側は“日比谷入江”と呼ばれる海だったため、銀座8丁目から1丁目のエリアで行った再開発の際、10メートル以深の掘削をすると“自然由来汚染土(ヒ素・フッ素・ホウ素)”で埋め尽くされていました。
 
このような自然由来汚染土は、関東地区では川崎周辺の臨海処理工場で約1450℃の高温で焼成することにより有害化合物を分解し、セメントリサイクル化することで、再び使える原料として蘇らせることが可能です。
 

最近注目の土壌汚染処理方法「バイオレメディエーション」

「堀削除去」も立派な環境対策といえますが、ネックとなるのは高額な費用。そこで近年、中・小規模開発の処理方法に相応しい「原位置浄化=バイオレメディエーション」というバイオ浄化技術が注目されています。これまでは、土壌汚染の処理方法のほとんどが掘削除去でしたが、土そのものを蘇らせる「バイオ浄化技術」が環境省により盛んに推奨されるようになっています。
それにより、ブラウンフィールド*1における不動産取引には欠かせない浄化技術としての位置を確かなものにしつつあります。
土壌汚染のバイオレメディエーション
 

◆バイオ洗浄技術のメリット

ここでバイオ浄化技術の何が掘削除去よりも優れているのかについても触れておきたいと思います。
 
①大幅なコスト削減が可能
原位置で浄化するので土を大型車で運び出す必要がなく、ゼネコンの力を必要としないため大幅なコスト削減ができる。
 
②自然にやさしい
もともと土の中に生息している微生物を活性化させて、バイオの力で汚染を分解させていく、自然に基づくメカニズムを使用するため、効果は持続可能かつ自然に優しい。
 
③安全性が高い
汚染土壌に注入する微生物活性剤は、再生可能な有機資源である大豆油を主成分とした生物由来であるため、自然に対して極めて安全性の高い製品である。
 
④広大な土壌にも有効
微生物活性剤は粒形が細かく均一(1~2μm)であり、表面にマイナス電荷を帯電しているので地中に効率的に輸送拡散される(空隙水くうげきすい*2の流通経路に対しても有効に機能)。
 
バイオ浄化技術は汚染物質の自然減衰を促進するというプロセスであるため、浄化期間に関しては自然由来の汚染であれば早ければ1年、工場由来などの重篤な汚染では平均2年ほどを要するという実績値が出ています。しかしメリットが多いため、米国ではすでにバイオ浄化技術がブラウンフィールド対策の主流をなしています。

まとめ

首都圏の駅周辺には、ほぼほぼ土地は残っておらず、“遊休地”として空いているところは、汚染土壌の地歴を背負っていると考えてもいいくらいです。そのため、店舗流通ネットのコンストラクション・マネジメント部では、今後の開発用地の仕入れにおいては、これらの土地をむしろ前向きに検討し、負の資産からヴァリューのある土地へと蘇らせる取り組みを進めたい考えでいます。
 

バックパッカー

*1:以前は都市的な利用をされたが、土壌汚染などの要因により再利用されていない土地のこと

*2:セメントの隙間に存在する水