【さよなら平成】平成の“食”を振り返る!そこから見えてくる食文化とメディアの影響力<前編>

メディアが食文化に与えた影響力とは。平成という時代に影響を受けた食文化について考えます。 バブル崩壊し、家庭科が男女ともに必修科目になり、『男の料理』が放送開始。「男子厨房に入らず」の意識改革が始まった平成。 料理番組はバラエティ番組へと発展し、食卓は健康志向と簡単志向へと。繰り返されるブームと食騒動について振り返ります。

平成27(2015)年11月24日に一番最初の記事が公開され、平成28(2016)年1月6日に正式リリースされた店通。平成という時代に開設された店通ですが、寂しいことにその時代が終わりをむかえようとしています。
思い返してみれば平成という時代は、道具や手段の発達が目まぐるしくおこなわれ、入れ替わってきた時代でした。それと同時に、伝達手段も情報収集の方法も多様化の一途をたどることとなりました。食文化も例外ではなく、その影響を受けた1つだったのではないでしょうか。
 
今回は、メディアが食文化に与えた影響力を考えつつ、平成の“食”について振り返ってみたいと思います。 

f:id:tentsu_media:20190201112959j:plain
食卓の風景

 

平成元年から平成5年(1989-1993)~平成の幕開け~

1989年1月8日、“平成”が始まりました。高校では家庭科が男女ともに必修科目となり、バブルが崩壊した平成3(1991)年には、長寿番組『きょうの料理』の土曜枠で『男の食彩(男の料理)』が放送開始、創刊されました。「男子厨房ちゅうぼうに入らず」であった意識改革のはしりです。
そうしてまさに字のごとく、新たな時代の幕開けをした“平成”ですが、この時代の食文化は、どうなっていったのでしょうか?当時起きた“食”に関する出来事とメディアの動きもあわせてみていきましょう。
 
■平成元年(1989)■ 
 ・消費税導入(3%) 
 ・もつ鍋ブーム始まる
■平成2年 (1990)■ 
 ・ティラミス流行 
 ・『danchu』(プレジデント社)創刊 
 ・『すてきな奥さん』(主婦と生活社)創刊
■平成3年 (1991)■ 
 ・バブル崩壊 
 ・『男の食彩』(日本放送出版協会)創刊 
 ・『ひとりでできるもん!』(NHK教育)放送開始
■平成4年 (1992)■ 
 ・タピオカ旋風(タピオカのに興味がある方はこちら。)
 ・『ごちそうさまが、ききたくて。』(栗原はるみ著 文化出版局)がミリオンセラー
■平成5年 (1993)■ 
 ・ナタデココ流行 
 ・『モグモグGONBO』(日本テレビ系)放送開始 
 ・『料理の鉄人』(フジテレビ系)放送開始
 

ティラミス旋風と新たな形の料理バラエティ『料理の鉄人』

f:id:tentsu_media:20190204133837j:plain
一世を風靡ふうびしたティラミス

食感と未知の食材マスカルポーネチーズを味わうティラミス(平成2年)

日本人が良くも悪くもバブルの熱に浮かされていた90年代前半、気軽に食べられるイタリア料理通称『イタめし』がフランス料理に代わり、流行りだしました。そんな中、当時若いおしゃれ女子たちのバイブルであった雑誌『Hanako』(マガジンハウス)が、イタリアのデザートの女王として“ティラミス”を特集したのです。するとティラミスブームは、新鮮で斬新であったマスカルポーネチーズの効果もあいまり、またたく間に全国に広がり、社会現象を巻き起こしました。
 
チーズ風味の中に少しリキュールを効かせ、大人の雰囲気が漂うフワッフワッの生地に、コーヒー味をプラスして、仕上げに女子大好物の生クリームを添える。大人っぽさ、豪華さ、層になっている見た目の美しさに文句なしのおいしさ、流行したのもうなずけます。その後、ティラミスは安定的な人気を維持しながら、今ではすっかり喫茶店のデザートメニューとして、定番の地位を獲得しています。 
 

新たな料理エンターテインメント番組『料理の鉄人』(平成5年)

「私の記憶が確かならば・・・」調理技術を競った格闘技番組であった『料理の鉄人』は、その後の料理番組に多大な影響力を与えました。バブルが崩壊し、今までのように“食”にお金をつぎ込めなくなってしまった人々にとって、料理エンターテインメント番組は、調理技術や食材、その料理人に関する知識を得るには恰好かっこうの題材だったのかもしれません。『料理の鉄人』以降、料理に関する番組は増え、料理を作るために観る料理番組は、老若男女を対象にしたバラエティ番組として発展していったのです。
 

