そうだったのか!店舗計画で交わされる【排煙】の意味

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会社の建築設計部門「あーきないと」です。


今回は本来私が専門にしている建物の設計に関するテーマについて話をしていきます。建築に関して専門ではない人にとって、今回取り上げる内容は知らなくても当然かもしれません。


しかし知っていると、店舗の計画や店舗に必要な設備の話がわからなかったり、誤解によるミスの発生を未然に防げます。また、改修や用途変更で入居する建物の場合は、建物の構造や資金計画にも影響がでてくるケースがあります。
 
ちなみに、建築関係の人にとっては退屈な内容ですがご容赦ください。
 

設計者泣かせの排煙設備

 
今回は店舗建築に関する誤解の多い建築用語の一つ、「排煙」を取り上げようと思います。排煙は同時に設計者泣かせの難解な法令とも言われます。
 
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排煙は「煙を排出する」という字から、よく厨房や焼き肉などの煙を排出する設備と誤解されます。
 
工場などにおいては煙を外に出すことは「排煙」と言いますが、一般的には建築基準法の排煙設備のことです。端的に言うと「排煙」は火事の煙を対象にしているということです。
 
厨房や焼き肉などの煙を外に出す設備は、換気設備または排気設備といい、排煙設備と区別されています。

 
f:id:tentsu_media:20171010091954j:plain上の図は違いを絵にしたもの 排気設備・換気設備(左)と 排煙設備(右)を表しています
 
店舗の場合、換気設備も建築基準法で排煙設備とは別に義務づけられており自然換気設備と機械換気設備のどちらかが必要です。

排煙設備が必要な訳は安全に避難するため

 
実は、今回【排煙】をテーマに取り上げた理由は、誤解が多いという以外にもう一つあります。それは計画段階や現場で問題になることが多いということです。なぜかというと、対応の難しい場合が多いからです。
 
排煙設備は、建物内の人が火災の煙に巻かれることなく安全に避難できるようにするために、煙を建物の中から外に出す設備なのです。←ココ重要
 
余談ですが、「排煙している時間があったら避難した方がいい」とよく言われます。世界でも珍しい法律で、設計者やオーナー泣かせの悪法と言われることもしばしばあります。
 
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建築基準法では、一定の規模、用途の建物に排煙設備の設置を義務づけています。義務の対象になった建物や部屋は、後述する「自然排煙」もしくは「機械排煙」による二通りの排煙方法のどちらかで排煙をしなければなりません。しかし、場合によっては内装材を燃えにくい材料にするなどで、排煙設備の設置の免除(緩和)を受けられます。
 
また、排煙は居室(継続的または作業的利用室)、(倉庫やトイレなどの一時的利用室)のほか、通路やエントランスホールにも求められます。居室と室では緩和(一定の条件を満たせば適用除外)の扱い方が異なります。このあたりは専門家にお任せしましょう。
 

排煙の種類は自然排煙と機械排煙

 

自然排煙

 
自然排煙は開放できる窓を設けて煙を外に出す排煙方法です。下の画像は排煙窓とオペレーター(開閉する装置)の写真です。
 
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下の図は自然排煙の排煙窓として認められるための基本図です。部屋の面積(壁芯)の1/50以上の面積の排煙窓を天井から80cm以内に設ければ法的基準をクリアできます。逆に言うと、天井から80㎝以内の開放できる部分(赤いハッチ範囲)が有効な排煙部分です。
 
この場合、手動で開けるかオペレーターで開けるかのどちらかになります。
また、その下の図のようにひとつの空間の場合、50cm以上の不燃材の垂壁(防煙垂壁)があると左右それぞれ別の排煙区画として扱います。その場合、排煙窓のうち垂壁の下端よりも高い部分だけ(赤いハッチ範囲)が排煙として有効な範囲です。
 
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※注意点
 
ひとつの空間ではなく別々の部屋の間に扉を設ける場合は、扉が排煙口(窓)の下端の高さと被り、煙が扉を抜けて隣に回ってしまうので、30cm以上の不燃材の垂壁にした上で扉は常に閉まる機構の不燃材でできたものにしなければなりません。
 
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一般的には上で説明したような範囲が排煙に有効とされます。しかし天井の高さが3m以上(又は平均天井の高さが3m以上)の場合は床面から2.1m以上の開放できる部分は全て有効とされます。
 
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機械排煙

 
機械排煙は停電した時にも稼働するように非常電源を備えた排煙機による強制排煙です。一般的に天井に非常時に開く開口を設けてそこからダクト(風道)で屋上などの外に機械で煙を出します。下の画像は天井の機械排煙口とそれが非常時に開いた状態の写真、そしてそこから繋がれたダクトの天井裏の写真です。
 
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機械排煙には高額な費用がかかるので中型から大型のビル以外に採用されることはあまりありません。改修や用途変更でも非常電源の確保とダクトスペースの確保の問題で採用されることは滅多にありません。ですから、今回は機械排煙については詳細に触れないことにします。
 

どんな場合に排煙が必要なの?

 
最後に、ちょっと難しいですが排煙設備の必要な場合の見分け方として私が作ったフロー図をご紹介します。
 
排煙は全ての飲食店でチェックが必要ですが、必要とされた場合でも地下の部屋以外であれば先に述べたように緩和規定があります。室内の内装を不燃材にしたり、100㎡以内に防火区画したりすることによって排煙設備を設けなくても済むような規定もあります。この緩和規定を使って排煙窓を設えない例がよく見られます。
 
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に該当して排煙設備が必要になることが多く、カッコ書きの開口部が決められた高さで開閉操作ができるとこれが排煙窓となり③に該当しなくなります。
 

まとめ

 
店舗とくに飲食店舗の場合にはテナントとして入居する場合、この「排煙」という法律に対しどのように対処するかを考える必要があります。
 
新築建物に入居する場合は最初から対応された建物への入居ですから問題になることはありません。しかし、冒頭でもお話したとおり、改修や用途変更で入居する建物の場合は建物の構造、資金計画にも影響がでてくる内容です。ぜひ入居決定前に売主にヒアリング、又は専門家に相談しましょう。
 

あーきないと



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