そして、ちょうどこの頃、タピオカパールよりも大粒で、こってり甘い口当たりのブラックタピオカや、弾力のある独特の食感のナタデココが流行しました。店通でも何度か紹介しているタピオカですが、ブームは平成の初めにも巻き起こっていたのですね。いつの時代の女性も食感というものには弱いみたいです。 

平成6年から平成10年(1994-1998)~食卓の変化~

バブルが崩壊し、不況になると、主婦である女性も社会に出て働く、共働き家庭がどんどん広がっていきました。そんな時代の流れに目をつけ、便利な加工食品やお惣菜を商売とする企業も増えていきました。少ない労力で器用に家事をこなすことが求められた時代には、一体どんな出来事があったのでしょうか。

■平成6年(1994)■
 ・平成の米騒動勃発(タイ米ブーム)
■平成7年 (1995)■
 ・阪神淡路大震災
 ・『20分で晩ごはん』(NHK)シリーズ放送開始
■平成8年 (1996)■
 ・O-157中毒事件発生
 ・『ビストロSMAP』(フジテレビ系)放送開始
■平成9年 (1997)■
 ・消費税増税(3%→5%)
 ・赤ワインブーム
 ・『どっちの料理ショー』(日本テレビ系)放送開始
■平成10年 (1998)■
  ・発泡酒がビール市場を侵食

日本人は根っからの健康志向!?そして表面化してきた簡単志向!!

f:id:tentsu_media:20190205150842j:plain
赤ワインブーム

ポリフェノール効果で大注目の赤ワイン(平成9年)

現在も健康食材に関心の高い日本人ですが、それは20年以上前も変わりません。「フレンチ・パラドックス(フランスの逆説)」で心臓病を防ぐことができる飲み物として紹介された赤ワインは、日本だけでなく全世界で赤ワインブームを巻き起こしました
 
赤ワインに含まれている“ポリフェノール”が、動脈硬化の予防や、脂質の低下、活性酸素の中和を促進するとして、それまでどちらかと言えば白ワインの需要が高かった日本でも、一気に赤ワイン人気が高まったのです。確かに、今でもポリフェノールは健康に良いと、毎日適量の赤ワインを飲むことをすすめる健康法を目にしたりします。
 

“手抜き”ではなく、“簡単”。家事の労力を減らす。

女性の社会進出が進むにつれ、家事の労力を減らすことが求めらましたが、家事の手抜きは許さない!という昔ながらの風潮からか、簡単志向が表立って叫ばれるようになったのは、平成12(2000)年も近くなってからでした。外食や中食の利用といったファストフード化、中食市場が発展し、冷凍食品やレトルト食品、インスタント食品への関心の高まりが加速していきました
 
ただ、冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品は外食や中食と異なり、お湯を沸かしたり電子レンジで温めるなど、食卓に並べる前にひと手間加える必要があります。それでもそれらの利用が増えていった背景には、家事を全くしないことへの抵抗感と、家事に費やす時間の短縮ができるという利便性が、時代のニーズに合っていたのでしょう。
 
その証拠に、今まであまり使用されていなかった“簡単”と言う言葉が、「忙しい人のための“簡単”アレンジ」というように、雑誌のタイトルや副題につけられるようになりました。
 

平成11年から平成15年(1999-2003)~高まる食への不信感~

平成という元号に慣れるのと同時に、家庭には料理の簡略化といった概念がすっかり浸透していきました。食の合理化が進んでいることが分かります。そして、料理番組もペンとメモを用意して視聴する“お教室”イメージから“バラエティ”色を強め、聞き手のアナウンサーに男性が加わるようになりました。
食に対する世間の意識の変化が落ち着いてきた頃、事件は起きたのです。これまで、なんの疑いも持たず口にしていた食べ物へ、不信感を抱かずにはいられない出来事が次から次へと暴かれていきました。
■平成11年(1999)■ 
 ・缶入りチューハイがヒット
 ・『愛のエプロン』(テレビ朝日系)放送開始
■平成12年 (2000)■ 
 ・雪印集団食中毒事件
 ・東急フードショーを皮切りにデパ地下ブームへ
 ・『スローフードな人生!』(島村菜津著 新潮社)がベストセラー
■平成13年 (2001)■ 
 ・BSE感染牛日本で発見
 ・遺伝子組み換え食品の表示義務化
■平成14年 (2002)■ 
 ・偽装表示など食品企業の不祥事相次ぐ
 ・芋焼酎ブームはじまる
 ・カスピ海ヨーグルト流行(ヨーグルトの効果効能に興味がある方はこちら。) 
■平成15年 (2003)■ 
 ・鳥インフルエンザ発生
 ・サムギョプサル流行、日本で韓国料理店急増
 ・健康茶ブーム(お茶の効果効能に興味がある方はこちら。)
 ・第二次豆乳ブーム突入(豆乳の効果効能に興味がある方はこちら。)
 ・『ku:nel』(マガジンハウス)創刊
 ・『天然生活』(地球丸)創刊
 

歴史は繰り返されるのか!?食騒動とブームを巻き起こす食べ物

食の不信感が“食”を見つめなおすきっかけに・・・

“食”の信用を揺るがすニュースは、悲しいことに近年もたびたび報道されていますが、その皮切りとなった二大ニュースがこの時期立て続けに起こってしまいました。
 
1つ目は、雪印乳業の大阪工場でおこった、低脂肪乳を原因とした食中毒事件です。第二次世界大戦後最大の集団食中毒事件として、世間を震撼しんかんさせたこの事件は注目を浴び、当時の社長の一部記者へ向けた発言が、マスメディアで広く配信されたりもしました。その影響もあり、雪印乳業がスポンサーであった『料理バンザイ!』(テレビ朝日系)が平成14(2002)年に、放送終了となってしまいます。
 
2つ目は、“狂牛病”という呼び名の方が耳に残っている方もいるかもしれませんが、牛海綿状脳症、いわゆるBSEに感染した感染牛が、平成13(2001)年に日本で発見されたことです。日本での発生原因は明らかになっていませんが、イギリスでは、牛の餌として与えられた肉骨粉が原因として考えられています。肉骨粉は、与えると成長が早くなること、安価であること、栄養価が高いこともあり、飼料とされていたようですが、その背景には、生産性向上をうたう世の中の声があったのかもしれません。日本では、もともと肉骨粉を飼料としては使用していませんでしたが、この事件以降、肉骨粉を含む家畜飼料・肥料の製造・販売が法律で停止されました。
 
この出来事から、食品表示が細かくなり、産地が示されるようになっていきます。今まで生産というところまで気にしていなかった人々が、生産情報にまで目を向けるきっかけとなった、それほどまでに衝撃的な出来事だったのです。
f:id:tentsu_media:20190212130833j:plain
繰り返す流行食

自宅でヨーグルトが作れるなんて!?口コミでうまれる流行(平成14年)

食の安全性へ疑念が抱かれる中、自宅で簡単に作れる“カスピ海ヨーグルト”が注目を集めました。牛乳と種菌粉末、もしくはヨーグルトの一部を溶かし、そのまま放置するだけで、特殊な器具も必要なく、菌を増やしてエンドレスで作ることができるカスピ海ヨーグルト。主婦仲間やご近所さんで分け合ったりしながら、またたく間に広がっていきました。おすそ分け文化が根底にあり、健康食品大好きで、不景気に悩む日本人にはもってこいの食材だったのでしょう。
 
内側から乳酸菌の力できれいになれる食材として、今でも人気のヨーグルトですが、この時代の流行食は不思議なことに、平成が終わろうとしている今、また注目を浴びています。お金をかけず、日常生活に取り入れながら、無理せず健康でいられるための食材は、やはりいつの時代も重宝されるのかもしれません。
 
さて、平成の後半には何が流行ったのか・・・。予想を立てつつも今回はここで一区切り。後編をお待ち下さい。

こんな記事も読まれています

この記事をご覧になられた方々に、こんな記事も読まれています。
平成の食文化記事後編です。まだお読みでない方は、是非お読みください。 
www.tenpo.biz  
 


 
 
【参考文献】
『平成食文化史年表』筑波書房
『平成の家族と食』株式会社晶文社
『昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年』株式会社筑摩書房
『お料理番組と主婦 葛藤の歴史 きょうも料理』株式会社原書房

Ms.小わっぱ

f:id:tentsu_media:20190204133837j:plain